ファッション

米マッキンゼーがアパレル業界に7つの提言 新型コロナ危機を乗り越えるためのヒント

 新型コロナウイルスの影響で多くのアパレル企業が店舗を休業せざるを得ず、苦境に陥っている。大手コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニー(McKINSEY & CO.)が発表したリポート「危機的な状況下における北米アパレル業界の見通し(Perspectives for North America's Fashion Industry in a Time of Crisis)」によれば、この危機を乗り切るためには従業員を守り、手元資金を確保し、在庫を確認してサプライチェーンを見直し、デジタル化を推進し、消費者とのつながりを維持することが重要だという。以下にその詳細と、中長期的な展望を紹介する。

・従業員を守る

 事業を長期的に継続するには従業員を守ることが大切だが、今回の危機に当たっては、職場の安全対策や雇用条件について頻繁かつ明確に伝達してコミュニケーションをしっかり取ることが特に重要だという。それと同時に、店舗で厳密な衛生管理を行い、ECでの商品配送の際にも対人接触を避けている宅配業者を使うなど、顧客を守る姿勢を明確に打ち出すことも重要だ。

・手元資金の確保

 事業を継続するには、手元資金を確保する必要がある。その第一歩として調達部門と営業部門とからなるチームを編成し、支出を精査して、削減できる分野を細かくリストアップしていくという方法がある。また政府や自治体による支援策を利用して財務状態の健全化を図ることも検討したい。

・在庫管理

 棚卸しを行い、粗利の最大化や運転資金の確保のために何をするべきかを知り、サプライチェーンを見直すためのヒントを得ることが重要だ。まず春夏物の在庫を確認して、晩夏や初秋まで店頭に置けるものや、アウトレットに出せる商品を選り分けるとよい。保管スペースがあるなら、年末商戦の特価セール用に取っておくという選択肢もある。

 商品を補充する際には、サプライチェーンのことも念頭に置かねばならない。調達や製造などの上流部門は、発注量の減少のため苦難に直面している可能性が高いからだ。まとめて発注する、支払いに関して明確に連絡するといった方法によって取引先をサポートすることも考えたい。

・デジタル化の推進

 今後はデジタル化がいっそう加速することが予想されるが、ブランディングだけではなく、顧客との関係強化に活用することを勧める。デジタルマーケティングでのコンバージョン率を上げ、ECでの購入額の増加や再購入を促すと同時に、実店舗に誘導する効果も期待できる。

・顧客とのつながりを強化

 顧客とのコミュニケーションをただ維持するのではなく、そのブランドらしさや誠実さが伝わるようにすることが大切だ。倉庫で働く従業員に対する安全対策や、「こうした危機的な状況の中でも、一足の新しい靴が喜びをもたらしてくれる」というストーリーなど、相手の心に響くエピソードを共有してコミュニティーをつくることを意識するとよい。

 また、顧客の10%程度が売り上げ全体の60%を占めていることも珍しくない。個別にカスタマイズしたプロモーションや、新商品および限定品をいち早く入手できるといった特典など、得意客をつなぎとめるための施策にも力を入れることを勧める。

・中期的な戦略

 テレワーク、旅行の自粛、イベントなどのキャンセルや延期がしばらく続くことが予想されるため、調達や製造部門に大きな影響が出ることは想像に難くない。アパレル企業は春夏物の売れ行きを注視しつつ、秋冬物や年末商戦向けのマーチャンダイジングについてサプライヤーなどの取引先とも協議するべきだ。

 店舗の営業を再開する際には、本当に再開するべきかどうかを一店ずつ慎重に検討する。景気や経営環境によっては再開しないか、業態を変更してより価格重視の店として在庫整理に活用するといった選択もあり得るからだ。また、休業中に消費動向が変化している可能性があることも考慮しなければならない。ECで注文した商品の受け取りカウンターを拡充するなど、売り場を改装したほうがいいケースもある。

・長期的な展望

 アパレル企業は、従来のように価格重視のサプライチェーンから、危機に対してより柔軟に対応できるサプライチェーンへとシフトしていくことが予想される。新型コロナウイルスが“世界の工場”と呼ばれる中国で発生したことから製造工場が軒並み休業し、国外での生産に依存することのリスクが浮き彫りになったためだ。将来的には、多少のコスト高であっても国内もしくは近隣国での生産へと少しずつ切り替わっていくだろう。

 在宅勤務の経験者が増えたことで、事態が沈静化して出社が可能になった後もリラックスした服で通勤したいという意識が高まり、オフィススタイルのカジュアル化がさらに進むと思われる。

 自社商品のカテゴリーや品ぞろえを冷静に見直し、事態が収束した後の市場ニーズを的確に捉えられるかどうかを考えれば、今後どのように事業を運営していくべきかが自ずと見えてくる。資金に余裕がある場合は、(株価が落ちていることを利用して)アパレルブランドなどの買収を検討してもいいだろう。

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