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インディテックスVS.ファストリ 白熱するグローバルSPAの覇権争い【小島健輔リポート】

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ファッション業界のご意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。グローバルSPA(製造小売業)の覇権争いが熱を帯びている。売上高ランキングで1位は「ザラ(ZARA)」を展開するスペインのインディテックス。2位はスウェーデンのH&M、3位が「ユニクロ(UNIQLO)」を運営する日本のファーストリテイリング(ファストリ)。ファースリがH&Mを追い抜くのは時間の問題といわれる。今回はインディテックスとファストリの実力を詳しく比較してみた。

「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングの2025年8月期決算、H&Mの25年11月期決算に続いて、「ザラ(ZARA)」を展開するインディテックスの26年1月期決算が開示され、グローバルSPA3強の決算が出そろったが、インディテックスの圧倒的なリードとファーストリテイリングの追い上げの陰でH&Mは勢いがなく、来期は売上高でファーストリテイリングに追い抜かれそうな状況だ。

インディテックスVS.ファストリ 決算比較

インディテックスの26年1月期は売上高が398億6400万ユーロ(期中の平均為替レート172.1円で6兆8606億円)と、25年11月期のH&Mの2282億8500万スウェーデンクローナ(期中の平均為替レート15.6円で3兆5612億円)も25年8月期のファーストリテイリングの3兆4005億円も大きく引き離したが、前期からの伸び率は3.2%とファーストリテイリングの9.6%に及ばなかった。

H&Mの売上高は前期から2.6%減少してコロナ前19年11月期に対しても98.1%と届かなかったが、インディテックスは20年1月期から40.9%、ファーストリテイリングは19年8月期から48.5%も伸ばしている。この勢いの差では来期はファーストリテイリングに追い抜かれて3位に転落しそうで、H&Mは既に首位争いからは脱落しているから、以下はインディテックスとファーストリテイリングを比較していく。

インディテックスの粗利益率は58.25%と前期から0.5ポイント上向いた一方、販管費率は38.20%とわずかに低下し、営業利益率は20.06%と0.51ポイント上昇した。コロナ下21年1月期の大底7.4%から早くも23年1月期には16.9%とコロナ前の水準を回復し、25年1月期には19.6%と00年以降の最高水準だった13年1月期の19.5%を超え、26年1月期は20%の大台に乗せた。自ら商品を開発・調達・物流して8業態の5460店舗(内FC店1150店舗)を世界の97の国と地域に展開しながら(ウクライナもベネズエラもレバノンもイスラエルも……)、これほどの運営精度を実現するマネジメントの仕組みは想像の域を超える。

対するファーストリテイリングの粗利益率は53.78%と前期から0.12ポイント低下したが、販管費率が37.57%と0.70ポイント低下し、営業利益率は16.59%と0.45ポイント上昇した。この水準は10年8月期の16.2%を15年ぶりに超えるもので、国内外ともユニクロの運営精度が着実に高まったと受け止めるべきだろう。

ちなみに国内ユニクロの粗利益率は50.7%と海外ユニクロの55.9%の9掛けで、価格抵抗感の強い国内と海外の価格差を反映していると推察される。お買い得だからユニクロの都心店では外国人観光客が目立つが、国内ユニクロ事業に占める免税売上高は前期の8%から9%に上昇した程度と意外に限定的だ(全国百貨店総額売上高に占める免税売上比率は24年で11.24%、25年で9.99%)。

販管費の内訳ではインディテックスの人件費率が14.8%と0.20ポイント上昇したのに対し、ファーストリテイリングの人件費率は13.8%と0.29ポイント低下した。矢継ぎ早の賃上げからは意外な感があるが、売上高の9.6%増と店舗運営の省力化が大幅な賃上げを吸収したと推察する。設備費(賃料と減価償却費)は店舗だけでなく物流施設やソフトウェアなども含むが、インディテックスは10.9%(賃料2.7%、減価償却8.2%)と前期から0.07ポイントとわずかながら低下、ファーストリテイリングは10.0%(賃料3.7%、減価償却6.3%)と0.28ポイント低下した。これも売上伸び率の差(3.2%VS.9.6%)に起因すると思われるが、インディテックスの販売効率の頭打ちについては後述する。

結果、インディテックスの当期利益率は15.60%と0.42ポイント、ROEは30.5%と0.6ポイント、ROAは17.5%と0.6ポイント上昇した。ファーストリテイリングの当期利益率は13.50%と0.82ポイント、ROEは20.2%と0.68ポイント、ROAは11.9%と0.93ポイント上昇したが、未だROEやROAの水準には格差があるのは財務政策の違いもあると思われる。

