ビューティ

インドのビューティ市場が急成長 小売業の出店や高級ブランドの市場参入活発に

プレステージブランドの参入が続くインドのビューティ市場が活況を呈している。調査会社のユーロモニター・インターナショナル(EUROMONITOR INTERNATIONAL)は、インドのビューティおよびパーソナルケア市場の2022年の売上高を171億6000万ドル(約2兆4367億円)と推定。24年は186億5000万ドル(約2兆6483億円)に達すると予想しており、年平均成長率は8.8%を見込む。

資生堂「ナーズ」が新規参入

 
インドのビューティ市場への新規参入が加速しており、昨年は資生堂が展開する「ナーズ(NARS)」が初上陸した。ニューデリーとムンバイの2都市で、百貨店のショッパーズ・ストップ(SHOPPERS STOP)と化粧品小売のセフォラ(SEPHORA)に計10店舗を出店し、両百貨店のオンラインストアでも販売をスタートした。昨年12月にブランド初の単独ブティックをニューデリーにある大型ショッピングモールのセレクト・シティウォーク(SELECT CTYWALK)にオープンした。資生堂のニコール・タン(Nicole Tan)=アジア太平洋地域CEOは、「インドの小売り構造が戦略の変更を後押しした」と述べ、このようなオムニチャネル戦略を採用したローンチはブランドの歴史で初だという。「定性的な方法を取ることによって、多くの消費者とのタッチポイントを多角的に持つことが狙いだ」と説明した。
 
資生堂は14年にインドで中低価格帯のスキンケア・メイクアップブランド「ジーエー(ZA)」の販売を開始したが、約1年半で販売を終了している。「当時の手法だったマスマーケティング(不特定多数をターゲットとしたマーケティング手法)ではインドの消費者との接点が持てなかった。しかしこの10年で状況は大きく変化した。デジタル革命と旅行需要の増加、女性の社会進出の影響がインドの消費者にグローバルな美容意識をもたらした」とタンCEOは指摘する。また、40色以上をそろえる「ナーズ」のファンデーションのカラーバリエーションは「インドの消費者の共感を得るだろう」と期待感を示した。

インド小売り大手はビューティ領域を強化

 
今回「ナーズ」はショッパーズ・ストップの子会社であるグローバルエスエスビューティーブランズ(GLOBAL SS BEAUTY BRANDS)と戦略的パートナーシップを締結。同社は昨年、ロレアル(L'OREAL)が展開する「プラダ ビューティ(PRADA BEAUTY)」「ヴァレンティノ ビューティ(VALENTINO BEAUTY)」「ミュグレー(MUGLER)」「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」「アザロ(AZZARO)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「アトリエ・コロン(ATELIER COLOGNE)」「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)」のフレグランスを含むプレステージブランドを手掛けるなど、近年ビューティカテゴリーに注力している。昨年初めには「キリアン(KILIAN)」4店舗を出店し、昨年1月から同社と提携する「クラランス(CLARINS)」は今後数カ月以内に10店舗の出店を予定。今年前半には「グッチ ビューティ(GUCCI EBAUTY)」「プラダ ビューティ」「アルマーニ ビューティ(ARMANI BEAUTY)」「ヴァレンティノ ビューティ」のカラーコスメの発売も控えるなど、小売業者側も自社でブランドを所有する動きが増えており、これは時代の変化を示している。
 
「ビューティは次なる革命を起こすだろう」と話すのは、ショッパーズ・ストップのビジュ・カシム(Biju Kassim)=ビューティ部門CEOだ。同社のグループ売上高の16.5%はビューティ事業が占めており、今後さらに大きく伸長すると期待を寄せている。

ビューティECの実店舗出店も加速

 
プレステージブランド参入の勢いが加速する一方で、ビューティ小売りも存在感を増している。インド国内最大の小売りチェーンであるリライアンス・リテール(RELIANCE RETAIL)が運営するオンラインビューティサイトのティラ(TIRA)と、タタ・グループ(TATA GROUP)によるオンラインストア、タタ・クリック・パレット(TATA CLIQ PALETTE)はそれぞれ初の実店舗を昨年オープンし、オフラインビジネスを強化している。
 
また、「ブルガリ(BVLGARI)」「ゲラン(GUERLAIN)」「エルメス(HERMES)」などのブランドを展開する老舗美容品販売会社ビューティ・コンセプト・プライベート(BEAUTY CONCEPTS PRIVATE)は、ニッチなフレグランスを集積する「メゾン・デ・パルファム(MAISON DES PARFUMS)」の5店舗目を出店し、美容ECサイトのビューティ・センチメンツ(BEAUTY SCENTIMENTS)の小型実店舗をビューティ商品が手に入りづらい第2、第3都市10カ所にオープンした。
 
EC大手もこの勢いに続き、アマゾン・インディア(AMAZON INDIA)は「グローバル・ビューティ・ストア」を立ち上げ、ビューティカテゴリーを拡大。米国の小売最大手ウォルマート(WALMART)傘下のファッションECミントラ(MYNTRA)もビューティカテゴリーを強化し、現在「M・A・C」「クリニーク(CLINIQUE)」「ベネフィット・コスメティクス(BENEFIT COSMETICS)」「ニックス プロフェッショナル メイクアップ(NYX PROFESSIONAL MAKEUP)」など1500の国内外ブランド、約9万SKUを取り扱うなど急成長中だ。

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