
マストレンドが消失した時代。それでも熱狂的に支持されるブランドがある。共通するのは、独自性を貫き、コアなファンを育み、一目でそれと断定できるシグネチャーアイテムを持つことだ。本特集では、強いコミュニティーを持つデザイナーへのインタビューを通じて、変革期を迎えた今、ファッションが提示する新たな価値観の本質に迫る。(この記事は「WWDJAPAN」2026年1月19日号からの抜粋です)
「キコ・コスタディノフ(KIKO KOSTADINOV)」
創業年:2016年
拠点:イギリス・ロンドン
主な価格帯:アウター 10万〜36万円、トップス 4万〜8万円、ボトムス 6万〜18万円
販路:キコ・コスタディノフ トウキョウ(KIKO KOSTADINOV TOKYO)、ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)、グレイト(GR8)、吾亦紅、シルバーアンドゴールド(SILVER AND GOLD)ほか

キコ・コスタディノフ(Kiko Kostadinov)/DESIGNER
SIGNATURE DESIGN
着実に歩んだ10年と"好奇心"で広がる輪
ロンドンを拠点とする「キコ・コスタディノフ」は、今年ブランド設立10周年を迎える。パリで年4回のショーを発表するほか、2024年に東京とロサンゼルス、翌年にはロンドンに直営店をオープン。独立系ブランドとして着実な成長を続けている。
シグネチャーは、ワークウエアやユニホームを起点に、体に沿って構築される立体的なカッティングと緻密な構築性、大胆な色使いにある。一貫して「なぜこの服は存在するのか」を問い続け、シーズンごとに物語のあるコレクションを制作。ここ数年は、自身のルーツであるブルガリアから着想したモチーフも加わり、表現に奥行きを与えている。19年春夏からは、ローラ&ディアナ・ファニング(Laura & Deanna Fanning)を迎えウィメンズを始動。メンズと同様の構築性を軸に、重要な柱として並走する。24-25年秋冬には、“セルフリファレンス(自己参照)”のみで構成したコレクションを発表した。「『リック・オウエンス(RICK OWENS)』などの歴史あるブランドが行う“振り返り”を、体験できたことは達成感があった」。
近年は、店舗の存在がブランドとコミュニティーの関係性をより強固なものにしている。ロンドンの旗艦店はアトリエの下階に位置し、制作と販売が地続きとなった空間だ。「毎週末のように足を運んでくれる方もいて、彼らの生活の一部になっていると実感できる。うれしさと同時に、責任も感じるようになった」。キコは、ブランドを取り巻くコミュニティーを“好奇心”と表現する。「服に限らず、音楽やアートなど、心から信頼できる友人や専門家とともにプロジェクトを行っている。その純粋なエネルギーや価値観に共有する人たちが自然と集まってくる」。また18年から続く「アシックス(ASICS)」との協業も欠かせない要素だ。コラボレーションライン「アシックス ノバリス(ASICS NOVALIS)」は、スニーカーにとどまらず、ワードローブ全体へと拡張。25年12月に新宿で開催した音楽イベントには、多くのファンが集った。今後については、「今やっていることにワクワクし、毎シーズン伝えたいメッセージを持ち続けたい。世の中は厳しい状況だが、“降参しない”という姿勢を忘れずにいたい」と遊び心を大切にしつつ、堅実に次のフェーズへと進んでいる。
「ルーダー(LUEDER)」
創業年:2019年
拠点:イギリス・ロンドン
主な価格帯:パンツ 約7万〜10万円、Tシャツ 約4万〜5万円、フーディー 約7万円
販路:公式EC、グレイト など

マリー・ルーダー(Marie Lueder)/DESIGNER
SIGNATURE DESIGN
服は心のよろい 時代に注ぐ
「癒やし」の視点
「ルーダー」のブランドコンセプトは、「メンタルアーマー(心のよろい)」。デザイナーのマリー・ルーダーが解釈するファッションは、着る人を守るシェルターだ。医療分野に従事する家族の影響もありルーダーは、「誰かをケアし社会に貢献する方法」を常に模索してきた。「ファッションは、天候から身を守る機能的な意味もあるが、内面的に安心させてくれたり、自信を持たせてくれたりするパワーもある。私の周りには、弱さや感情をうまく言葉にできずに苦しんでいる友人も多くいた。そんな人たちをそっと守るような服が作れたらと思った」と語る。
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