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お手本は「ルルレモン」 新型コロナ後に生き残れるブランドの特徴をアナリストが解説

 世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るい、小売店の多くが休業を余儀なくされている。経済環境の悪化が懸念されるが、この危機的な状況をうまく切り抜けられる企業にはいくつかの特徴があるという。

 米証券ウェルズ ファーゴ(WELLS FARGO)のアイク・ボルーチョウ(Ike Boruchow)=マネジング・ディレクター兼シニア・リテール・アナリストは、「今回の危機を乗り越えられるのは手元資金が潤沢にあり、利益率が高く、返品率は低く、ECに強く、熱心な固定客がいる企業だ。これらの特徴を兼ね備えている一社として、ルルレモン・アスレティカ(LULULEMON ATHLETICA以下、ルルレモン)が挙げられる」と語った。

 小売業界では売上高に占めるECの割合が20%程度であることが多いが、ルルレモンは30%強とそれをかなり上回っている。同社が以前からD2Cに投資しており、洗練されたウェブサイトやアプリを提供していることがその要因だ。新型コロナウイルスの影響で店舗を休業していることを踏まえると、現在はそれが40%近くにまで達している可能性もある。

 またデジタル化を推進したことで、フルフィルメント業務(ECでの受注から配送までの一連の業務)が効率化されただけではなく、個別にカスタマイズされたサービスを提供して熱心なファンを育てることができたと同氏は分析する。「ルルレモンには忠実で熱心な固定客が多い。競合他社では返品率が40~50%にも上るのに、ルルレモンでは10%程度と非常に低いのはそのおかげだ。リピーターが多いので、フィット感を確かめるために同じ商品のサイズ違いを何枚も買う必要がないことも大きい」と話した。

 こうした効率的なビジネスモデルであるため、利益率が高いことも同社の強みだ。同氏は、「利益率が5%程度の小売店もある中で、ルルレモンは20~25%を確保している。フーディーが148ドル(約1万6000円)と決して安くはない商品を取り扱っているが、熱心なファンが多く、1人当たりの購入額が平均的に高いことも利益率の高さに寄与している。同社の財務状態も非常に健全だ」と説明した。

 実際、同社の2020年1月通期決算は売上高が前期比21.0%増の39億7929万ドル(約4297億円)、営業利益は同26.0%増の8億8911万ドル(約960億円)、純利益は同33.4%増の6億4559万ドル(約697億円)と増収増益だった。また10億ドル(約1080億円)以上の手元資金を保有している上に、債務を抱えていない。同社は北米と欧州の全店舗を3月中旬から休業しているが、6月1日まで従業員の給与を支払うと発表している。それが可能なのも、このようにしっかりとした財務基盤があるからだ。

 カルバン・マクドナルド(Calvin McDonald)=ルルレモン最高経営責任者は、アナリスト向けの決算発表会で、「店舗を休業していることからECが伸びているものの、店舗の売り上げ分を完全に補うほどではない」としながらも、「自宅でワークアウトをするための製品が売れ行き好調で、手応えを感じている」と述べている。ルルレモンはオンラインでのヨガクラスなどを提供しているが、これは顧客とのつながりを維持すると同時に、そうした製品の売り上げを促進するという効果がある。中国の主要な都市が封鎖されていた2月には、オンラインでの売り上げが前年同期比70%増となったという。

 新型コロナウイルスが蔓延したことにより、世界中で健康への意識が高まっていることもルルレモンにとって追い風となっている。カナダの投資銀行BMOキャピタル・マーケッツ(BMO CAPITAL MARKETS)のシメオン・シーゲル(Simeon Siegel)=マネジング・ディレクター兼シニア・リテール・アナリストは、「体力がないことは命の危険につながると感じた人が多いため、事態の収束後も健康を重視する流れは続くだろう。スポーツウエアやアスレチック用品のメーカーにとっては好機となるのではないか」と述べた。

 ボルーチョウ=マネジング・ディレクター兼シニア・リテール・アナリストは、「先行きの不透明感から株式市場が乱高下する中、投資家は少しでもましな銘柄を探している。ルルレモンの株価も2月に比べればまだ低いものの、3月中旬に底を打ち、現在はかなり回復してきている。同社のビジネスモデルの強みが評価された結果だろう」と解説した。

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