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新型コロナ禍の危機管理 リーダーに求められることとは?

 新型コロナウイルス感染拡大で都市の封鎖が相次いでいる。米国では経済活動再開に向けた動きが出ているものの一進一退の状態が続いており、こうした中で企業のリーダーは、事業計画や経営管理のあり方だけでなく、従業員の士気を保つにはどうすればよいのかといったことに頭を悩ませている。さまざまな業界のリーダーや専門家らにヒントやアドバイスを聞いた。

 企業などを対象に顧客や従業員満足に関するコンサルティングを行っているザ・リッツ・カールトン・リーダーシップ・センター(THE RITZ-CARLTON LEADERSHIP CENTER)のアントニア・ホック(Antonia Hock)=グローバル部門ヘッドは、「困難に直面している今、管理職やリーダーは日々、本音のコミュニケーションを図る必要がある」と言う。

 同氏は、「今、リーダーに求められる大切なことは、日々の業務の状況や事業がどの様に変化しているのかといった情報を共有し、今何ができるのか、どのように貢献すべきかを従業員に伝えること」と述べ、「方向性を示し、本心で伝えることが重要だ」と語った。また、「優秀なリーダーはチーム内のつながりや、オンラインでの新たなコミュニケーションのあり方を構築している。仕事に人間味を持たせること、チームの全員がつながりを感じられるようになることで、この困難な状況の中でも最良のパフォーマンスを引き出すことができる」と語った。

 小売業者にとっては顧客とのつながりを強めることも重要だという。ロサンゼルスのセレクトショップ、フレッドシーガル(FRED SEGAL)のジェフ・ロットマン(Jeff Lotman)=オーナー兼会長は、「これまで以上にコミュニティーが重要だ」と語り、「コミュニティーを非常に大切なものと考えており、ソーシャルメディアなどを通じて、ショッピングを超えた幅広い内容のコンテンツを提供している」と述べた。

 ビンテージファッションのECサイトを展開するスリリング(THRILLING)のシーラ・キム・パーカー(Shilla Kim-Parker)共同創業者兼最高経営責任者(CEO)も、「今、リーダーにとって最も重要なのは『どのように人の役に立てるか。事業にどう取り組むべきか、コミュニティーに何を返せるか』と問いかけること」と語る。

 同氏は、「弊社のミッションは、中小のビンテージストアの経営者に奉仕すること。休業が続き、事業の再開や損失からの回復が危ぶまれるなど、彼らは深刻な状況にある」と述べた。こうした状況に対応するため、スリリングでは5月31日までの期間、同社ECサイトでの販売委託料を免除することを決めた。またストア経営者の直近の現金収入の一助とするため、セーブ・ビンテージ(Save Vintage)コレクションを展開しTシャツなどを販売している。利益のすべては同社ECサイトで販売を行う100店以上のビンテージストアに渡されるという。

 キム・パーカーCEOは、「今は企業ブランドのEQ(心の知能指数)を高める必要がある。世界中の人々が危機に直面している今、コミュニケーションのあり方やメッセージの出し方を見直さなければならない。空気を読めない企業からは顧客が離れていくだろう」とも述べている。

 一方、リーダーは弱さを受け入れることも大切だという。ファッションスタイリストでTVパーソナリティーも務めるシンディ・コンロイ(Cindy Conroy)は、「会社やリーダーは強くあるべきだと思っているかもしれないが、このような困難な時期にはそうある必要はない」と言い、「弱さを認めることは、部下や従業員に対して正直であるということ。そうすると彼らも心を開き、リーダーがチーム運営のあり方や問題解決策について語ることにしっかりと耳を傾けてくれるだろう」と語った。

 同氏はまた、「管理職は失敗も歓迎するべきだ」と述べ、「私たちが今、未曾有の事態に直面していることにふれた上で、批判を含めてどのような意見でも歓迎する姿勢を部下に見せるべきだ。そうすることで困難に打ち勝てる真のチームとなるだろう」と語った。

 メンタルヘルスや依存症に関連した活動を広く行うジェイ・シフマン(Jay Shifman)も、「共感と弱さを受け入れることが重要だ」と言う。同氏は、「優秀なリーダーとは、従業員それぞれが最善を尽くすことを促せる人。上からものを言うようではだめ」と言い、「リーダーは弱さを認め、従業員に共感し、また彼らに投資すること。それを感じた従業員との関係は大きく動くだろう」と述べた。

 また、積極的に従業員の話を聞くことは意味のある強固な関係性の構築につながるという。SAPノースアメリカ(SAP NORTH AMERICA)のマット・ローカイティス(Matt Laukaitis)シニア・バイス・プレジデント兼消費産業担当ジェネラルマネジャーは、「聞く力が最も重要」と言い、「経験したことのない状況の中、従業員は不安を抱えながら新しいワーキングスタイルに取り組んでいる。今までのように職場でのコミュニケーションを図れず、自宅に一人で勤務している者も多い。従業員のメンタル面や健康面の状態を見守る必要があるだろう」と述べた。

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