
中国発の潮流が、静かにかつ確実に新しいリテールやブランドのビジネスモデルを書き換えている。中国や東南アジアではSNSからライブコマースのプラットフォームに進化した「TikTokショップ(TikTok Shop)」が急速に浸透。一方、ポスト・シーイン(SHEIN)の越境ブランドが続々と台頭し、米国や日本のマーケットに進出している。さらに、AI搭載デバイスや人型ロボットなど、実装力に裏づけられたテクノロジーが生活と消費の現場を変えつつある。中国はもはや「模倣の国」ではない。スピードと実験精神で市場を動かす“実装の国”へと進化を遂げた。中国専門ジャーナリストの高口康太氏がファッションとテックが交差する最前線をリポート。日本の小売りとブランドビジネスが学ぶべきヒントを探る。(この記事は「WWDJAPAN」2025年10月27日号からの抜粋です)
注目トレンド5選
1. 第2のポップマートも日本上陸、
中国発「カジュアルトイ」旋風
2025年に世界を席巻したのが「ラブブ」。中国カジュアルトイ企業ポップマート(POP MART)のキャラクターだ。ポップマートは10月21日、2025年7〜9月期業績(速報値)を発表した。海外売上高は前年同期比4.7倍で、直前の4〜6月期よりもさらに増加した。「ラブブ」人気はピークアウトしたともうわさされるが、売上高は絶好調だ。日本では東京と大阪に大型の路面店をオープンしているが、日本を含めた海外市場で業績を伸ばしている。すでに時価総額ではサンリオの3倍以上の規模になっている。
ポップマートが中国で火をつけたカジュアルトイブームだが、ライバルも急成長している。特に「トップトイ(TOPTOY)」の拡大ペースはすさまじい。「トップトイ」は中国版ダイソーこと、雑貨チェーン「メイソウ(MINISO)」(名創優品)のスピンオフブランドとして誕生し、ディズニー、ハリーポッター、サンリオ、ちいかわ、ONE PIECE、クレヨンしんちゃんなどのカジュアルトイを販売している。独自IP路線のポップマートとは好対照で、有名IPのライセンスを大量に獲得する「スーパーIP連盟」戦略だ。
これまで中国を主戦場としていた「トップトイ」も、海外進出を加速する。実はすでに日本にも上陸を果たしており、池袋のサンシャインシティに8月30日に店舗をオープンした。同店舗以外にも新宿や大阪などでポップアップストアを展開しており、日本市場の拡大に意欲を示している。ポップマートと並び、日本に中国発のカジュアルトイ旋風を巻き起こせるか、に注目だ。
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