(右)林芳樹/副編集長:6月発行の「ベインキャピタル 企業価値向上力の秘密」(日経BP刊)を読んだ。さまざまな企業のPE事例が紹介されているが、雪国まいたけの章が「プロジェクトX」のように面白かった。 ILLUSTRATION : UCA
毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2026年8月31日号からの抜粋です)
ファンド傘下入りは「成長の選択肢」
村上:この数年で「WWDJAPAN」の記事にPEファンドが登場する機会が増えました。最近は国内外でPEファンドが絡んだ資本参画やM&Aが相次いでいます。自分自身、「投資会社に買われる=経営が危ない」「誰かに乗っ取られる」みたいな“ハゲタカ”のイメージも少なからずあったけれど、実際は海外進出や事業承継などビジネスの重要局面においてPEファンドの力を借りてビジネスを成長させるという「選択肢」が広がっているわけです。
林:今回取材したPEファンドは、未上場の企業に投資し、企業価値を高めて売却益を得るファンドです。経営が悪化した企業を立て直す再生ファンドとは違う。一口にファンドといっても、その性質はいろいろです。
村上:林さんは、マッシュホールディングスが2022年に株式を売却したベインキャピタルを取材しましたが、印象に残ったことは?
想像以上に
泥くさい
林:オフィスが立派(笑)。というのは冗談ですが、私も最初は「もうけが第一」的な、ざっくりしたイメージしか持っていませんでした。でも株を高く売却するためには、企業価値を伸ばさないといけないわけで、新たなステージに飛躍するために、取締役会だけではなく現場にも入り込み、既存の社員とも細かくコミュニケーションを取っていました。想像以上に泥くさい努力をしていました。
村上:PEファンドから見るとファッションやビューティは、規制が強かったり、国の政治に大きく左右されたりする他の業種に比べて、「消費者に支持されるモノを作って、売る」という比較的シンプルなビジネス。加えて創業者やデザイナーらの思いが強く、それ自体が明確な差別化要因になり得る。そこに成長の可能性を見いだしているファンドも多いと感じました。
林:ファッションは感性で動いている部分が大きいから、改善できる余地も見えやすいのでしょう。数字や経営管理を整えれば、まだ伸びる会社は多い。
村上:一般的なM&Aでは、最初の100日ほどでプランを固め、その後1年ほどで足場をつくり、3年目あたりから具体的な施策が見えてくるケースが多いようです。買収直後だけでなく、その後の変化まで追うと、PEファンドと出資先企業のマッチングが本当に機能したのかが見えてくる。この特集を通じて、「ファンド傘下入り」のニュースを見る新たな視点が得られました。