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「アークテリクス」が代官山の開発拠点を公開 高級住宅街に突如現れたミニ縫製工場

カナダ・バンクーバー発の「アークテリクス(ARC'TERYX)」といえば、アウトドアブランドとしてのパフォーマンス性とスタイリッシュさを両立したブランドとして、山でも街でもファンが多いブランドです。私も夏山用のシェルなどを愛用していますが、落ち着いたトーンの色出しや、もったりとしないシルエットがステキなんですよね。同ブランドを擁するアメアスポーツは、2018年に中国のスポーツメーカー大手のアンタなどで構成するファンドの傘下となっており、それもあって中国でも爆発的な人気。ギンザシックスの直営店は昨秋のオープン以来、中国からのお客さまが連日行列を作っていると聞きます。

そんな「アークテリクス」が、北米以外で初となる開発拠点トーキョークリエイションセンター(以下、TCC)を、このたび東京・代官山にオープンしました。アメアスポーツにはジャパン社もありますが、TCC開設はジャパン社ではなく本国が主導したもの。オープンレセプションには、ケイティ・ベッカー「アークテリクス」チーフクリエイティブオフィサーやハワード・リヒター バイスプレジデントなど、本国クリエイティブチームの主要メンバーも多数駆けつけていました。ケイティやハワードに、モノ作りについての信条やTCC開設意図を聞いたインタビュー記事も掲載していますので、以下から是非お読みください。

というわけで、今回の記事ではTCCがどんな空間になっているかを写真豊富にご紹介します。立地は蔦屋書店がある代官山T-SITEからすぐで、地下1階からルーフトップまでの4層の作り(総面積はルーフトップを含まず765平方メートル)。この好立地でこの広さとなると、家賃はかなりのものと推測します。トラフ建築設計事務所が担当したというモダンな内装も含め、率直に言ってかなりの投資をしているなと感じました。ブランドとしてそれだけTCCに期待しているということであり、TCCを拠点に、日本の山岳アスリートやガイド、素材メーカーの技術者、デザイナーらとコミュニケーションを深め、ブランドとしてステップアップしていくんだという気概が詰まった施設と言えます。

バンクーバーから熟練の縫製士も来日

ガラスの大きな扉から1階に入ると、まず目に飛び込んでくるのはアーカイブの“アルファSVジャケット”や、日本の工芸品、トイなどを飾ったウォールです。“アルファSVジャケット”は1998年に発売された「アークテリクス」の看板アイテムですが、オープン時に飾っていたこれらのアーカイブは、全て元ビームスのアウトドアバイヤーである廣沢慶さんの私物だそう。廣沢さんももちろんオープニングイベントに来場していました。

廣沢さんは「アークテリクス」を25年にわたって買い集め続け(家に服だけでも200着はあるそうです)、ブランドをDIGり続けてきた経歴から、現在は「アークテリクス」本国のクリエイティブチームと契約し、製品開発のコンサルタントをしています。廣沢さんの私物のみで構成する「アークテリクス」アーカイブ展も、昨年11月に渋谷で開催されておりました。

本国クリエイティブチームとツーカーの仲の廣沢さんに、TCCオープンに合わせて来日していたクリエイティブの主要メンバーを何人か紹介してもらいましたが、その中に群を抜いてオーラのあるご夫婦の姿が。聞けば、ダン・ジャクソンさんと奥さまとのこと。ダンさんは、「アークテリクス」を象徴するアイテムの1つであるデイパックの“アロー”(街でよく見かける、センターにファスナーを配した立体的なデイパック)の生みの親として、ブランドファンの間ではよく知られています。廣沢さんは「巨匠」と呼んでいました。

さて、1階の大部分にはミシンや圧着機などが置かれ、ちょっとした縫製工場のよう。東京を代表する高級住宅地にこんな施設があるなんて、とかなりギャップを感じます。ミシンの前には、真剣な面持ちでやり取りをする男性と女性。彼らはバンクーバーの“アークワン”と呼ばれるマザー工場に勤める熟練の縫製士で、TCC開設に合わせて、ミシンのセットアップやTCCスタッフへの縫製トレーニングを行うために来日しているとのことでした。それにより、ウエアやバックパックに関してはTCCでもバンクーバーと同様にサンプル生産が可能。TCCで縫ったサンプルを日本の山に持って行って検証し、持ち帰って改善するということを繰り返し、製品の精度を高めていくそうです。

コミュニティーから吸収した
声をもとにサンプル作成

2階は中央に大きな作業台が置かれ、部屋の両脇のカウンターテーブルにはパソコンが並びます。主にデザイナーが作業するためのフロアということでした。ガラス張りのミーティングルームにはマンガをデフォルメしたアートが飾られ、大変おしゃれな空間です。ちなみにトイレもチェックしておきましたが、アメニティーは「イソップ(AESOP)」でした。

ルーフトップにはグリーンが植えられた屋外から階段でアプローチします。カリモクにオーダーしたという、倉庫に眠っていた古い日本のスギ材を生かした丸いベンチがここの主役。アスリートやガイド、素材メーカー担当者、デザイナーなどが集まって車座になって意見を出し合い、それを2階でデザインに落とし込み、1階でサンプルとして縫製する、というイメージとのこと。

最後に地下1階。こちらは各種イベントに大活躍しそうな広いフリースペースと、素材在庫などを置くストックルームなどで構成していました。ストックルームは日光下での生地の色がしっかり確かめられるよう、調光機能も備えられていました。

以上がTCCのフロア別紹介になりますが、TCCには「アスリート、ガイド、モノ作りの技術者、消費者など、ブランドを取り巻くコミュニティーが集う場所としての機能も強く期待している」と、チーフクリエイティブオフィサーのケイティが強調していたのが印象的です。バンクーバーとは全く異なる日本の高温多湿の気候の中で求められる製品がどんなものなのかをコミュニティーから吸い上げ、ブランド全体のモノ作りの精度を上げていくのがTCCのミッション。オープニングレセプションには280人近くの関係者が駆けつけており、注目度の高さをビシバシに感じました。

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