PROFILE: 鈴木信輝/社長

ワールドの鈴木信輝社長は2020年の社長就任以来、「ワールド・ファッション・エコシステム」の実現を目指してきた。アパレルブランドの製造・販売にとどまらず、長きにわたって培ってきた多様な機能を他社に提供し、ファッション産業全体の活性化に貢献する。壮大なビジョンは新しいフェーズに入る。
B2C事業とB2B事業に再編
意思決定を迅速化
WWD:2025年3〜8月期の決算説明会でブランド事業の不振理由を「現場の実行力の低下」と述べていた。
鈴木信輝社長(以下、鈴木):現場の問題だけではなく、私たち経営の問題が大きいと考えている。持ち株会社に移行し、傘下の企業数も増え、プラットフォーム事業やデジタル事業など業容も拡大したため、経営が細かくアパレルに専念していた昔ほど単純な組織ではなくなってしまった。経営は大きな方向性を示し、現場が自律的に判断する。そんな組織に変える必要がある。
WWD:26年3月1日付で事業セグメントを再編すると発表した。これも現場の実行力を高めるためか。
鈴木:既存のブランド、プラットフォーム、デジタルの3つの事業セグメントを、B2C(消費者向け)とB2B(企業向け)の2つに移行する。新設する中間持株会社ワールド・ブランズとワールド・ソリューションズのもと、サブセグメントも再編する。いっそう現場に権限を移し、意思決定の迅速化と臨機応変な対応を実現するための変更だ。ワールド・ブランズの管轄になるブランド事業においても、適時・適品・適量の精度を高め、販売スタッフが全力で売れるようにする。堅調な「ドレステリア」や「インデックス」といったブランドは、事業会社の幹部と現場スタッフが侃侃諤諤と議論している。それがチームに活力を生む。体制を変えても、組織は一朝一夕には変わらない。腰を据えて改善していくことが肝心だ。
WWD:B2Bでは25年2月にエムシーファッション(MCF、旧三菱商事ファッション)を子会社化した。
鈴木:MCFはグループのB2B、特に「ワールド・ファッション・エコシステム(以下エコシステム)」の要になるだろう。生産調達力だけでなく、営業力、貿易、与信管理などMCFの第一級の機能と経験値は、ワールドのB2Bビジネスにとって大きな武器になる。もともとMCFはお客さま(アパレル企業など)の問題解決能力に長けている。ワールドの既存のB2Bと掛け合わせることで、他には真似できない提案ができる。例えば、MCFでアパレル企業のモノ作り(OEM、ODM)を支援するとともに、店舗設計や販売スタッフまでワンパッケージで提供が可能だ。在庫が重荷になれば、当社のオフプライスストア「アンドブリッジ」で販売もできる。
WWD:MCFは、世界的に注目を集めるニットウエアのCFCLと25年6月に資本業務提携を結んだ。
鈴木:あくまでMCFとの提携であり、ワールドグループとしては先方が利用したい機能があれば、提供するという立場だ。傘下でブランド古着を扱う「ラグタグ」(運営会社ティンパンアレイ)は、CFCLが始めた二次流通サービス「ネクストループ」において買い取りスキームを提供している。CFCLの発展に貢献できるのであれば、これほど素晴らしいことはない。
WWD:25年は10月に子供服のナルミヤ・インターナショナルを、26年3月にはジーンズカジュアル専門店のライトオンを完全子会社化する。
鈴木:2社はフェーズが異なる。ナルミヤは平成女児ブームも追い風になって好調が続く。完全子会社化によって海外出店のアクセルも踏むことになる。現状、台湾に1店舗、香港に2店舗あるが、現地のお客さまから想定以上の反響をもらっている。26年は東南アジアにも出店する予定だ。キャラクターのIP(知的財産)ビジネスも大きなポテンシャルを持っている。一方、ライトオンは再建中だ。完全子会社にすることで意思決定を早め、早期の黒字化を目指す。
WWD:3月には阪急スタイルレーベルズの雑貨事業を譲り受ける。
鈴木:承継するコスメ雑貨の「カラーフィールド」、インテリアの「ダブルデイ」は、特に阪急電鉄沿線でブランド価値を築き上げてきた店舗だ。われわれのノウハウとリソースを投入して更なる成長を実現できると考えている。
WWD:社長就任時から掲げるエコシステムは軌道に乗り始めた?
鈴木:ワールドが持つ生産、販売、空間設計、デジタル、二次流通などの機能を他社にも提供することで、ファッション産業全体の活性化を促し、業界の課題である無駄やロスを減らす。それが当社が掲げるエコシステムだ。確かにこの5年で形はだいぶ整ってきたが、まだ形が出来上がったに過ぎない。エコシステムから新しい価値を生み出すフェーズにようやく入れる。来期(27年2月期)から始まる新中期経営計画に詳しく盛り込む。今年からエコシステムの真価が試されることになるだろう。
個人的に今注目している人
成長の早さに日々驚くことばかり。子供の好奇心はすごい。出来ることがどんどん増える。最近は口が達者で、誰に似たのか一丁前のことを言うようになった(笑)。この子に比べて自分は1年間でどれだけ成長できたのかと、我が身を振り返ったりする。その意味で私のライバルかもしれない。負けないように頑張る。
1959年、神戸で婦人ニットの卸売業として設立。93年、小売業に進出。「アンタイトル」「インディヴィ」「タケオキクチ」「シューラルー」「オペーク ドット クリップ」などのブランド事業のほか、プラットフォーム事業、デジタル事業を手掛ける。子会社に繊維商社のMCF、子供服のナルミヤ・インターナショナル、ブランド古着の買取・販売店「ラグタグ」を運営するティンパンアレイなどがある。2025年2月期業績(国際会計基準)は売上高2256億円、純利益111億円
ワールド(代表)
078-302-3111
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