PROFILE: 山野嵩晃/レクルールオム店長

リヴォルーションと言えば、仙台はもちろん、東北、いや全国区で有名なセレクトショップを束ねる企業だ。中でも「レクルールオム」は、創業当初から用いていた屋号。一時期は使っていなかった伝統の屋号を冠したセレクトショップを復活させた3年前、トップに就いたのが山野嵩晃店長だ。大学時代のアルバイトを経て、入社して今年で10年。入社して数年の頃から、バイヤーとしても活躍している。「安藤(俊夫)社長は、“任せる”がスタンスの人。“任された”からにはちゃんとやりたいという感覚で新しいことにも挑戦し続けている」という。(この記事は「WWDJAPAN」2023年11月6日号から抜粋・加筆しています)
同店を「東京のショップとは違い、良くも悪くも“雑食”。『ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)』も『ダブレット(DOUBLET)』も扱う店は、そんなに多くないのでは?」と語る。「雑多な雰囲気は大事にしたい」からこそ、さまざまなブランドの魅力、洋服の楽しさを伝えるために「当たり障りのない万人向けの応対よりも、提案型の接客を心がけている」。
アウターを探しに来た買い物客にさえパンツを薦めることがあるし、お目当てよりもずっと似合っていると思えば別の商品を提案することも少なくない。「自社以外の他店からいらした方には、『このお店は、接客するんですね』と言われることもある。『なんか、良いのないですか?』という再来店が増えるとやり甲斐を感じる」と話す。「みんなSNSでいろいろ調べて来店するけれど、そのブランドしか見ていないのだとしたらもったいない。だから、こちらから提案するのは、店頭の役割だと思う」。「しっかりと提案する」接客は、首都圏から観光で仙台を訪れる来店客にも効果的。その後、定期的に来店するきっかけになる場合も多いようだ。
「ダブレット」の別注は雪の日だけ販売
「あり得ないことが起こった日常」を実現
バイヤーとしての買い付けや別注商品の企画でも、「店頭の役割」は意識しているようだ。「SNSのおかげで、都心と地方に情報格差はほとんどない。あるとしたら、体験格差。だから年に数回はデザイナーを仙台に呼んでイベントを開いている」という。真夏のパリに雪を降らせてあり得ないことが起こりうる日常の尊さを表現した23年春夏シーズンの「ダブレット」とは、雪が降った日だけに販売するTシャツを製作。店頭でもECでも雪が止んだ翌日は販売しない徹底ぶりだったが、4日で完売した。ちなみに太平洋側の仙台は、そんなに雪が多くない。「ECのおかげで、仙台のセレクトが企画した商品を熊本の人が買ってくれた。これもあり得ないことが起こった日常では?」と振り返る。
山野嵩晃さんの接客POINT
「お客さまのニーズに合わせたスタッフ対応が大事」。店頭は、個人が生きる場所だから。あまりに膨大になったのでメモを取ることはやめたが、常連のクローゼットは把握している。