インディテックスの一株当たり当期利益は1996ユーロと前期から5.94%、20年1月期からは70.9%上昇したが、ファーストリテイリングの一株当たり当期利益は1411.44円と前期から16.4%、19年8月期からは2.66倍に跳ね上がった。インディテックスが洗練された成熟期に移りつつあるのに対し、ファーストリテイリングは成長期の勢いが復活している。

インディテックスの販売効率推移

インディテックスの店舗数は直営店が4310店と前期から119店減少、FC店が1150店と同16店増加して計5460店となり、前期から103店、コロナ前20年1月期からは実に2000店以上も減少した。売り場面積は前期から1.5%増えたが20年1月期からは7.2%減少しており、一店平均面積は864.6平米と前期から3.4%、20年1月期からは27.0%拡大した。一店平均売上は730.1万ユーロ(12億5652万円)と前期から5.1%、20年1月期からは92.7%も増加し、平米当たり売上は8444.5ユーロ(145.3万円)と前期から1.7%、20年1月期からは51.8%も上昇している。

「ザラ」は1500店と前期から50店、「ザラホーム(ZARA HOME)」は374店と同17店減少したが、シーインの対抗馬とされる「ザラ」の低価格版「レフティーズ(LEFTIES)」※1.は215店と同6店増えた。テイストが大差ない「レフティーズ」は「ザラ」を食うリスクもあってか展開国はまだ18カ国にとどまり、スペイン、ポルトガル、メキシコ、サウジアラビアに集中して出店している。

売上高も売り場面積も「ザラ」「ザラホーム」「レフティーズ」を合わせて「ザラ」として開示しているので、このくくりで計算する。売上高は280億5100万ユーロと全社の70.4%を占めるが、前期から1.0%しか伸びておらず、シェアは1.5ポイント低下した。20年1月期からは43.4%伸びているが「レフティーズ」も加わっており、「ザラ」だけの伸び率はつかめない。「ザラ」をドレスシフトして単価を上げる一方で低価格志向の顧客は「レフティーズ」でカバーする方針と見られるが、両者のテイストやカラーリングは全く差がなく(もちろん品質には差がある)、カニバリを恐れてか「レフティーズ」の展開地域は恐る恐る拡大されているようだ。

店舗数は2089と前期から61店減少したが店舗面積は同1.3%拡大し、一店平均面積は1522.5平米と同4.3%、一店平均売上高は1342.8万ユーロ(23億1096万円)と同3.9%拡大した。平米当たり売上高は8819.4万ユーロ(151.8万円)と20年1月期からは50.8%も伸びているが、前期からはわずかかながら(0.3%)減少した。

インディテックスはコロナ以降、急拡大したEC(EC比率は20年1月期の13.9%から21年1月期は32.3%)の顧客と店舗顧客を地域ごとに一元管理し、FC※2.出荷から店舗在庫引き当ての店舗渡し・店出荷に切り替え、店舗網と在庫を適正に再配置するローカルOMOマーケティングを推し進めてきた。その成果で前期は一店平均売上が20年1月期から1.81倍、平米当たり売上高も同1.49倍に伸びたが、今期はその効果が一巡した感がある。

※1.「レフティーズ(LEFTIES)」…「ザラ」のアウトレットからリコンセプトした低価格業態で、「プライマーク」や「シーイン」に対抗する位置付け。テイストは「ザラ」と大差なく、スタイリッシュなドレスアイテムも豊富でカジュアルもキレイめだが、素材や縫製が落ちる分、「ザラ」よりゆる抜けたフィットになっているようだ。ドレスは9.9ユーロから、ジーンズは12.99ユーロからそろうとアナウンスされているが、今春のオンラインサイトで見る限り、ドレスは15.99〜19.99ユーロ、ジーンズは15.99〜29.99ユーロと上振れしており、9.99ユーロで買えるのはTシャツぐらいしか見当たらなかった

※2.DCとTCとFC…入荷した商品を棚入れしてからピッキングして出荷する保管型のDC(Distribution Center)に対し、棚入れせず仕分けして送り出す通過型の物流施設がTC(Transfer Center)で、FC(Fulfillment Center)は通販の出荷用DC

