
複数のビッグメゾンが同時にデザイナー交代するというファッション史の変革を迎えた2026年春夏シーズン。コレクションを初披露するショーは、モデルのキャスティングもブランドの新たな道を占う大きな指針になるが、新任デザイナーと同じく、ニューフェイスのモデルたちが多く活躍した。エクスクルーシブ起用を含む注目のモデルを紹介する。
「シャネル」の新たな幕開けにバルセロナの新鋭
象徴的なファーストルックを着こなしたのは、バルセロナ拠点の新鋭モデル、アディツァ・ベルゼニア(Aditsa Berzenia)。ロシア版「エル(ELLE)」のカバーガールや3年目のショー経験という実力者ながらも、今回、世界限定起用のワールドワイドエクスクルーシブで大役を務めた。整った骨格と透明感のある佇まいがマチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)の「シャネル(CHANEL)」初ショーを華やかにスタートさせた。
このショーでデビューしたアデン・マリアル(Adeng Marial)とマイリス・ル・ブラン(Maylis Le Brun)もワールドワイドエクスクルーシブとして選ばれた新人。また、トランスジェンダーを公表している俳優のラックス・パスカル(Lux Pascal)もモデルとして登場した。
フィナーレでマチューを讃え、ショー直後から話題を集めたのは、南スーダン出身のアワー・オディアン(Awar Odhiang)。ここ数シーズン、主要メゾンの起用で大忙しの彼女とマチューは「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」期からの仲で、再タッグとなった今回のショーで観客を大きな感動に包み込んだ。
「ディオール」ジョナサンは無名モデルを発掘
ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)のショーといえば、新人モデルの発掘場ともいわれるほど、無名のモデルが多く起用されている。今回の「ディオール(DIOR)」もコレクション同様に、モデルに熱い視線が注がれた。中国出身のシーチー・ファン(Shiqi Fang)、ローラ・カイザー(Laura Kaiser)、アンナ・ヴィクソー(Anna Viksoe)の3人は、このショーで初めてランウエイに立った注目株。いずれもインスタグラムのフォロワーはまだ少なく、シーチーについてはようやく50人を突破したばかり。
オープニングを飾ったのは、英国出身のダナ・スミス(Dana Smith)。ジョナサンの「ロエベ」22年春夏でデビューしたダナは、「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」にも何度も起用されてきた。25年春夏の「ロエベ」最後のショーでもダナはファーストルックを担い、今回も続けて大役を務めた。
「ロエベ」はオランダ出身のデビュー組が活躍
ニューヨークで長年自身のブランド「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)」を手掛けてきたジャック・マッコロー(Jack McCollough)とラザロ・ヘルナンデス(Lazaro Hernandez)の「ロエベ(LOEWE)」。若々しさあふれるデビューコレクションには、新顔もずらり。唯一ワールドワイドエクスクルーシブとして選出されたのは、ショー中盤に登場したドイツ出身のフローラ・イサート(Flora Isert)。エージェンシーに登録したばかりで、これからの活躍が見どころだ。
その他の注目は、オランダ出身勢のマデリーフ・ワインカー(Madelief Wijnker)とニア・リーブラー(Nia Liebler)、テス・フロートヘン(Tess Grootjen)。マデリーフは「クロエ(CHLOE)」、ニアは「エルメス(HERMES)」にも抜擢された。
「ボッテガ・ヴェネタ」はデビューモデルを大役に
ルイーズ・トロッター(Louise Trotter)による「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」では、オープンとクローズの2つの大役に1人を抜擢した。フランス国籍のマリーヌ・サラ(Marine Sara)だ。実はこの大舞台で、ランウエイデビューを果たした大型新人。モデルの傍ら、「サントロペ アイウエア(SAINT-TROPEZ EYEWEAR)」の共同経営者という実業家の顔も持つ。
彼女のほかにも、デビューしたばかりのアニック・チャン(Anick Chan)や、経験の浅いラヘル・ドロス(Rahel Dross)ら、フレッシュな顔ぶれが存在感を放った。エクスクルーシブには、無造作な切りっぱなしのボブが印象的なアンナ・キルユスキナ(Anna Kirjuskina)と、活躍中のメンズモデル、レボ・マロペ(Lebo Malope)をセレクト。二人ともオールホワイトのルックを着こなし闊歩した。
「バレンシアガ」はウクライナ出身の新星を抜擢
ピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)の新生「バレンシアガ(BALENCIAGA)」では、ウクライナ・キエフ出身のセン・サミシェヴァ(Sen Samysheva)がファーストルックに登場。さらにヌーディーなドレスに着替え、2度起用された。センは同じくリブランディングした「ジル・サンダー(JIL SANDER)」でデビューし、その後「ミュウミュウ(MIU MIU)」でも抜擢された。日本のステージにも所属している。
ワールドワイドエクスクルーシブは5人。同じセレクトに所属するアブク・マイエン(Abuk Mayen)とファマ・ディオプ(Fama Diop)、ユニ・ドンカース(Juni Donkers)の3人と、アムステルダム拠点のリーケ・ポラック(Lieke Polak)とイタリア人のマティルデ・デ・ナード(Matilde de Nard)が活躍した。
26年春夏の“顔”はアメリカ出身のベッツィ・ガガン
今シーズン、最も多くのランウエイを歩いたのは、アメリカ出身のベッツィ・ガガン(Betsy Gaghan)。「モデルズドットコム(Models.com)」によると、その数38回。21-22年秋冬の「ミュウミュウ(MIU MIU)」で鮮烈デビューを果たしたものの、「自身のこれからの道を見つめ直したい」とブランクを経て25-26年秋冬にカムバックした。それでもショーや広告、雑誌への起用が続き、今最もホットなモデルとして浮上している。
日本人モデルがミラノ&パリで大健闘!
東京コレクションで着実に実力をつけ、ヨーロッパへ挑戦する日本人モデルたち。アサコは「ヴァレンティノ(VALENTINO)や「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」、樋口可弥子は「トム フォード(TOM FORD)」といったニューデザイナーから声がかかった。また、パリ拠点の小田鈴音は「リック・オウエンス(RICK OWENS)」、デビュー1年足らずで頭角を表しているアスカは「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」、海老原優斗はデザイナー亡き「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」でそれぞれ堂々のウオーキングを見せた。