上場したHUMAN MADE(ヒューマンメイド)は、破竹の勢いで成長しています。2026年1月期の売上高見通しは136億円で、コロナ前(20年1月期)の約10倍。営業利益率も28%前後と高水準です。
同社はセールをやらない方針で運営されてきました。CEOの松沼礼さんは「毎週土曜日に新商品を発売し、翌日には大半が売れ切れます」と胸を張ります。アパレル業界で52週MD自体は珍しくありませんが、圧倒的な人気を背景に高回転率を実現しているのが特徴です。
新商品は木曜11時にウェブやSNSで公開されると、国内外のファンによって拡散されます。皆の期待をふくらませた上で、土曜11時に店舗とECで販売を始める。話題のコラボレーション品であれば、土曜の開店前には長蛇の行列ができます。
11月27日の上場記者会見で松沼さんは「私が子供の頃の『少年ジャンプ』をイメージしています。(発売日の)毎週月曜日が待ち遠しい。『ヒューマンメイド』はそれが土曜日なのです」と説明していました。
私を含めてジャンプ全盛期の1980〜90年代の少年たちは、月曜を心待ちにし、小銭を握りしめて本屋に駆け込みました。確かに毎週新しい商品を求めるファンの心情は、「ドラゴンボール」や「スラムダンク」「北斗の拳」を楽しみにしていた少年に重なる気がします。
「少年ジャンプ」の編集方針が「友情・努力・勝利」であることは有名です。会社組織だって従業員同士のチームワーク(友情)、毎日の地道な仕事(努力)、そして会社の成長(勝利)で回っている。ヒューマンメイドの場合、創業者でクリエイティブディレクターのNIGO®さんをはじめ、その仲間たち(ファレル・ウイリアムス、KAWS、VERDY)のキャラが立っているため、少年ジャンプ的なナラティブを感じさせます。
松沼さんは前職のユニクロ(ファーストリテイリング)時代、Tシャツプロジェクト「UT」を通じてNIGO®さんとは信頼関係ができていました。4年半前、当時CEOを兼ねていたNIGO®さんから「世界で成功するブランドは、ビジネスとクリエイションが両輪で組織が動いている」と説明され、「ヒューマンメイドを日本発の世界に誇るグローバルブランドにしたい。だから来てくれないか」と口説かれたそうです。
東証でのセレモニーには、NIGO®さんとわざわざ来日したファレルが一緒に上場を祝う鐘を鳴らし、互いを讃えるように抱き合う姿が印象に残りました。NIGO®さんとのファレルは30年以上の親交があり、リスペクトし合う仲です。ファレル、KAWS、VERDYはクリエイティブで契約するだけでなく、上位株主としてもヒューマンメイドと深く結びついています。
松沼さんら経営陣も、ファレルたちクリエイター陣も、NIGO®さんとの長年の熱い「友情」とリスペクトが土台にあリます。松沼さんたちは人材、組織、財務、生産、販売などの基盤を整える「努力」を重ねてきました。上場によって国内外での出店拡大やM&Aに本腰を入れると語った松沼さんは、「日本発のカルチャーを永続させるための壮大なチャレンジだ」と述べています。収益も大切ですが、究極的にはこれこそが「勝利」になるのでしょう。少年漫画のような夢とロマンがある挑戦です。
エディターズレターとは?
「WWDJAPAN」の編集者から、パーソナルなメッセージをあなたのメールボックスにダイレクトにお届けするメールマガジン。定期購読者(ライトプラン・スタンダードプラン)のみが受け取ることができます。
ファッションやビューティのみならず、テクノロジーやビジネス、グローバル、ダイバーシティなど、みなさまの興味に合わせて、現在8種類のテーマをお選びいただけます。届いたメールには直接返信をすることもできます。