ビューティ
特集 CEO2026

【資生堂 藤原憲太郎社長 CEO】「一瞬も 一生も 美しく」 新たな成長軌道へ舵を切る

PROFILE: 藤原憲太郎/社長CEO

藤原憲太郎/社長CEO
PROFILE: (ふじわら・けんたろう)1966年12月生まれ岡山県出身。91年に香川大学大学院農学部農芸化学科修了後、資生堂に入社。95年に国際事業本部ヨーロッパ担当、2004年資生堂ヨーロッパ欧州物流センター所長、11年韓国資生堂社長、18年資生堂執行役員・中国地域CEOなどを歴任し、23年に資生堂社長COOに就任。25年1月1日から現職 PHOTO : KOJI SHIMAMURA

資生堂は、昨年11月に2030年に向けて新たな中期経営戦略を発表した。現在取り組んでいるグローバル全体での構造改革により、収益基盤の再構築が進み、日本事業では2ケタのコア営業利益率を計上するなど、着実な成果が表れてきている。ここから持続的かつ力強い成長を取り戻すための次なる一手を、いよいよ本格始動する。

「美」と向き合い続ける組織へ

WWD:2025年は構造改革が大きな節目を迎えた。

藤原憲太郎社長CEO(以下、藤原):安定的な利益拡大を実現する事業構造を目指した2カ年計画「アクションプラン 2025-2026」のスタートの年として、抜本的な構造改革に覚悟を持って取り組んだ。厳しい意思決定も含む改革ではあったが、目指したのはブランドが輝くために必要な投資ができるコスト構造への転換だった。25年に計画していた施策には概ね着手できている。「注力ブランドへの選択と集中」の結果、集中したブランドが上向き始めたことは確かな手応えにつながっている。

WWD:米国事業の立て直しにも着手した。

藤原:米国の従業員には、「多様性に富み、多くのイノベーションを生み出すこの国でグローバルカンパニーとしての礎を築いてほしい」という私の思いを伝えた。全社が同じ方向を向いた今、一丸となってイノベーションを起こしていけると考えている。

WWD:30年に向けた中期経営戦略を策定した。

藤原:企業価値や社会価値の最大化を目指す戦略だ。変化が激しく先行き不透明な時代において、消費者は共感やつながりといった本質的な価値を求めている。今後ブランドが生き残っていくためには、希少性や相対的な価値だけでなく、揺るぎない絶対的な価値を確立していくことが不可欠になる。そこで原点に立ち返り、資生堂の強みである価値創造力、価値伝達力、そしてそれらを融合し新たな美を実現する社員という3つの力をさらに磨く。今の時代だからこそ、05年に発表したスローガン「一瞬も 一生も 美しく」を体現し、自分たちで市場を創造していくことが、大事な道筋になると信じている。

WWD:新領域への拡張にも踏み出す。

藤原:資生堂はこれまでも、人を「一生」という時間軸で捉え、肌・体・こころの全体を対象に研究してきた。肌悩みについても、点ではなく線で捉えており、メディカル&ダーマ領域への進出は必然だと考えている。また、当社は優れた技術を持っていても、それらがさまざまなブランド・製品に分散している印象があった。今後はその効果を最大化させるため、コアブランドやコーポレート横断での技術活用を戦略的に推し進める。「シセイドウ」の“ビオパフォーマンス”シリーズはまさにその一例といえる。日本市場では、皮膚科医との連携を再強化し、皮膚科学の強みを生かした敏感肌サイエンスを確立する。中国市場では、上海の美容医療機関と共創したブランド「RQ PYOLOGY」の展開をスタートしている。競争ではなく共存し、共に価値を創造していくことで新市場を切り開いていきたい。

WWD:高齢化社会に対応した市場創造も進める。

藤原:30年には、日本の総人口の3人に1人は65歳以上になるといわれている。そうした社会において、当社が長年培ってきたエイジングケアの知見を生かし、シニア層に向けて「美の健診」を通じ、将来起こりうるトラブルを発見して予防を提案していくことは、当社の使命だと考える。一人一人の求める美の形に応え、生涯のライフパートナーとして寄り添う存在になることを目指す。日本を起点に、欧州やアジアなど世界にも展開できる事業へと成長させていきたい。

WWD:グローバルリーダーの育成にも注力する。

藤原:人財育成では、専門性を高められるジョブ型制度の良さを生かしつつ、サイロ化を防ぐために専門領域を超えた経験を積めるような多様なキャリアパスを整える。また、社員が国や文化を越えて働く“グローバルでのモビリティ”を促進し、グローバル視点を獲得する機会を設け、異文化への適応力を育む。これにより相互理解が深まり、グローバルで互いを支え合える“一体経営”を徹底し、組織全体が成長できる基盤を築いていく。

WWD:26年は成長に向けたギアが一気に上がる。

藤原:まさに成長へ大きく舵を切る年になる。その実現には、バリューチェーン全体を視野に入れたオペレーショナルエクセレンスの進化が欠かせない。ブランド、地域本社、サプライチェーンが一体となって動き、コスト効率化とアジリティの向上をともに追求する。市場環境に左右されず、安定して収益を生み出せる体制へと進化させていく。資生堂には、常に人と向き合い、新しい価値を発見し、革新的な創造を続けてきた歴史がある。今後も社員全員で美と向き合い、本質的で持続的な成長をし、生活者のみなさまに人生を豊かにする美の文化を共有していきたい。

個人的に今注目している人

サウンドアーティスト・即興音楽家 鈴木英倫子さん

資生堂ギャラリーが実施する新進アーティストのための公募プログラム「shiseido art egg」第18回で出会った鈴木英倫子さんの作品に強く引かれた。鈴木さんの作品は、AIがAIとして認識されるのは今だけだという気づきを与え、これからAIがビジネスや社会にどう関わるのかを自分に問い直す契機になった。アートは意識変革の触媒として、行動や価値観を揺さぶる“アクティビズム”の力を持つことを実感した。

COMPANY DATA
資生堂

1872年創業。現在、約120の国と地域で事業を展開する。企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、2030年に向けたビジョン「ひととの繋がりの中で新しい美を探求・創造・共有し、一人ひとりの人生を豊かにする」を策定。 社会変化が加速し人々の価値観が多様化する中、資生堂は一人ひとりに向き合い「新しい美」を研ぎ澄ませ、世界へ届ける。24年12月期連結業績は売上高9905億円


問い合わせ先
資生堂
https://corp.shiseido.com/jp/inquiry/