毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2025年9月15日号からの抜粋です)
伊藤:2026年春夏の東コレは、“日常”という言葉が頻出し、人間らしい営みに注目が集まったシーズンでした。もちろん、ブランドごとにアプローチはさまざまで、「ピリングス」はスーパーマーケットの「まいばすけっと」がテーマ。「ハルノブムラタ(HARUNOBUMURATA)」は都市に生きる現代女性に向けたワードローブ提案で、「フェティコ(FETICO)」や「チカ キサダ(CHIKA KISADA)」は人間の奥深さや肉体の美しさ、「ヴィヴィアーノ(VIVIANO)」はクラフツマンシップにフォーカスしていました。
沼:「ヨシオクボ( YOSHIOKUBO)」はブレイキンのダンスバトルをしている周りをモデルが歩くという演出でしたね。ダンサーの人並み外れた技や尋常じゃない肉体に感動すると同時に、コロナ禍を経て、AIが台頭してきた今、「リアルが大事」というのは、多かれ少なかれどんなデザイナーも感じているのではないかと思いました。
ハイクオリティーなショーが多かった
伊藤:もともとビューティ分野が担当の沼さんは、今回が初のファッション取材。何が一番印象に残りましたか?
沼:前回はバックステージでヘアやメイクの取材をしましたが、今回はショーからデザイナーのメッセージをストレートに受け取ることができて、全体像をより理解できました。個人的には事前号で「ムッシャン」を取材して、7月5日の予言という着想源に驚き、ショーの中でも枕などのプロップを通して「死はいつ来るか変わらない」というメッセージを伝えながら、服もすてきだったところに感動しました。伊藤さんはどうでしたか?
伊藤:私は「アンセルム(ANCELLM)」が面白かったです。岡山県児島のデニムの加工技術を服作りに生かしているブランドで、東コレ初登場。お客さんが700人も来ていて驚きました。若者も多く、職人技の価値に気づくファッションリテラシーの高さに感動しました。今シーズンは20強と出場ブランドが少なかったけれど、日本ファッション・ウィーク推進機構の狙い通り、ハイクオリティーなショーが多かったです。取材がしやすい利点はありましたが、参加数が少ない寂しさを感じたのも正直なところ。いろいろな立場の人がどう評価したかも追って取材したいと思います!