「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」(以下、マメ)が、2026-27年秋冬コレクションをパリ・ファッション・ウイークで発表した。年間を通して一つのテーマを探求しているため、今季のテーマは、春夏に続き「リフレクション(REFLECTION)」。しかし、黒河内デザイナーが祖父母の家で過ごした幼少期のノスタルジックな記憶から着想した前シーズンに対し、今回は東京と故郷・長野の八ヶ岳に構えるアトリエを行き来する自身の今の記憶やライフスタイルを映し出した。
「長野の山のアトリエで過ごす時間がとても大切になっているのですが、山では突然深い霧に飲み込まれて、全てが見えなくなる瞬間があります。古いグラス越しに見る景色やグラスの結露で曇る感じといった幼少期の透明なガラスの記憶と、山で過ごしている時間がとてもリンクすることがメインのインスピレーションになりました」。そう語る彼女は、冬から夏にかけて山で見た景色と江戸時代〜大正期にかけて日本で発展した和ガラスの儚さを重ね合わせ、その共通項である綺麗なグリーンをキーカラーに据えながら、さまざまな織りや編み、染色、プリントを駆使した透け感のあるレイヤードスタイルを提案。霧の「輪郭が見えなくなる」朧げな雰囲気を、起毛素材や光を反射する極細ナイロンスパーク糸を織った生地などで表現した。
今季新鮮だったのは、「マメ」らしいクラフトを生かした繊細かつ洗練されたスタイルの中に、アウトドアの要素を加えたことだ。例えば、シアー生地のアノラックにシグネチャーのコード刺しゅうを用いたトレイルランニングギア風デザインのベストを合わせたり、マウンテンパーカを長く伸ばしたようなドレスライクなコートを薄いコットンで仕立て、その上に山の植物を描いた和紙をプリントしたり。その背景について、黒河内デザイナーは「自分がよく着ているシルクのセットアップに東京だとテーラードジャケットを合わせるけれど、山に行くときはテックウエアに変えます。そういう格好で本当の山登りはできませんが、山で散歩したりするときにはアウターを変えることで自分の日常が緩やかにつながっていく感覚があり、その感じが自分にとってはすごく心地いい」と説明。都市と自然の間にあるものを作りたかったと明かす。
土屋鞄製造所とのコラボバッグも披露
ショーでは、土屋鞄製造所(TSUCHIYA KABAN)とのコラボレーションによるレザーバッグも初披露した。ラインアップするのは、繭の形をモチーフにした丸みのあるバケットバッグや小さなポケットを備えたベスト風のアイテム、そして繭型のカラビナで自由に取り付けられるスモールレザーグッズ。これらは、子供たちの6年間の成長を支えるランドセルの製造を通して耐久性と軽さを研究し続けてきた土屋鞄の姿勢を、自分たちが日常で持てるようなデザインに反映したものだという。
「自分自身の着こなしやアイテムというところが、やはりブランドを始めた時からすごく大事なこと。私自身が一番『マメ』を着ていることを楽しんでいるお客さんでもあるので、その経験をどうやってデザインに生かしていくかがとても大切なポイントになっています」。そんなクリエイションとの向き合い方は一貫しているが、今季はいつも以上にその姿勢がより色濃く感じられたコレクションだった。