PROFILE: ラランド
サーヤとニシダによる芸人コンビ・ラランドの個人事務所「レモンジャム」が今年で設立5周年を迎える。それぞれ芸人としての領域にとどまらず、サーヤは川谷絵音らと組んだバンド「礼賛」でも活動、またニシダのほうは作家として小説を執筆するなど、多方面で存在感を放つ。今回は、2人の出身校である上智大学のお笑いサークルから始まったコンビの歴史とあわせて、事務所の立ち上げから5年間の歩みを振り返る。
事務所に所属するための条件は
会社員との両立が難しかった
——ラランドが大きな注目を集めたきっかけは、アマチュアとして出場した「M-1グランプリ2019」での敗者復活戦だと思うのですが、その後もしばらくフリーとして活動しています。
サーヤ:私が大学を卒業したのが2018年の3月なので、卒業してから3年くらいはフリーで活動していました。自分たちで「レモンジャム」という個人事務所を作ったのが2021年の2月です。
——お二人はともに上智大学の出身ですよね。
ニシダ:はい。上智大学のお笑いサークルで出会って、ラランドを結成しました。「M-1グランプリ2019」の時も、僕はまだ大学生で。中退して、そのあと復学したり、ややこしいのですが、学年としては3年生でしたね。
サーヤ:でも結局は退学しているので、ニシダは高卒です。
ニシダ:言わなくていいだろ、別にそこは。上智大学に入ったことが大事なんだから。
——敗者復活戦が評判になったあと、既存の芸能事務所から所属のオファーもあったのでは?
サーヤ:いくつかはありましたね。ただ私は当時、会社員として働いていたので、どこかの事務所に所属するとなると、先輩のライブのお手伝いをしないといけなかったり、事務所ライブに出て、いわゆるランキング形式のシステムの中で下から上を目指していかないといけなかったり、いろいろと条件があって。そういった条件だと会社員との両立は難しく、お断りしました。
——2021年2月のレモンジャム設立より前、2020年4月にはラランドの公式YouTubeチャンネル「ララチューン」を立ち上げています。
サーヤ:あの頃はとにかく違法アップロードされたネタ動画の数がハンパなくて。自分たちで公式チャンネルを持ってないと、ずっと違法で見続けられてしまうというのもあって作りました。ネタだけじゃなく、公式チャンネルがあれば配信や企画も自分たちですぐに出せるので、早めに作っておいてよかったですね。
——さらに遡ると、お笑いに特化したラジオ配信アプリ「GERA」のレギュラー番組「ラランドの声溜めラジオ」の第1回は、2019年12月23日(「M-1グランプリ2019」決勝の翌日)にYouTubeで配信されています。
サーヤ:「GERA」はめっちゃ早かったです。「M-1」で準決勝に行くことが決まるより前に声かけてもらったんじゃないですかね。ラランドは「GERA」の第1号ですよ。今でこそ芸人ラジオのプラットフォームとして大きくなってますが、私たちが始めた頃はベンチャーもベンチャーで、小さい小さい会議室で、しょぼいマイクで収録してましたから。
——民放ラジオではなく、配信ラジオというベンチャーの「GERA」に可能性を感じていた?
