広告代理店の覆面対談　メディアにおけるAI導入の現状と、AI時代のメディアに望むこと

AIがメディアを大きく変えるのだとしたら、ファッションやビューティブランドのメディアの選び方も変わるのだろうか？そんな未来に思いを馳せるため、広告代理店の2人の営業マンに覆面対談を依頼した。日々さまざまなメディアと仕事をする広告代理店は、AI時代のメディアをどう捉え、どんな未来を予想しているのだろうか？AとB、2人の本音をお届けする。広告代理店も、やはり最後は人間力と捉えており、表舞台に立つことが苦手な人も多い編集者というHI、ヒューマン・インテリジェンスにエールを贈っている。（この記事は「WWDJAPAN」2025年11月24日号からの抜粋で、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください）

WWD：多くのニュースサイトでは夏ごろから、ユーザーの検索ツールがAIに変わり始めたため、検索流入が前年を割っている。「半減」という影響を受けているメディアもあるようだ。

A：特定のブラウザで検索する人と、メジャーなAIツールを使って検索する人の割合は、あと1年半くらいで逆転するという予測がある。

B：私も今年、「何を使って検索しますか？」の問いに対して、2%が「AIツール」と答えていた調査を見た。それまでは「その他」の一つだった「AIツール」という独自項目が現れたのは、今年が初めてだったと思う。

WWD：広告代理店として日々さまざまなメディアとコミュニケーションをとる中で、生成AIがメディアに影響を与え始めていたり、メディアが生成AIについて向き合うようになっていたりを感じることは増えている？

A：メディアが制作するウェブコンテンツに対して、どうすればアクセスやユーザー数が増えるか？を考え、われわれがAIを使って協力するケースがある。例えば、SEO。SEOってすごく理系な感じで、すでに確立されている考え方や時代に応じた変化に対応するのは、すごく難しい。そこでわれわれがSEOに関するさまざまな知見を集めてAIで解析し、「タイトルはこうした方がいいのでは？」ではなく、「『こうすると、こうなった』という、こんな事例があるので、参考にしてみてはいかがですか？」とお伝えするケースがある。例えばこれから作るウェブコンテンツが「Y2K」に関するものだとしたら、「『Y2K』や近しい言葉をどうタイトルやコンテンツに組み込めばいいのか？」というリサーチだけで膨大な量になってしまう。でも情報は玉石混交で、全てを読み込んで実践するほどではない。そこでAIにいったん読み込んでもらって、忙しい編集者でも読んで活用できる程度のボリュームにまとめてもらう。

WWD：メディア側は、そのサマリーを参考に独自のベストアンサーを模索するということ？

A：その通り。直接コミュニケーションしている方々のリテラシーはだいぶ向上しており、AIがそれぞれの編集部にもっと浸透していけば、メディアが上手に活用できる時代になりそうな気がする。

「AIで作ったものなんて憚られる」
という考えが存在している

WWD：メディアや編集部へのAIの浸透においては、個々人のスタンスや心構えも大きなポイントになっている。例えば、いきなりAIに完璧を期してしまう編集者は、まだうまく活用できていない印象だ。

B：「AIが正解や100％を提供してくれる」というマインドセットの人は、メディアのみならず広告代理店側にも多い。ただ現段階では概念的にも、AIが100％の正解を持っていることはないのではないか？AIは「過去の処方箋」的な、これまでの情報を整理して伝えてくれる存在。ゆえに現在進行形のプロジェクトはもちろん、ましてメディアは未来のコンテンツを作るのだから、AIは正解にたどり着けないのではないか？