ピーター・ミュリエ(Pieter Mulier)による「アライア(ALAIA)」が、彼にとって最後となるコレクションを発表した(シーズンは、2026年夏秋)。ラフ・シモンズ(Raf Simons)の右腕として長く働き、「アライア」のクリエイティブ・ディレクターを務めて5年。この間でミュリエは、創業デザイナーのアズディン・アライア(Azzedine Alaia)による「身体への敬意」を、ラフ譲りのミニマルかつ建築的なシルエットで表現して高い評価を得て、ブランドビジネスはおよそ倍の規模に。アートなムードは日本にも伝わり、直近はニットやフーディなどのベーシックなアイテムやバッグが人気だ。ブランドを次のステージに押し上げたミュリエは、最後のコレクションでは今一度、創業デザイナーの思いに立ち返る。
ピーターは、「ミニマルで、純粋で、本質的。削ぎ落とされ、『アライア』の真髄にまで還元されたこのコレクションは、アズディンの作品を反映すると同時に、私自身の痕跡が刻まれた、メゾンで過ごした時間の軌跡でもある」と語る。直近はミニマルでありつつも柱体や錐体などの特異的なシルエットにも挑んできたが、今シーズンは基本に立ち返り、アズディンによる「身体への敬意」を装飾を極力廃したボディコンシャスなシルエットで表現する。そして、このミニマルなスタイルこそ、自身とチームの5年間の思いは最も強く、ピュアに伝わるとも考えたのだろう。
ファーストルックは、ほとんど下着。女性の体の中で最も美しい腰回りに些細なステッチワークを加えただけの、ビスコース素材の3Dニットで作った。続くのは、ローデンクロスによるチェスターコート。こちらも緻密なパターンワークで、ダブルの3つボタンを閉じると、3Dニットのドレスのようにしなやかな曲線美が現れる。ジュエリーのようにリッチなカラーのコットンベルベットや、レザー、ラテックス、ときにはジャージーと切り返したクロコダイルなど、さまざまな素材が現れるが、シルエットは終始一貫。一部のテントラインを除けば、今シーズンは全てボディコンシャスなIラインだ。ミュリエは、「焦点となるのは、衣服の中にある身体。そしてその衣服は、常に女性を讃えている」と話す。
後半になるとようやく、ニットは編み地を切り替えることで裾では優雅なペプラムを描き、ジャケットの裾にはフェイクファー、フランネル風の素材によるタンクドレスには腰からフリルを垂らしたが、それでも上半身のシルエットは不変だ。コートでも、ウエストをギュッと絞ったり、ボタンを閉じたりすると、フィット&フレアのシルエットが浮かび上がる。ボディコンシャス一辺倒から少しずつボリュームを模索したコレクション全体、そして、コンパクトな上半身から徐々に大きく広がる下半身の対比で、「厳格さはやがて豊かさへと広がり、まるで可能性が解き放たれていくかのようにと花開く」様子を表現した。
フィナーレのミュリエは、背中に「ALAIA」の文字を刻んだ白衣姿だった。最後のコレクションでは、写真家の北島敬三とコラボレーションして、写真集を作成。その中では、同じ白衣を着たミュリエの同僚のポートレートを掲載している。ラフの右腕として活躍してきた彼は、チームビルディングにおいても卓越した才能を持っていると評判だ。ミュリエがランウエイに姿を現すと、ラフ・シモンズが駆け寄り、ハグをした。そこにはかつてのパートナーで、現在は「シャネル(CHANEL)」のアーティスティック・ディレクターを務めるマチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)の姿もあった。
大団円だ。
ピーターはこの後、「ヴェルサーチェ(VERSACE)」に移籍する。持ち味のミニマリズムや構築的なシルエットは、どちらかといえばこれまで色柄で主張してボディコンシャスやパワーシルエットで押しまくっていきたブランドとどう融合するのだろうか?