ファーストリテイリングの販売効率推移

ファーストリテイリングは連結と国内ユニクロの二軸で見た。総店舗数は25店減の3570店と、コロナ下20年8月期の103店減以降、初めて減少に転じた。FC店は国内ユニクロの10店だけで変化がなかった。売り場面積は前期から1.7%増えて19年8月期からも26.1%増加し、一店平均面積は1017.8平米と前期から2.4%、19年8月期からは26.8%拡大したが、インディテックスも同期間に27.0%拡大している。

一店平均売上高は9億5253万円万と前期から10.3%、19年8月期からは49.3%拡大したが、インディテックスは同期間にほぼ同様な一店平均面積拡大なのに一店平均売上高は92.7%も拡大している。平米当たり売上高は93.58万円と前期から7.7%、19年8月期からは16.4%拡大したが、同期間のインディテックスは51.8%も拡大している。この差は「店舗在庫軸ローカルOMOマーケティング」以前と以後の違いだと思う。

ユニクロは世界で2519店と前期から24店、19年8月期からは323店増えたが、国内は794店と前期から3店、19年8月期からは23店減少した。メジャートレンド追いの低価格若向け業態「ジーユー(GU)」は486店と前期から14店、19年8月期からは65店増えた。

ユニクロの売上高は2兆9364億円とファーストリテイリング全社の86.3%を占めて19年8月期の82.9%から3.4ポイント上昇し、前期から11.1%、19年8月期からは54.6%も伸びた。国内ユニクロの売上高は前期から10.1%増えて1兆261億円と初めて大台に乗ったが、19年8月期からは17.5%しか伸びていない。その一方、海外ユニクロは1兆9103億円と前期から11.6%、19年8月期からは86.2%も伸びている。

「ジーユー」の売上高は3307億円と前期から3.6%しか伸びず、19年8月期からも38.5%増と「ユニクロ」に比べると成長が見劣りするが、マーチャンダイジングもようやく定まりつつあり、アグレッシブな多重露出のルックVMDも「ユニクロ」よりインパクトがある。賃上げで若年層の購買力も高まっており、海外展開も本格化しつつあるから、再成長に転ずると期待される。

国内ユニクロ直営店の平均稼働売場面積は前期から1.6%、19年8月期からは13.4%拡大し、一店平均面積は1066平米と前期から1.7%(18平米)、19年8月期からは11.6%(111平米)拡大した。一店平均売上は10億9240万円と前期から10.1%、19年8月期からは13.1%拡大しているが、「ザラ」の23億1096万円の半分にも届かない。平米当たり売上高は102.8万円と前期から8.0%伸びても19年8月期からは0.7%しか伸びておらず、「ザラ」の151.8万円の67.7%にとどまる。その差は価格帯とドレス比率の違い、ローカルOMOマーケティングの進展度によるもので、容易に縮まるとは思えない。

一人当たり売上高は店舗規模の拡大と店舗DXなどによる運営の効率化で4261万円と前期から10.8%、19年8月期からは36.6%も上昇してアパレルチェーンとしてはトップクラスの効率に達しているが、逆算すれば一店平均運営人員は25.64人(臨時雇用者は8時間換算)と前期から0.2人、19年8月期からは5.4人も減少している。6期間で一店平均面積が11.6%、一店平均売上が13.1%拡大する中で運営人員を17.3%も圧縮できたのだから人時効率は跳ね上がるわけで、賃上げ競争に苦闘するアパレルは真剣に学ぶべきだろう。

一店平均在庫(期初期末平均)と一店平均売上高、粗利益率から国内ユニクロ直営店の在庫回転も計算できるが、25年8月期は3.43回と前期から0.1回転、19年8月期からは0.79回転、速まっている。

両者の商品財務を比較する

インディテックスとファーストリテイリングの商品財務はどちらも良好ながら、政策は対極的だ。どちらも路面店が多くテナント出店でも売上金を直接収納していることから、売上債権回転日数は10日強と大差なく、前期からの変化も小さい。

国内アパレルチェーンの多くは「売上金預かり制」のテナント出店が大半で、商業施設デベロッパーが毎日の売上金を預かって月前半の売上金から固定の家賃や共益費を差し引いて月末に、月後半の売上金から歩合家賃や変動共益費を差し引いて翌月15日にテナントに振り込むのが一般的だ。よって直接収納より22.5日、売上金の入金が遅れることになる。実際、国内のテナント出店型アパレルチェーンでは短くて20日前後、長ければ40日にも及んで資金繰りを圧迫している。欧米では売上金はテナントが直接収納するから、欧米のアパレルチェーンが日本で出店する場合は直接収納を要求することが多い。

