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連載 エディターズレター:MARKET VIEW 第69回

シーイン騒動が映す「分断」

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中国発「シーイン(SHEIN)」のパリ出店をめぐる騒動を、私はファッション業界の今を象徴する“事件”と捉えています。ファッションの都・パリの中心地で、服を介して価値観の分断があらわになった光景は衝撃的でした。

フランスは、ウルトラファストファッションと呼ばれるシーインを批判する急先鋒です。今年6月、仏上院はファストファッション規制法案を可決しました。大量の新商品投入、EC専売、極端な低価格、短納期といった点に抵触する企業に罰金や広告制限をかけるものです。しかしスペインの「ザラ(ZARA)」、スウェーデンの「H&M」は実店舗が地域経済に貢献しているとの理由で対象から外されました。シーインを狙い撃ちした法案であることは明らかです。シーインによるパリの常設店の出店は、この規制を回避するためと見られています。

パリの老舗百貨店BHVのシーインが開店すると、数百人規模の抗議デモが起こり、数日後には「アニエスベー(AGNES B.)」「アー・ペー・セー(A.P.C.)」がBHVから撤退を表明しました。シーインによるラブドール販売について仏検察が児童ポルノの疑いで捜査を開始し、仏政府がサイト停止を指示したため、批判に拍車がかかりました。一方で、店舗には安い服を求める人々の長い行列が絶えません。たくさんの紙袋を抱えて店から出てくる人たち。あまりにも対照的で、あまりにも皮肉な光景でした。

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