毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2026年3月2日号からの抜粋です)
本橋:2026-27年秋冬メンズコレ特集第2弾は、“愛着”をキーワードにまとめました。「プラダ(PRADA)」を筆頭に服のシワやシミなど、“完璧”であるばかりを是としないデザインやディテールが見受けられました。メンズのランウエイはステイプル(ベーシックアイテム)をいかに「自分らしく着る」かが引き続き潮流ですが、愛着がスタイルに深みを与えていると感じるシーズンでした。
藪野:基本的にシーズンごとの変化が大きくはないメンズにおいて、今っぽいムードをどう表現するかを読み解くことは重要ですよね。今回、われわれの琴線に触れたのは、受け継いだものや長年愛用してきたものからにじむ「個性」です。「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」は、故郷を離れ、都会へと旅立つ若者をイメージ。ルーツや思い出に通じる服や親しみのあるアイテムをカバンに詰め込んだような提案は、懐かしさや愛着の美しさを感じました。
思い入れの価値が高まっている
本橋:表紙にも採用しましたが、「ドリス」はすごく素敵でしたよね。ラグジュアリーブランドは「完璧!」な印象を与えるコレクションを発表しますが、「ドリス」は“旅”をテーマに、成熟していくエレガンスを表現していました。祖父のお下がりを引き継いでもいい、汚れててもいいという感覚は、古着世代の若い人には浸透しているけれど、オトナ男性にはない価値観。そこに共感しました。新品を礼賛するばかりではなくていいんじゃないか。時を経たもの、思い入れのあるものの価値が高まっていると感じました。
藪野:そうですね。もう1つの流れとして、マイケル・ライダーによる「セリーヌ(CELINE)」のプレゼンテーションも面白かったです。「衣装よりも個性」や「人生のあらゆる瞬間に合わせて選ぶ服」という考えで、ルックのスタイリングもあくまで「正解」ではなく「提案」。すでに持っているものと組み合わせてワードローブを構築してほしいというのは、リアリティーがあり、共感性も高いです。ロゴや派手な装飾を控えた、上質な素材と仕立て、タイムレスなデザインが特徴の“クワイエットラグジュアリー”と同様にステイプルを軸にしてはいますが、26-27年秋冬で大切なのは、自由な着こなしによる楽しさや個性の演出。この辺りのムードをいかにキャッチして、必要なアイテムを加えることや、スタイリングで一ひねりを効かせることがカギになりそうです。