棚資産回転日数は、どちらも自社開発型SPAながら、インディテックスは鮮度優先の小ロット・ファスト生産・無補給売り切りゆえ71.3日、ユニクロはコスト優先の大ロット・計画生産・継続補給販売ゆえ118.7日と47.4日の差がある。どちらも前期より3日前後短縮しているが、インディテックスは22年1月期からは12日近く短縮しているし、ファーストリテイリングも23年8月期からは4.6日、22年8月期からは43日も短縮している。それだけ売上予測と在庫配分・消化管理の精度が高まったと評価すべきだろう。

棚資産回転は調達後の販売消化によるところが大きいが、調達のリードタイムも消化率を左右して棚資産回転に影響する。インディテックスはアジア生産を抑制してモロッコ、トルコなど近欧圏の生産比率を高め(6割強)、自社染色裁断素材・部材供給とDX連携でリードタイムを短縮し完成度も高めて平均単価も高めているが、ユニクロが欧米への調達リードタイムを短縮すべく近欧圏や中米に生産地を分散する動きはない。

買掛債務回転はインディテックスとファーストリテイリングの政策が大きく異なる。インディテックスが前期から4.7日短縮しても188.3日とサイトが長いのに対し、ファーストリテイリングは前期から8.8日短縮して90.6日とインディテックスに倍する速さで、支払いはファーストリテイリングの方がファストだ。

結果、キャッシュコンバージョンサイクルはインディテックスがマイナス106.4日と、純資産対比57.0%もの回転差資金が生じているのに対し、ファーストリテイリングは支払いを早めた分、38.4日と6.6日延びたが、純資産対比の運転資金率は2.3ポイント上昇しても15.4%と極めて健全な水準だ(ROE志向の強い欧米のアパレルチェーンでは100%を超えることも珍しくない)。

商品経営の効率を示す交叉比率はインディテックスが58.25%×5.07回転の295.3(前期比−3.3ポイント)、ファーストリテイリングは53.78%×3.19回転の171.6(前期比+4.5ポイント)とインディテックスの58%にとどまるが、価格帯と調達システムの根本的な相違に加え、「店舗在庫軸ローカルOMOマーケティング」以前と以後の効率格差も大きいと思われる。

地域展開を比較する

ここまで両者を比較してくると、ファーストリテイリングが成長力を取り戻したとは言えインディテックスのリードは量的にも質的にも戦略的にも圧倒的で、容易に縮まりそうもないように見えるが、グローバルマーケテイングの視点からはどうだろうか。

インディテックスは地政学的なリスクもある地域も含めて97の国と地域に5460店を展開しているが、マーケットの成長性と自社商品との親和性、カントリーリスクを天秤にかけてドラスティックに店舗布陣を移動している。

新疆綿問題や国潮(グォチャオ)の広がりで不買運動に直面した中国本土の店舗数はピークの4分の1に減って尚、26年1月期も23店減って111店とピークの2割を割り込み、香港もピークから半減して尚、3店減って11店とピークの3分の1強に減り、遠からずの撤退を予感させる。飽和状態になって久しいスペイン本国も62店減ったが、業態構成と店舗配置の最適化で売上構成比は上昇している。

次に減少が目立つのが日本で、18年1月期末の150店から68店と半分以下になって尚、今期も5店減って63店になった。ウクライナでもロシアによる侵攻直前22年1月期末の85店から前期末77店、今期末64店と4分の3に減少したに過ぎないから、それ以上のカントリーリスク(マーケットの縮小と採算性の悪化)があると評価されているのだろう。買い物客で賑わう「ザラ」の都心店を見ているとそこまでの状況とは思えないが、地方店や郊外店が苦しかったと推察される。代わって増えたのがイスラエル(10店増)やインドネシア(10店増)、UAE(7店増)やレバノン(7店増)などで、地政学的リスクよりマーケットの成長性を重視しているように見える。

ユニクロと比較すべく地域別の売上構成比を見ると、スペイン(0.8ポイント上昇の15.9%)も含めた欧州が67.2%と前期から1.5ポイント上昇した一方、南北米州は17.8%と同0.8ポイント、日本や中国を含むアジア太平洋地域は15.0%と同0.7ポイント低下している。日本の売上構成比は開示がないが、店舗数では1.15%と限られる。低価格業態の「レフティーズ」も含めてユーロモードのテイストが通底しており、ユニクロのように多少なりともローカル対応する意志もなく、好まれる地域で拡大すれば良いと考えているようだ。

