
創業デザイナーのジャック・マッコロー(Jack McCollough)とラザロ・ヘルナンデス(Lazaro Hernandez)が退任した「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)」は現地時間10日、2026年春夏コレクションをニューヨークで発表した。
次期デザイナーについては、コレクション発表の一週間前に「ディオティマ(DIOTIMA)」デザイナーのレイチェル・スコット(Rachel Scott)が就任したというニュースがアナウンスされた。既報のニュースによると、スコットが手がけるデビューコレクションは2026年秋冬シーズンからとのことだったが、実際には今シーズンからデザインチームとのコラボレーションという形で、スコットのクリエーションがコレクションに色濃く投影されていた。会場には「プロエンザ スクーラー」の新章を一目みようと多くの人々が訪れた。なお、ジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスは4月7日付で「ロエベ」のクリエイティブ・ディレクターに就任している。
垣間見えるアーカイブへの忠実さと
未来へとチャレンジする姿勢
プレゼンテーション形式での発表はモデルが新作に身を包み、観客たちの前を歩いて行くというランウェイショーに近い演出。ファーストルックは白のテーラードジャケットとスカートのセットアップ。裏面が表面として採用されたジャガード生地からは系がほどけ、フリンジのようなテクスチャーでモデルの動きとともに軽やかに揺れる。ねじったり、カットアウトの処理が表情豊かなニット、空気をはらみながらドレープが自然に揺れるドレス、モノトーンの構築的なテーラードジャケットをはじめ、ジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスが得意としたテーラードを軸の都会的で洗練されたミニマルな服作りは健在している。デフォルメされた菊の花のプリントやグラフィック処理された幾何学模様もモダンさを助長させる。
そうしたブランドの核となるDNAを守りながらも、スコットが見せたのは自身が得意とするクラフト感溢れる繊細なテクニックの数々。ジャマイカ出身のスコットは、自身のブランド「ディオティマ」でも故郷で用いられる手仕事にフォーカスし、伝統的なクロシェ技術をモダンに昇華させている。「プロエンザ スクーラー」でもレーザーカットや刺繍を駆使し、都会的で構築的なテーラードを取り入れたコレクションに温かみと奥行きを持たせている。
また、そこには女性デザイナーらしい、実際に着ることをイメージしやすい柔らかな抜け感に加え、赤やオレンジのビタミンカラーが溌剌とした印象を持たせた。モデルが会場内を歩いた後は、間近で繊細なカットワークやプリント、ドレープ、複雑なパターンを見ることができた。バリエーションに富んだアクセサリーもバランスのとれたスタイリングに一役買っていた。ファーがあしらわれたサンダル、メッシュやラフィアのバッグ、フリンジのような菊の花がデコレーションされたサンダルなど、素材で動きを出している。
アップカミングなデザイナーとして注目されているスコットだが、今後はより深く「プロエンザ スクーラー」のクリエーションに関わっていくことでさらに目が離せなくなりそうだ。ちなみに、自身のブランド「ディオティマ」も15日に初のランウェイ形式でのショーを企画している。