ファッション

新生「ロエベ」は、鮮烈な色彩とスポーティーなミックスで若々しくシフト【26年春夏 新デザイナーの初コレクションVol.10】

ロエベ(LOEWE)」は、「ディオール(DIOR)」に移籍したジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)の後任としてクリエイティブ ・ディレクターに就任したジャック・マッコロー(Jack McCollough)とラザロ・ヘルナンデス(Lazaro Hernandez)が初めて手掛ける2026年春夏ウィメンズ・コレクションを発表した。02年にニューヨークで立ち上げた「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOLER)」のデザイナーを退任し「ロエベ」を手掛ける準備を整えたジャックとラザロは、若々しくスポーティーなエネルギーを注入し、ブランドの新たな方向性を明確に示した。「『ロエベ』に参加することは、飽くなきクラフトへの揺るぎないコミットメントとスペインというアイデンティティーから成り立つ180年の歴史のコードを受け継ぐことを意味する。私たちの仕事は、この精神を自分たちならではの視点で解釈し、前進させることだ」と2人は説明する。

何よりも印象的だったのは、ショーに先立って公開したティザーやインビテーション、そして会場のエントランスに飾ったエルズワース・ケリー(Ellsworth Kelly)によるアート作品「Yellow Panel with Red Curve」からも垣間見えたビビッドな色使い。赤や黄、青、マゼンタピンク、緑、オレンジといったさまざまな色がエネルギッシュにコレクションを彩る。

ファーストルックは、「ロエベ」のクリエイションにおけるキー素材であるレザーのジャケット。肉厚な素材を立体成型で、サーフィンやダイビングのウエットスーツを思わせる体に沿ってカーブしたシルエットで仕上げている。そこに合わせるのは、鮮やかな黄色のニットのトップスとビキニボトム。さらにその下に着せた真っ赤なシャツは、襟や裾がルーズにはみ出し抜け感を生む。その後もレザーを随所に取り入れながら、彼らが長年暮らしてきたニューヨークの都会的なスタイルと、地中海に面する街や島を有するスペインの太陽が降り注ぐ夏を想起させる明るさやビーチの楽観的なムードを交錯させた。

ジャックが「私たちが育つ中で培ってきた装いの感覚を、このコレクションに取り入れたかった」と話すように、前者を象徴するのはゴアテックスのパーカやアノラック、ブルゾン、ポロシャツ、Tシャツ、Vネックセーター、ストライプシャツといったアメリカンスポーツウエアやプレッピーに通じるアイテム。一方、後者は大判のタオルを体に巻き付けたようなデザインのベアトップドレスやビーチチェアなどに見られるようなマルチカラーストライプをプリントしたシアーなマキシドレス、ビキニやサーフショーツのようなスタイルのボトムスから感じられる。

全体的にハリのある素材感や硬質なフォルムが多い中で目を引いたのは、異なる生地を重ねた縫い代部分がカスケードラッフルのように流れるドレス。ウエストを絞ったシャープなテーラードジャケットや、帯状の生地を片側に垂らしたミニスカートなどに見られるアシンメトリーなシルエット、ドラマチックに揺れ動くフリンジスカートは、2人の“らしさ“が際立つデザインだ。そして、「ロエベ」のカギとなるクラフトの要素は実験的なアプローチで取り入れている。デニムジャケットやジーンズ風のアイテムは、細かくハサミを入れ、表面に質感を加えたレザーで制作。シワクチャな形状を記憶したようなニットのタンクミニドレスやTシャツ風トップスも、よく見ると細いレザーの“糸”を編んで作られているようだ。

バッグは、大ぶりでよりクタッとした形状とワンハンドルのデザインで再解釈した“アマソナ180"や、これまでレザーのノット(結び目)になっていた部分を渦巻き状のパーツに変えた巾着型の“フラメンコクラッチ”などで、アイコンをアップデート。鮮やかな配色と大きなロゴが目を引くバケットバッグや、貝殻のようなパーツをたっぷりあしらったクラフト感のあるレザーのバスケットもラインアップする。足元はショートソックスのような色鮮やかなインナーパーツを合わせた透明なPVC製のキトゥンヒールシューズ、折り紙のように畳んだレザーのポインテッドミュールなどを打ち出す。レザー工房を背景にしたラグジュアリーメゾンとして、アクセサリービジネスは極めて重要だ。今回のショーだけを見ると、バッグ&シューズにはまだ発展の余地が大きいと感じる。「プロエンザ スクーラー」ではアクセサリーデザインにも定評があった2人だけに、今後の提案に注目したい。

また、レザーグッズを中心にジョナサン・アンダーソンのクリエイションが幅広い年代やスタイルの顧客に支持され、売り上げも伸ばしていた日本市場では、新生「ロエベ」に見られるクールで官能的なエッジやスポーティーな若々しさが浸透するには少し時間を要するかもしれない。しかし、ジャックとラザロの色彩感覚や明快さ、クラフトへの情熱、モダンで実用的な服作りに対する考え方は、見どころがある。ショーのフィナーレには、2人のホームであるアメリカの業界人を筆頭に多くのゲストがスタンディングオベーションで彼らを迎え、明るい新章の幕開けを印象付けた。

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