生産圏も巨大集中TCが位置するスペイン(オランダにも一カ所ある)に接近させており、日本や中国を含むアジア太平洋地域は非中核市場と割り切られているように見える。とは言っても、26年1月期でもFCが店舗の21%、売上高の14%を占めるから、成長性や採算性が見込めない非中核市場ではFCに比重を移して維持していくと思われる。日本でも市場規模が限られて採算が苦しい地方店はFCや販売代行にシフトするブランドが多いから、合理的な選択と見るべきだろう。

ユニクロ事業の地域別売上構成比は日本を除くアジア太平洋地域が43.2%と前期から2.8ポイント、日本も34.9%と同0.3P低下した一方、欧州は12.6%と2.1ポイント、米州(米国だけだが)は9.2%と1.0ポイント上昇した。アジア太平洋地域のうちグレイターチャイナは22.1%と3.5ポイントも低下しており、経済と消費の低迷を反映しているが、インディテックスのように非中核市場と看做しているわけではなく再拡大が計画されている。

インディテックスがスペインを含む欧州に売上高の67.2%が集中して構成費も上昇しているのに対し、ファーストリテイリングは日本を含むアジア太平洋に78.1%が集中する一方で構成費は欧州、米州が上昇している。

インディテックスは生産も欧州近隣圏にシフトする一方でアジア生産は抑制しており、中国市場の拡大期にラ・コルーニア型のハブ・コンビナートを中国に移植しなかった以上、アジア市場は過渡期の非中核市場とならざるを得ない。ユニクロが未だ中国中心のアジア生産から抜け出せないまま欧州、米州を拡大するのは物流でもローカル対応生産でも適切とは言えず、いずれ欧州の近隣圏(北アフリカや東欧、西アジア)や米州の近隣圏(中米)に生産を分散せざるを得なくなるだろう。

成長余地はどちらが大きいか

インディテックスは「ザラ」をドレスシフトして高級化する一方、低価格志向の顧客は「レフティーズ」でカバーしようとしているが、テイストもアイテムも近過ぎてカニバリのリスクが指摘される。ファーストリティリングはコストインフレを吸収する程度の値上げはしても「ユニクロ」の「高級化」などは考えておらず、万人のための質実な「ライフウェア」を追求する一方、メジャートレンド志向の若年層(10代〜30代)は「ジーユー」で捉えようとしているが、「ユニクロ」と「ジーユー」はテイストも客層もウエアリングも異なるのでカニバリは考え難い。「ジーユー」は継続的に若年層を惹きつけて安定した売り上げを稼げる年間のMD展開を確立し、店舗売上規模を拡大して運営を効率化し収益構造を確立することが要であって、「ユニクロ」との棲み分けを過度に配慮する必要はないだろう。

「ザラ」は感度も品質も追求するモードの使徒であり、サイズ展開は幅広くても色展開はモードなベーシックカラー(1〜3色)に絞られてインクルーシブとは言えないし、それは「レフティーズ」も同様だ。ローカルフィットにも消極的だからウェーブ(脂肪質)なモンゴロイドにはフィットが合わず、顧客の間口も制約される。小ロット・ファスト生産・無補給売り切りだから欠品は常態で、インクルーシブにはほど遠い。

「ユニクロ」はメンズ企画のユニセックスアメカジからスタートし、フリースブーム後の売上急減を経てウィメンズ企画を独立させ、内外の多くのクリエイターとのコラボを重ねてスペックを磨き、アジアはもちろん欧州や米国でも万人の「ライフウェア」として受け入れられるよう改良を重ねてきた。多くの顧客をカバーするようサイズ展開が幅広く色展開も「ザラ」より格段に豊富で、何より「欠品は犯罪だ!」と言い切って売れ残りを恐れず多段階に在庫を積み上げ、インクルーシブに徹している。

万人向きのテイストやフィット、機能性や汎用性を備えた「ライフウェア」、顧客を限定しないインクルーシブな商品企画やサイズ/カラー展開、欠品させない補給体制などからグローバルな成長余地は「ユニクロ」の方が大きく、インディテックスは良くも悪くも顧客を選ぶ「ユーロモード」という枠を大きくは出られない。インディテックスは早くからDX装備したファストな商品開発体制や自社染色裁断素材・部材供給による欧州近隣圏生産、店舗網と在庫を適正に再配置するローカルOMOマーケティングなどシステムとマネジメントはもはや洗練の域にあるが、顧客を選ばぬ成長余地という点ではファーストリテイリングに及ばない。

両者の格差はまだ大きく、差が縮まるには時間を要するだろうが、ファーストリテイリングは着実に差を詰めていくと思われる。

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