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米「エル」「ハーパーズ バザー」「マリ・クレール」の3誌が公共広告を無料で掲載

 米ハースト マガジンズ(HEARST MAGAZINES)は「ファッショングループと共に(Together with the Fashion Group)」と題した取り組みを通じて、ファッションやビューティのブランドに社会啓発の理念を持つ公共広告の掲載を呼びかけた。広告集めに苦戦するメディア業界だが、この取り組みはブランドへの支援と同時に、雑誌の厚みを増やすことに貢献するのも狙いだ。今回寄せられた広告は、同社が有する「ハーパーズ バザー(Harper's BAZAAR)」「エル(ELLE)」「マリ・クレール(Marie Claire)」の2020年夏号に無料で掲載する。「アルマーニ(ARMANI)」「コーチ(COACH)」「グッチ(GUCCI)」「シャネル(CHANEL)」「カルティエ(CARTIER)」、ユニリーバ(UNILEVER)社を含む80以上の企業やブランドが取り組みに参加を表明した。

 3誌の発行に携わるキャロル・スミス(Carol Smith)=シニア・バイス・プレジデント兼パブリッシング・ディレクターは、今回の新型コロナウイルス感染拡大の初期段階から「私たちは共にある」を意味する「Estamos Contigo」を掲げて公共広告の掲載の場を設けていたスペイン版の「ハーパーズ バザー」からアイディアを得たという。これをブランドや企業にメッセージを送る機会だと捉え、どのようにブランドの手助けをできるか、またどうすれば読者層の女性たちに「共にある」というメッセージを送ることができるのかを一緒に考えることを呼びかけた。

 広告には多くのポジティブなメッセージが寄せられ、それぞれが違っていながらも希望や命に関連するものが多かったという。シャネル財団(Chanel Foundation)は世界を変える力を持つ女性の存在を強調し、トッズ(TOD'S SpA)社はもの作りに携わる職人に敬意を称した。またユニリーバ社は、「勇気は美しい」というメッセージとともに最前線で働く人を取り上げた広告の中で、パンデミックの間に2000万ドル(約21億円)以上の製品とサービスを無償提供したことを明かした。イエサイ・エグルストン・ブレイシー(Esi Eggleston Bracey)北米ユニリーバ副社長兼美容・パーソナル部門最高執行責任者は、「この危機から健やかに力強く抜け出すため、アメリカ全体が団結することはこれまでにないほど重要だ。このパートナーシップは希望と回復に向けての力を届ける素晴らしい機会になった」と語る。

 さらに2020年は、年間で最も重要とされる9月号(通称“セプテンバー・イシュー”)の発売日を遅らせる。これまでは8月中旬から下旬にかけて発売するものが“セプテンバー・イシュー”として店頭に並んでおり、号数と実際の発売日にズレが生じていた。「20年の9月号は9月に販売する。これは長年やりたかったことの一つ。私たちがイタリアにアプローチをした時、片手で数えるほどのブランドしか広告キャンペーンを撮影していなかった。そのため、ブランド側にも広告制作にかける時間の余裕をつくり、各誌のエディターにも20-21年秋冬のサンプルを集める十分な時間を与えることを考えた」とスミス=パブリッシング・ディレクターは語る。

 新型コロナウイルスの流行により世界中の工場や倉庫、オフィスなどがこの数カ月閉鎖されていたため新商品の生産も滞っており、撮影を伴う広告制作にも遅れが出ている。しかしイタリアでは段階的なロックダウンの解除に合わせて一部のブランドや企業が動き出した。「マックスマーラ(MAX MARA)」は新しいキャンペーンの撮影を行い、バーチャル撮影に切り替えたブランドもあった。スミス=パブリッシング・ディレクターは、「ファッションとラグジュアリーの分野は必ず回復すると信じているが、20年は過酷な年になる。多くのブランドは損失の埋め合わせをする必要がある」とみている。

 今回のように、“セプテンバー・イシュー”を9月に発売することが出版界の新しい常識になるかどうかは定かではないが、スミス=パブリッシング・ディレクターはそうなることを願っているという。「私はこれが新しいスケジュールになるといいと心から思っている。ようやくファッション業界がスケジュールを見直し、これまでのように10月にすでに秋のセールが始まるのではない、新しい販売計画が立てられる気がする」と語った。