動画投稿アプリTikTokを巡り、アメリカが揺れている。2024年4月に成立した“TikTok禁止法”が19日に発効して間も無く、1月20日に就任したドナルド・トランプ大統領は同法の適用を75日間延期する大統領令に署名した。「ナイキ(NIKE)」「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」などのビッグブランドのみならず、多くのブランドがTikTokを通して若年層とのタッチポイントを創出してきたことを踏まえると、ファッション&ビューティ業界にとっても同法案の行く末は注目に値する。
ジョー・バイデン前大統領が、TikTokを運営する中国企業のバイトダンスに対し、米国事業の売却もしくは停止を義務付ける超党派の法案に署名したのは2024年4月のことだ。同社が今年1月19日までに米国事業を売却しない限り、TikTokはサービス停止やアプリの新規ダウンロード禁止などの影響があると言われてきた。ただ、昨年11月にドナルド・トランプ大統領が再選してから、同社には追い風が吹き始めている。同氏は前回大統領を務めていた20年こそ、大統領令を発表してバイトダンスに米国事業の売却を命じたものの、現在は態度を一転。法案の発効延期を認める大統領令に署名し、TikTokのサービスを再開させたほか、TikTokのショウ・ジ・チュウ(Shou Chew)最高経営責任者と面会したとの報道もある。
TikTok側も黙っていない。24年12月16日には最高裁判所に対して同禁止法の緊急差し止め命令を申請し、「米国人の言論の自由を保護すること」と「言論の弾圧に対して最も厳格な監視を適用し、言論弾圧はアメリカ合衆国憲法修正第1条への違反とすること」を声明で要求した。さらに、SNSプラットフォームの禁止は大規模かつ前例のない検閲行為で、施行されればTikTokを利用する中小企業は10億ドル(約1570億円)以上の収益を失い、クリエイターらはわずか1カ月で約3億ドル(約471億円)の利益損失を被るとも発表している。なお、ロサンゼルス・ドジャースの元オーナーで投資家のフランク・マッコート(Frank McCourt)は、自身が設立した健全なインターネット環境の構築を目指すグループ「プロジェクト・リバティ(Project Liberty)」を介して、TikTokの米国事業の買収案を提示しているが、バイトダンスは「TikTokは売り物でない」とこれまでに幾度も表明しており、実現の可能性は低い。
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