誰よりも先に新しいモノを見つけ、人々に紹介し、驚かせることを生業としてきたファッション業界の花形職「バイヤー」。「いつでも、どこでも好きな服が買える」といっても大げさではなくなった今の時代に、その役割と存在意義は大きく変化している。「WWDJAPAN」は13年ぶりの「バイヤー特集」で、新時代のバイヤー像を探る。(この記事は「WWDJAPAN」2025年9月8日号からの抜粋です)
「価値あるモノ」を
見抜く力はより重要に
セレクトショップの草分けであり、ファッションバイヤーの礎を築いたビームスが、1976年の創業から来年で50周年を迎える。その歩みを知る「生き証人」である設楽洋社長は8月下旬、ビームスの原点である原宿店のリニューアルに際して社内イベントに立った。
創業当時、カリフォルニアから誰も見たことのないモノを持ち込み、人々を魅力したビームス。その後半世紀の間に、セレクトショップ全盛を経てファストファッションの台頭、ECの普及などにより、バイヤーを取り巻く環境は様変わりした。設楽社長は「WWDJAPAN」の取材に、今のバイヤー像をこう語った。「セレクトショップという言葉すらなかった時代、われわれの役目は“まだ誰も知らないモノを見せること”でした。いまは逆にモノも情報も多すぎて、消費者は選べなくなっている。だからこそ“絞る”ことが役割になったのです」。
モノ、情報、人々の感情が氾濫する現代。入手自体は容易になったが、その中から「本当に価値あるもの」を選び抜く目利きの力は、むしろ必要性を増している。それは生成AIにも置き換えられない仕事だ。
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