
今季、多くのブランドの鍵になったのは、「日常」や「生活」といった言葉だ。何気ない日々になじむウエアを提案しようと、要素をそぎ落としてシンプルな見せ方を貫いたデザイナーも少なくない。モノトーンやヌーディーなカラーパレットを主軸に、差し色程度にアクセントを散らす。ワードローブに欠かせないベーシックなアイテムに、シルエットや丈感で独自性を加える。特筆すべきは、これまでエレガンスを持ち味にしていたブランドが、デニムやスエットといったカジュアルな素材使いに取り組み始めたこと。もちろん、荒々しいムードで終わらないために、体にフィットするパターンやフェミニンな装飾でバランスを取っている。日常使いもオケージョン使いもしやすいアイテムが豊富だった。(この記事は「WWDJAPAN」2025年9月15日号からの抜粋です)
「ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)」
DESIGNER/村田晴信
着想源は都市に生きつつ、自然も愛する等身大の女性たち。光のスペクトル(波長)から抽出したパステルカラーや、水しぶきのダイナミズムを切り取ったフリンジドレス、日本庭園の美しさを銀糸で表現した西陣織のスカートなど、自然に由来するディテールを連打した。風に揺れるビスコースのセットアップやハンサムなビッグシルエットのシャツは「ハルノブムラタ」らしいエレガンスを醸し出す。スエットシャツやブランド初のデニムといったカジュアルな素材使いも相まって、街を堂々と闊歩する女性の姿が眼前に浮かぶようだ。
Designer’s Comment

最近出会う女性たちは、自然が作る本質的な美しさを理解し、軽やかに生きている。波の動きや川の流れなど、再現性のない瞬間の尊さに気づける人はすてきだ。そんな余裕ある女性のように、肩の力を少しだけ抜いたコレクションを作りたかった。具体的なアーティストを参照した部分もあるが、それ以上に“何気ない毎日を生きる女性像”をテーマに掲げている。
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