
トレンドの主たる発信源は依然パリ・ミラノにあり、ショーを実施するブランドの減少や滞在コストの上昇も重なって、ニューヨーク・ファッション・ウイークはかつてほどの存在感を保ちにくくなっている。だが一方で、先進国では珍しくZ世代を中心とした若者が人口の大きな割合を占め、多国籍都市のバックグラウンドと相まって、他都市にはないエネルギーがファッションシーンに生まれているのも事実だ。ここでは、取材を通じて浮かび上がった注目すべき5つのトピックを紹介する。(この記事は「WWDJAPAN」2025年10月6日号からの抜粋です)
TOPICS 1:
「プロエンザ」「フィリップ リム」は
創業デザイナー交代で新章へ
「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」や「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」など、創業デザイナーが今も現役のブランドが多いニューヨーク。デザイナー交代が常態化している欧州メゾンとは異なるが、新陳代謝の兆しが見えてきた。
「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)」は創業デュオのジャック・マッコロー(Jack McCollough)とラザロ・ヘルナンデス(Lazaro Hernandez)が退任し、「ロエベ(LOEWE)」の新クリエイティブ・ディレクターに就任。その後任として抜擢されたのが「ディオティマ(DIOTIMA)」を手がけるレイチェル・スコット(Rachel Scott)だ。発表は2026年春夏ニューヨーク・ファッション・ウィークのわずか一週間前。レイチェルは自身のブランドを続けながら「プロエンザ スクーラー」を率いることになった。
彼女は23年LVMHプライズのファイナリストにノミネートされ、CFDA VOGUEファッションファンド準優勝、CFDA年間最優秀新進デザイナー賞、そして24年にはCFDAファッションアワード「アメリカン・ウィメンズウェア・デザイナー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した注目株だ。「ディオティマ」では故郷ジャマイカを思わせるマゼンタやライムといった鮮烈な色彩と、クリスタルのようなメッシュニット、羽のように軽やかなチュールなどをテーラードに融合し、独自の存在感を放つ。
26年春夏シーズンの「プロエンザ スクーラー」はデザインチームとレイチェルの協業という形だったが、彼女のクリエイションが色濃く表れた。得意とするクロシェ編みや刺しゅう、レーザーカットなどのクラフトを取り入れ、構築的なテーラードに温かみを与えた。都会的ながら柔らかさのあるコレクションに、ビビッドカラーを乗せ、新章の幕開けを印象づけた。
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