ビジネス
連載 エディターズレター:MARKET VIEW 第16回

「匿名マーケティング」というアンチテーゼ

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※この記事は2023年10月13日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

先週テレビで「芸能人格付けチェック」を見ました。特番で昔から続く長寿番組なので、ご存じの方も多いでしょう。私が見たのは、京都の一流料亭が作った近江牛のすき焼きと、料理学校の生徒が作ったウルグアイ産牛肉のすき焼きを出演者が目隠しをして食べ比べる場面でした。一流料亭の味を正解したのは梅沢富美男さん一人だけでした。

「これは一流のものです」といった情報を伏せた状態だと、何十倍も値段が違う料理やワインも、プロのミュージシャンと吹奏楽部の高校生の演奏も識別するのは難しい。視聴者もクイズとして参加できる楽しさだけでなく、「違いが分かる人間でありたい」と願う出演者の悲喜こもごもだったり、行きすぎたブランド信仰への皮肉だったり、いろんな要素が重なって見る人を引きつけるのでしょう。

折りしもファッション業界では原宿の「匿名宝飾店」が話題になっていました。

期間限定営業の前半はブランド名を明かさずに運営し、後半に「ヨンドシー(4℃)」だと公表すると、SNSで大きな話題になりました。来店者は計画を大幅に上回ったそうです。同ブランドは近年、SNSなどでネタとしてイジられる傾向が強かった。その状況を逆手にとって先入観なくジュエリーそのものの価値を見せるマーケティングは鮮やかでした。

同じく9月、「極麻辣麻婆豆腐飯店」という中華料理店が1週間限定で新宿にオープンしました。本格的な麻婆豆腐定食を500円で提供して話題を集めました。こちらも実は味の素の「クックドゥ」の新商品であったことが後日明かされました。大手食品メーカーの合わせ調味料という先入観を排して、本格的な中華料理として味わってほしいという狙いです。

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