毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2025年9月8日号からの抜粋です)
本橋:13年ぶりのバイヤー特集です。ファッション業界の花形職種ですが、ネットショップやファストファッションが浸透した今、目利きには改めてどんな重要性があるのか。仕事の中身は変わっているのかに迫りました。
佐藤:僕は今回名古屋で2件取材しましたが、買い付けだけではなく、デザイナーやブランドをさまざまな企画や地域性と結びつける動きをしているのが、とても興味深かったです。
本橋:具体的には?
佐藤:ジェイアール名古屋タカシマヤの自主編集売り場「スタイル&エディット」は、国内最大級の百貨店催事「アムール デュ ショコラ」に合わせて、バイヤー主導で「フェティコ(FETICO)」や「ヴィヴィアン・ウエストウッド」などとショコラティエをつなぎ、限定チョコレートを用意したりするんです。「アンリミテッド(UNLIMITED)」の鵜飼健貴バイヤーは地元・尾州の機屋と「シュタイン(SSSTEIN)」や「ヨーク(YOKE)」のデザイナーたちを結びつけ、フランネルのアイテムを作ってもらい、工場訪問ツアーを企画して、現地でのみ販売するイベントを実施していました。ブランドに対する理解と地域をどう結びつけて、どう展開するか。もはやプロデューサーです。
バイイング以上に編集力が重要
本橋:驚きって大事ですよね。表紙にした「アマノジャク」の小山逸生ディレクターも「店に行くと出合いがある」ことを意識していました。売れ筋を追うことで品ぞろえがコンサバ化してしまったり、オンラインで接客なしでもぽちっと買えてしまったりすることに危機感を感じていて。バッティングを気にしないで買い付けができる北千住で、接客しないと売れないものをあえてそろえて、ディスティネーションストアになっています。リスキーに見えて、合理的です。ちょっとずらしたりする編集力も必要ですね。
佐藤:編集力でいうと、地域性は差別化にもつながるんですよね。「スタイル&エディット」の村澤藍子マネージャーは、名古屋のコンサバな地域性を考慮した買い付けを独特な品ぞろえにつなげているようでした。売り切るところまでがバイヤーの仕事で「バイヤーは販売員の1人」と話していたのも印象的でした。