ファッション
連載 小島健輔リポート

四重インフレ不可避の2024年を乗り切る技と仕掛け【小島健輔リポート】

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ファッション業界のご意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。バブル崩壊後、日本経済を長く支配していたデフレが終焉し、消費市場の潮目が変わってきた。2024年、アパレル業界も新しいステージに入る。新年のはじめに詳しく分析してみよう。

円安による輸入インフレはようやく峠を越したが、2024年は人件費と物流費のインフレが加速し、異次元緩和以来10年続いた「金利のない世界」も終わろうとしている。そんな四重インフレがのしかかる24年はインフレ政策の一択とならざるを得ないのだろうか。

転嫁不可避な四重インフレ

円安はようやくピークを打ったとはいえ、失われた30年の果てに生産性が停滞して1人当たりDGPが先進国最下位に転落し、貿易赤字が定着して資本収支で補っても経常収支の押し上げは限られ、縮小が止まらない国内市場に見切りをつけて海外市場への投資が加速する中では円安基調は変わらないから、かつてのような円高にはもう戻らない。長期的には1970年代のような1ドル200円超へ転落していくという見方さえあるから、低コストな南アジアやアフリカに生産地を移転していくとしても、いずれ開発輸入に依存する調達体制は見直しを迫られる。ニトリやユニクロのお買い得感が薄れていく実感は否めないのが現実ではないか。

関税も消費税も回避して品質もサステナビリティもコンプライアンスも怪しい安売りを続けるシーイン(SHEIN)、親会社(中国のEC大手Pinduoduo Holdings)の豊富な資金力を背景に毎日1000万ドルという膨大な広告費を投入して赤字覚悟の安売りで短期の市場制覇によるIPOを目論むティームー(TEMU、23年の売上高は150億ドルを超えるが営業損失も36億5000万ドルに達すると見られている)はともかく、真っ当に関税も消費税も負担し品質もサステナビリティもコンプライアンスも担保して日本に開発輸入される衣料品は相応のコストがかかり為替にも左右される。

円安がピークを打ったとはいえ、調達コストが下がるとまでは期待できそうもなく、コスト転嫁が途上の小売価格はまだ上がると見るべきだ。急激な円安で22年の衣料品の輸入単価は22.6%も高騰し、23年も1〜10月で6.6%上昇しているが、衣料品の消費者物価は22年で1.9%、23年も1〜11月で1.9%しか上昇していないからだ。

公正取引委員会が11月に公表した「企業間取引に関する指針」では発注者と受注者の定期的な価格協議を求め、協議なく支払い価格を長期に低く据え置くと独占禁止法や下請法に触れる恐れがあると警告しているから、仕入れ価格のコスト転嫁を拒むのは難しくなっている。それは24年問題(トラック運転労働者の残業時間が年間960時間に制限される)が現実化する物流費も同様で、コスト転嫁を拒めば告発されたり、運べない荷物が生じたり後回しになったりしかねない。

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