松屋は5日、新館となる“松屋銀座 並木通り館”を開業した。2〜3階の小規模ミュージアム「ギンザミライミュージアム(以下、ギンミラ)」が同日オープンし、こけら落としとして、9月29日までアニプレックスと共同企画した中国アニメの「天官賜福」展を開催している。
コンテンツ事業をより強固に
「5年後には、銀座をジャパンカルチャーの聖地として定着させる」。報道関係者向けに開いた取材会で、松屋の服部延弘本店長と下山郁恵コンテンツ営業課長は口をそろえた。
松屋は従前からコンテンツ事業、特にアニメ展の企画・制作に力を入れている。銀座本店8階催事場で実施し館の集客装置とするのみならず、企画をパッケージ化して全国の百貨店や美術館を巡回。2025年度には年間80本の巡回展を開いており、「天官賜福」展も昨年は横浜赤レンガ倉庫で開催していた。コンテンツ事業は、24年2月期は50億円、25年2月期は56億円(前年同期比12%増)26年2月期は62億円(同10.7%増)と、ここ数年は2ケタ成長を続けており、30年2月期度の売り上げ目標には70億円を掲げている。
「ギンミラ」のオープンにより、これらコンテンツ事業の基盤をより強固なものにする。本店8階では、「君の名は。」(17年)「名探偵コナン」(22年)「鬼滅の刃」(24年)など、国民的アニメを取り上げることが多かったが、「ギンミラ」ではニッチなコンテンツを取り扱う。「天官賜福」展にはじまり、直近では10月2〜26日の「NO.6の世界」展、10月30日〜11月23日の「ギルティクラウン」×「甲鉄城のカバネリ」展を予定している。
中国発のアニメ「天官賜福」を通して、中国や台湾、香港からの客との新たな接点を作る。さらに富裕層の高額消費が売り上げの下支えとなる中、若年層との接点としても期待する。こうした新規顧客を取り込み、2050年に向けて掲げる「グローバルデスティネーション」という目標をさらに確かなものにする。本館との相互送客にも意欲を見せる。
銀座をジャパンカルチャーの聖地へ
とはいえ、日本にはすでにアニメ・漫画の街とされている街がある。
アニメからアイドル、メイドまであらゆるジャンルが集まる「秋葉原」。男オタクの街である秋葉原に対し、女オタクの街と呼ばれる「池袋」。マニアックなショップが立ち並ぶ中野ブロードウェイがある「中野」。銀座はこれらに並ぶカルチャーの街になれるだろうか。
服部本店長は、「銀座に行くと“ホンモノ”があるような感覚がある。手前味噌だが、私たちが企画した“ホンモノ”を、そんな銀座という街で提供していく」と述べる。
「アニメ・漫画」と「銀座」。遠い存在のように思えるが、“ホンモノ”へのこだわりは共通している。その熱量ゆえにファンの目が厳しいアニメ・漫画との相性も、決して悪くないように思える。
「天官賜福」展に見た“ホンモノ”
「ギンミラ」の展示会場は約320平方メートルと、ややコンパクトな印象だ。だがその分、フォトスポットや原画などの展示が間延びせず、来場者を飽きさせない。見どころの1つである3枚のイラストアートを照らす提灯は、中国からわざわざ取り寄せたという。オレンジ色の温かい灯火が、現地の雰囲気を醸し出している。
作品へのこだわりは、併設するカフェにも表れている。「ギンミラ」のフードメニューは作中のシーンを再現している。キャラクターデザインを取り入れたシンプルなメニューのコラボカフェが多い中、かなり凝ったメニューだと言える。
例えば、“花の導き冷製塩麺”(1690円)は、主人公とヒロインが雨の森で引かれ合うシーンをイメージした。冷たいラーメンで雨を、金木犀のオイルで森の香りを表現するなど、味だけでなく香りや温度にこだわった。さらに、黒胡麻入りのひき肉を加えたことで、塩ラーメンから担々麺になる味わいの変化も楽しめる。巷のコラボカフェのメニューはキャラクターのピックを刺したり、プレートにイラストを描いたりと見た目に頼りがちなものも多いが、ギンミラのカフェは味覚もしっかり楽しませてくれる。