PROFILE: 保元道宣/社長

オンワードホールディングスは、2021年に策定した10年の長期計画「オンワード・ビジョン2030」の後半戦に今年から入る。保元道宣社長は「前半戦で撒いてきたタネが芽吹き、複数の苗木に育った。後半戦は大きな樹へと成長させたい」と自信を見せる。
新規事業で苦労した経験が人を育てる
WWD:この数年でたくさんのタネを撒いてきた。
保元道宣社長(以下、保元):26年度以降、グループを支える大きな樹に育てる。オーダースーツの「カシヤマ」はその真っ最中だ。コロナ禍以降2ケタ増収を続け、26年度には売上高100億円を突破する。16年度秋から生産、物流のDXに取り組み、中国・大連にスマートファクトリーを構築した。店舗でのパーソナルな採寸体験とスピーディーな生産、物流体制によって、スーツが売れない時代にあっても多くの支持を集めている。これまでは都心部の広域集客型店舗が多かったが、最近は20万〜30万人商圏の郊外型ショッピングセンターなどに出店し、30~40代を中心に新しい顧客を引きつけている。
WWD:立地も顧客層も広がっていると。
保元:女性のお客さまが約3割いらっしゃるし、就活生からエグゼクティブまで客層も幅広い。今年は新しい高級ライン「カシヤマプレミアム」を百貨店のオーダーサロンなどで展開する。優れた技術力を持つ国内の協力工場を活用し、短納期で高級オーダースーツを提供する。これでリーズナブルな「カシヤマ」と、上質を追求する「カシヤマプレミアム」の二段構えの体制が整う。来年には創業100周年を迎えるが、祖業であるスーツ事業のビジネスモデルを進化させて大樹に育てる。
WWD:子会社化したウィゴーは?
保元:当初の想定以上にシナジーが大きい。意思決定の速さやSNSによるマーケティング手法など、ウィゴーから学ぶことは多い。財務、物流、デジタルなど支援できることもたくさんある。今年からアジア市場進出に本格的に取り組む。30年度には売上高500億円規模に成長させたい。
WWD:米国では「J.プレス」の拡大を表明した。
保元:30年度に現在の10倍の売上高1億ドル(約150億円)規模に成長させたい。昨年春にジャック・カールソン氏をクリエイティブディレクター兼プレジデントに起用し、1902年の創業以来で最大の改革を進めている最中だ。トラッドファッションを再解釈したメード・イン・USAの商品が早くも注目を集めており、月次のEC売上高は前年比で倍増している。今年はニューヨークとワシントンの路面店をリニューアルオープンし、新規店舗の準備も進める。東京・青山の路面店も米国に合わせてリモデルしていく。
WWD:オンワード樫山のウィメンズ事業は?
保元:「23区」と「アンフィーロ」に特に注力する。「23区」は長い夏に対応したシーズンレスMDが奏功し堅調に推移している。ブランドをさらに進化させるための路面旗艦店を青山に今春開く。「アンフィーロ」はわずか5年で売上高100億円を突破し、撒いたタネの中でも成長が速い。これまではECとOMO型店舗「オンワード・クローゼットセレクト」で販売してきたが、今年からは知名度アップを狙って、単独店舗の出店を開始する。
WWD:アパレル以外にも事業領域を広げている。
保元:BtoB領域ではオンワードコーポレートデザインに期待している。企業のユニホームやノベルティグッズで実績を上げてきたが、事業所の空間デザインの引き合いが増加中だ。物流センターや工場などの従業員休憩スペースなど、人財確保のため従業員向けに居心地の良い空間を整備する動きが活発だ。既に2000社以上と取引があるため、そのネットワークを生かした営業活動ができるのも強みだ。
チャコットのコスメは25年度上期に35%増収で、今やバレエ用品と並ぶ柱になっている。ココバイのオーガニックヘアケアブランド「ザ・プロダクト」も堅調。昨年12月にはセルフネイルで知られるコスメ・デ・ボーテの完全子会社化を発表した。コスメをアパレルに続く柱に育てたい。今後も、人財の獲得を含めてM&Aは重要な成長戦略だ。
IP(知的財産)戦略にも力を入れる。クリエイティブヨーコの人気キャラクター“しろたん”の知名度アップに向けて、さまざまなパートナー企業とコラボを進めている。自前のIPとして今後の成長が楽しみな存在だ。今春にはオンワードHDにIP戦略室を新設し、グループをあげてIP事業の苗木を育てていく。
WWD:新規事業への取り組みは組織活性化につながるか。
保元:そう確信している。一番大きいのは事業の最前線で経営リーダーが育つことだ。事業の草創期の試行錯誤で苦労を重ねることになるが、その経験は大きな財産になる。意欲のある社員には新規事業で経験の幅を広げてもらう。新しい挑戦には時には失敗も伴うが、そこから学ぶことも非常に多いはずだ。
個人的に今注目している人
わが国初の女性宰相としてのご活躍に注目している。支持率の高さからもうかがえるように、多くの国民がポジティブな期待を持っているように感じる。実は私が通産省で働いていた30年近く前、小渕内閣で通産政務次官だった高市さんと何度かお話ししたことがある。ファッションの面でも、世界に向けたインパクトのある発信に取り組んで頂けるのではないかと、密かに期待している。
1927年に樫山純三氏が大阪で樫山商店を創業し、戦後に日本を代表するアパレル企業に発展。中核会社のオンワード樫山は「23区」「ICB」「五大陸」「J.プレス」「アンフィーロ」などを展開。グループ会社には法人ビジネスのオンワードコーポレートデザイン、バレエ用品のチャコット、カジュアル専門店のウィゴーなどがある。2025年2月期連結業績は売上高2083億円、純利益85億円
オンワードホールディングス
03-4512-1070