
ネット通販やライブコマース、スマホ決済、ゲームなど、次々と世界最先端のテクノロジーやサービスが生まれている中国。その最新コマース事情を、ファッション&ビューティと小売りの視点で中国専門ジャーナリストの高口康太さんが分かりやすくお届けします。今回のテーマは、「シーイン」。香港で上場した同社の資料から、今まで見えてこなかった実情を探ります。(この記事は「WWDJAPAN」2026年8月17日号の転載です)
25年の売上高は6.6兆円、世界第3位
中国の「シーイン」の香港でのIPO(新規株式公開)が決まった。現時点では正式日程は発表していないものの、ロイターなどは8月19日に上場すると報道している。中国のスタートアップ企業は秘密主義が強いが、特にシーインは徹底していた。上場目論見書によって多くの情報が公開され、不確定情報の答え合わせが可能となった。明らかになったシーインの正体を読み解いていきたい。
まず業績から見ていこう。2025年の売上高は418億ドル(約6兆6044億円)。上場目論見書にある中国調査会社・CICの推計では「世界のファッション業界主要プレイヤー」として、ナイキ、インディテックスと推測されるA社・B社の2社に続く第3位と位置づけている。営業利益は約17億ドル(約2686億円)で、「ユニクロ」のファーストリテイリングの売上収益3兆9000億円、営業利益7000億円(26年8月期予想)と比較すると、売上高は約2倍だが、営業利益は4割程度となる。薄利多売のビジネスなのだ。
成長は続いている。23年比で見ると、アクティブユーザーは8700万人増、注文件数は3億6300万件増とすさまじい伸びだ。すでに世界有数のプレイヤーでありながら、この数字だけ見ると、まるで伸び盛りのスタートアップのような成長だ。ただ、ネガティブな数字もある。マーケティング費用を大きく積み増しているにもかかわらず、売り上げの伸びは鈍化している。米国の売上構成比は下がり続けており、26年第1四半期には22.5%にまで低下した。25年5月に発効した米国の少額輸入免税(デミニミス)撤廃が効いているのだ。
シーインのビジネスモデルの特筆すべき点は、多品種少量のテスト販売と超高速の追加生産を組み合わせた点にある。新商品はまず約100〜200点の小ロットで試験販売し、顧客の反応をリアルタイムで評価。売れ筋と判明すれば追加生産を行う。最短5日で補充生産する。何が売れるかを考えるのではなく、実際に売れたものを量産するのだ。売れたものを作るので、アパレル業界にとって最大の課題である廃棄ロスを抑えられる。
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