PROFILE: (左から)豊永譲司/「ユナイテッドアローズ」 メンズチーフバイヤー 李未玲/「レイ ビームス」バイヤー ⼤澤錬/「ミッドウエスト」バイヤー

セレクトショップを取り巻く環境の変化の中で、バイヤーの仕事はどのように変わっているのか?今回は世代も業態も異なる3人のバイヤーに日々の業務、買い付けを超えて広がるミッションについて語ってもらった。(この記事は「WWDJAPAN」2025年9月8日号からの抜粋です)
気温と価格にはますますアンテナを高く
WWD:まずは皆さんの仕事内容から教えてください。
大澤錬「ミッドウエスト」バイヤー(以下、大澤):国内外のデザイナーズを扱うセレクトショップ「ミッドウエスト(MIDWEST)」でメンズのバイイングを主に担当し、旗艦店である渋谷店ではマネージャーとして店を見ながら、別注企画やイベントの企画・立案も任されています。最近は、20代前半の若い世代のスタッフ教育にも力を入れていますね。
李未玲「レイ ビームス」バイヤー(以下、李):私は主に20〜30代がターゲットのウィメンズブランド「レイ ビームス(RAY BEAMS)」で、全店で取り扱うブランドの買い付け、別注企画に加えて、服飾雑貨の企画にも携わっています。
豊永譲司「ユナイテッドアローズ」メンズチーフバイヤー(以下、豊永):2004年にユナイテッドアローズへ入社しました。お二人に比べて、少し年上です(笑)。李さんと同じく販売員を経て、25歳の頃にバイイングアシスタント、28歳でメンズのドレス部門のバイヤーになりました。メンズのメインレーベルやドレスクロージングのスーツ、ドレスシャツのオリジナル企画も担当しています。バイヤー歴はアシスタントを含め15年ほどになります。
WWD:まず一番ベテランの豊永さんに聞きます。一昔前と今を比べて、仕事をする上で変化したことは?
豊永:やはり「気温」に向ける意識が大きくなったことでしょう。暖冬で昔のように「秋冬=重いコート」という前提は通用せず、今は3シーズン着られるものが主軸です。納期が大きな意味を持つようになりましたね。私が買い付けに行っているイタリアでも、現地のバイヤーやデザイナーが「どのタイミングで、何を提案するか」を強く意識しているのを見てきました。作り手も買い手も、「実需」を常に意識するようになっています。
李:私たちの店頭でも先物買いは減り、実需に合わせた購入が主流になっています。納期を外すと売れないので、例えば足元の8〜9月には「軽い羽織物が欲しいだろうな」といった具体的なシーンを想定して、リアリティーのある買い付けを心がけています。「今ちょうど欲しい」というジャストなタイミングで商品を届けることが重要ですね。
大澤:特にダウンやヘビーアウター、厚手のニットは、どれだけモノが良くても、日本の気温の中でリアリティーを考慮すると、買い付けに慎重にならざるを得ません。もちろんブランドのコレクションの意向に沿って「ルックとして必要だから」買うこともありますが、以前に比べると顧客の目がシビアになっている。だからこそ、今は3シーズン対応できるアイテム、例えば真夏以外に使えるシャツや軽めのアウターなどを意識的に選んでいます。冬ならインナー、春秋ならアウターとして着られる、といった提案ができるアイテムの方が現実的で、お客さまの声とも合致しています。
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