
大丸芦屋店は27日、昨年から進めてきた全館リニューアルの最終区画を、28日のグランドオープンに先立ち関係者に公開した。目玉は、化粧品メディアコマース「デパコ(DEPACO)」初の実店舗だ。認知拡大を目指す「デパコ」と、品ぞろえの刷新や顧客層の開拓を図る芦屋店が組み、オンラインと店頭をつなぐ新たな売り場モデルを試す。
リニューアルは2025年12月から段階的に実施。地下1階から地上2階の売り場の約4割を改装した。関西初・全国初出店を含む計11店を導入し、最終段階では「デパコ」を含む5店がオープンする。
5年ぶりとなる全館刷新では、「あしやと、あなたと、あしたへ。」を掲げ、「出会い」「暮らし」「サービス」の3点を強化した。化粧品に加えて食、雑貨などの売り場を見直し、芦屋に根付く手土産需要や、自宅で過ごす時間を充実させたいというニーズを取り込む。
百貨店では珍しい自然光の化粧品売り場

「デパコ」は、従来の化粧品売り場があった1階に出店した。売り場面積は約155㎡。外通路側に設けられていた壁を取り払い、開放的な設計に改めた。自然光が差し込む化粧品売り場は、百貨店では珍しいという。
大丸芦屋店の小鷹紗綾香店長は、改装の完成度を「100点満点」と評価。試行錯誤を重ねた末の完成に「感無量」と語る。建物のレトロな趣を残しながら、外の景色や自然光を取り込んだ空間について、「ほかでは得られない良さを芦屋らしく表現できた」と胸を張る。
売り場では、セミセルフ型への導入が初となる「ラ・プレリー(LA PRAIRIE)」や、神戸地区初出店の「ドクター365(DR365)」「ロア(LOA)」のほか、「シャネル(CHANEL)」「シセイドウ(SHISEIDO)」など29ブランドを取り扱う。改装前の化粧品売り場は常設約7ブランドにとどまっており、品ぞろえを大幅に拡充した。販売員は、改装前から同店の化粧品売り場に勤務していた社員を中心に6人を配置し、ブランドを横断して商品選びをサポートする。
デジタルと既存売り場、双方の課題を補う
実店舗の開設には、「デパコ」が抱えていた認知の課題に加え、顧客の高齢化や固定化、売り場の鮮度維持という芦屋店側の課題もあった。認知を広げたい「デパコ」と、売り場に変化をつけたい芦屋店。双方の課題を補う形で実店舗が実現した。
「デパコ」の望月美穂編集長は「デジタルという大海の中で、『デパコ』の存在を知ってもらうこと自体、ハードルが高い課題だった」と振り返る。EC上には美容情報や販売サイトが数多く存在し、サービスを見つけてもらい、継続利用につなげることは容易ではない。
「今後デパコのさらなる成長を果たすためにも、今こそリアル店舗という新たな接点が必要だった」と説明する。「ここからが出発点。実証実験をしながらブラッシュアップして進化していく」と話し、顧客の反応を見ながら売り場を磨く。
「芦屋はブランド」
初の実店舗に芦屋店を選んだ背景には、地域の高い購買力もある。黒川延重 大丸松坂屋百貨店 本社 営業本部 MDコンテンツ開発第2部 商品部長 ビューティ&ウェルネス担当は、「芦屋はポテンシャルがある。東京から見ると芦屋店は地方店舗であるが、芦屋は“ブランド”だ」と語る。
芦屋には富裕層に加え、外国人客やファミリー層もいる。既存顧客の世代交代に伴い、その子ども世代にも顧客層が広がりつつあるという。黒川商品部長によれば、芦屋店の客単価は同社の他店舗と比べて2〜3倍。販売員の接客力にも自信を見せる。
今回の店舗で得た知見は、ほかの店舗にも生かす方針だ。「デパコ」の実店舗が芦屋で支持を得られれば、地域特性に応じた別の展開も視野に入る。
小鷹店長は「芦屋は一人一人がこだわりをもっている」と話す。特別な日の買い物先にとどまらず、それぞれの生活に合わせた商品を用意し、普段使いされる店を目指す。「今日も明日も、毎日来てもらいたい」と締めくくった。
街に広がる文化や暮らしの豊かさ
芦屋市の高島崚輔市長も視察に訪れ、「我々が考えるのは豊かな暮らし」と述べた。日々の中で気分が少し高揚する「日常なんだけど、ちょっと非日常」という暮らしのバランスを重視。日本で唯一の国際文化住宅都市を掲げる市として、土地らしさや文化を生かした店づくりを評価した。
さらに、「我々も南側の再開発を進めており、(大丸芦屋店には)施設の在り方を考えるうえでも関わっていただいている。今回のリニューアルを通じ、芦屋の街に良い文化や暮らしの豊かさが広がっていくことを期待している」と語った。