ファッション
連載 齊藤孝浩の業界のミカタ 第73回

2024年度世界アパレル専門店売上高ランキング1〜5位を公開 グローバル企業の成否を分けたものとは

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企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」「図解アパレルゲームチェンジャー」の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回は、2024年度世界アパレル専門店売上高ランキングの上位企業の動向を解説する。(この記事は「WWDJAPAN」2025年5月12日号からの抜粋です)

前回に続き、2024年度の世界アパレル専門店売上高ランキングの1〜5位についてお話しします。トップ5の順位は前年度と変わらずですが、それぞれ動きがあります。

まず、1位は「ザラ(ZARA)」を擁するインディテックス(INDITEX)です。売上高は7.5%増、営業利益は10.9%増と安定した成長を見せています。不動のトップ、さすがですね。2位以下と倍近くの差をつけています。

特筆すべきは、店舗売り上げが5.9%増、EC売り上げが12%増と、両方がしっかりと伸びていることです。129店舗を減らしながらも、売り場面積は2%伸びていて、店舗の大型化を推進しているのが分かります。ECの伸びは、主にECで注文して店舗で受け取るサービス(クリック&コレクト)が活用されているのと、店舗のない国への越境ECが貢献しています。

いくつか変化があります。1つ目は、セキュリティータグをソフトタグにしました。以前は固くて重いタグを付けていて、レジで外してリサイクルしていましたが、試着などの顧客体験向上や店舗作業の軽減などから、世界的にソフトなタグに替えたようです。

2つ目は、全社で330万時間の社内教育をしたそうです。オスカー・ガルシア・マセイラスCEOは、21年の就任時に「チームビルディング」を掲げていましたが、この教育によって9300人の昇格を生み出したそうです。社内一人一人のスキルアップをバックアップして職能を高め、それが業績にも好影響をもたらしているのでしょう。

3つ目は、環境に優しい素材の使用率が73%まで上がっていることです。30年までに100%を目指すとしています。業界各社に先んじていますね。

インディテックスの強みは、巧みな価格戦略にもあります。店頭をウオッチしていて気付くことは、彼らは上手に値上げをしているということ。全体的には価格の高い商品の比率を増やしながらも、その近くには安価な商品を並べ、お客さまが「高くなった!」と感じないような工夫をしています。お客さまにあまり気付かれないように平均価格を上げているんです。

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