
中川政七商店は9月16日、漫画家・小山宙哉による「宇宙兄弟」とのコラボレーション商品8種を直営店で発売する。同日10時から、中川政七商店と「宇宙兄弟」公式のオンラインストアでも販売する。吹きガラスや越前漆器、瀬戸焼など、日本各地の工芸の技を生かし、“小さな宇宙”を表現した。
「月と地球を映す吹きガラスの盃」(2万9700円)は、1932年創業で千葉県九十九里に工房を構える菅原工芸硝子が製作。月のクレーターを思わせる凹凸には、ごく少量の重曹を反応させることで生まれる、同社のガラス職人が約10年かけて開発した表現技法「void(ボイド)」を用いた。
「越前漆器の兄弟盃」(2万5300円)は、福井県を拠点に高級漆器や茶道具を手掛ける荒井正直堂が製作した。漆塗りの盃に、宇宙に浮かぶ星々に見立てた螺鈿(らでん)と蒔絵を施し、原作の一場面を表現。螺鈿は、職人が貝殻を一つひとつ手作業で施し、見る角度によって異なる表情を生み出す。
「ムッタとヒビトの瀬戸焼の兄弟土人形」(2万4200円)は、瀬戸陶芸社が製作。精巧なフィギュアとして再現するのではなく、焼き物ならではのあたたかな風合いを生かして、兄弟の姿を表現した。
このほか、コミックポーチ(4400円)、カードポーチ(2970円)、めがねケース(5940円)、綿のかや織を2枚重ねた薄手で大判の花ふきん(1980円)、5枚重ねで丈夫に仕立てたかや織ふきん(770円)をラインアップする。
「工芸×IP」に新たな可能性
今回のコラボレーションの目的は、中川政七商店がコンテンツ産業で創出されたIPの活用に可能性を見いだすことにある。アニメやキャラクターは、日本が世界に誇る文化の一つ。一方で、これまでもキャラクターをモチーフにした工芸品は存在したものの、本格的な工芸技術を生かし、ものづくりそのものに踏み込んだ取り組みはまだ多くない。佐藤菜摘コミュニケーションデザイン室室長は、「いわゆるキャラクターグッズではなく、“ガチの工芸”でやる。そこには可能性がある」と語る。
その可能性への手応えを得たのが、2025年に手掛けた大阪・関西万博公式キャラクター「ミャクミャク」とのコラボレーションだった。「IPをオブジェや美術工芸として昇華させることで、工芸の新しい糸口が見えると実感した。制作を通じて、職人さんがそれまで手掛けたことのない技法に挑戦したり、しばらく使われていなかった技術を復活させたりする動きも生まれた。技術の幅が広がっただけでなく、職人さん自身の誇りにもつながったことが大きな収穫だった」。
こうした経験を踏まえ、次なるコラボレーションの相手として選んだのが「宇宙兄弟」だ。佐藤室長は、「『宇宙兄弟』は、ある意味“お仕事漫画”。作品の世界観や読者と工芸との親和性にも可能性を感じた」と話す。企画が動き出すきっかけの一つとなったのが、2025年10月に中川政七商店の社外取締役に就任した、コルク代表取締役社長で編集者の佐渡島庸平氏の存在だ。佐渡島氏は講談社モーニング編集部で「ドラゴン桜」「宇宙兄弟」などの編集を手掛け、12年にコルクを創業。著名作家とエージェント契約を結び、著作権管理、作品編集、新人作家の発掘、グッズ展開などを行う。
「最初に商品企画部からコルクさんに、『宇宙と工芸を掛け合わせたものづくりをしたい』と提案した」。そこから、作品のキャラクターやモチーフを単に工芸品に落とし込むのではなく、吹きガラスや漆器、焼き物など、それぞれの素材と職人技を通して宇宙そのものを表現する企画へと発展した。
中川政七商店は今後も、コンテンツ産業で創出されたIPの活用を通じて工芸の新たな可能性を探っていく考えだ。