サーヤ:いや、単純にラジオのオファーがうれしかったからやろうって。この先伸びるだろうとかは考えてなかったです。そもそもうちらも当時は駆け出しの無所属の芸人で、フリーのライブに出たり、バトルみたいな企画にも出て……っていうアングラでしたから。
ニシダはラジオの永久機関
——2020年6月にはTBSラジオで冠特番「ラランドの化けの皮」が放送され、その後9月からはレギュラー番組「ラランド・ツキの兎」が始まりました。
サーヤ:フリーの芸人なのに、TBSラジオでレギュラーをやらせてもらえるのはありがたかったですね。ただ、私は芸人さんのラジオを聴いてこなかったので、そこはニシダのほうが。
ニシダ:僕は学生時代からずっとラジオを聴いていたので、TBSラジオの中に入れるだけでもうれしかったです。ここがパーソナリティの人たちが話しているTBSの9階かぁ……って。
——配信の「GERA」と民放のTBSラジオでは、ご本人としてはどういう違いがありますか。
ニシダ:「GERA」のほうは尺も決まってないですし、スポンサーもいないので、自由に長くしゃべれます。性器の名前もギリ許されるような。TBSラジオは30分番組という枠の中で、スポンサーもいますから、それなりにちゃんとした放送にしようっていう意識はありますかね。
サーヤ:ラジオは前の番組からの流れとかで耳にする人もたくさんいますけど、「GERA」は能動的に聴こうと思わないと聴けないので、その違いはけっこう大きいですよね。しかも「ラランド・ツキの兎」は放送時間がいろいろ移っていて、早い時間だと21時台に放送されていた時期もあったので、その時間にど下ネタを言ってクレームが来たりもしてました(笑)。
ニシダ:下品な内容のせいでスポンサーが離れたことも多々あります。
サーヤ:ラジオはすごく好きで大事にしてますけど、今は「ラランド・ツキの兎」も番組公式YouTubeチャンネルを作って配信しているので、YouTubeで聴いてる人もけっこういるんですよね。だから聴く側としては、これがラジオ番組だとかYouTubeとか意識してないのかも、と思ったりもします。
——ニシダさんは、ラランドとしてのレギュラー2本に加え、お一人でMBSラジオ「ラランドニシダの実家には帰らない」と、尾崎世界観さんと2人で「GERA」で「尾崎世界観とラランドニシダのダブルスタンダード」と、計4本のラジオ番組レギュラーを持っています。
ニシダ:ありがたいことです。ラジオ好き冥利に尽きますね。
サーヤ:4本もあるからどの番組でも同じ話をしてますし、なんならラジオで起きたことを別のラジオで話したりもしていて、ニシダはラジオだけで循環してます。
ニシダ:ラジオの永久機関です。
——とはいえ、番組によって特性が違いますが、それぞれどういう準備をしていますか?
ニシダ:準備? 準備は……どの番組でもしてません!
サーヤ:しろよ。胸はって言うな。
コンビで仕事の量が8:1だった
——YouTubeの制作は自分たちだけでやっている感じですか?
サーヤ:ですね。制作会社も入れずに、自分たちと近しいスタッフだけで作ってます。私と作家2人のグループLINEで企画を話し合いながら、固まったらすぐやる。熱量がなくならないうちにスピード感を持って出せるのが心地いいのと、予算も自分たちで管理できているのが、続けていく上でも大事だなと思いますね。こういうのやるとお金かかるんだとか、画質さえ気にしなければiPhoneだけでもいけるんだとか、一通りの制作過程を体験できることで、テレビ制作の裏側もなんとなくわかるようになりましたし。ちゃんとお金をかけている番組と、テレビなのにまったくお金かけてない番組を肌で実感できるようになりました。
ニシダ:演者がそんな生々しいこと言うなよ。
——ニシダさんはテレビ番組とYouTubeチャンネルで、何か意識していることはありますか?
ニシダ:僕は企画の話し合いとかにも参加せず、決まったことをただ実行するだけなので、特に違いはないですね。あるとしたら、テレビだったらちゃんと段取りを知らされてからロケに行くようなところを、YouTubeだと何も知らされないままやらされるので、僕はつらいですけど、視聴者の人はそこがおもしろいんでしょうね。
サーヤ:ラランドとしてのチャンネル「ララチューン」のほかに、ニシダ個人で「ラランド・ニシダ チャンこうんネル」というのもあって、それはもともとニシダの仕事が少ないから、ニシダの取扱説明書を作ろうみたいなノリで始めたんです。私とニシダで仕事の量が8:1くらいだったので。
ニシダ:個人チャンネルで本好きとかいろいろな自己紹介ができたおかげで、ほかの仕事につながったのは確実にあります。
サーヤ:どういうタイプのクズなのかの教科書にもなってるし。
——その結果、いまやニシダさんは小説家として活躍しながら、俳優としても出演作が続いています。
サーヤ:5年前に蒔いた種がやっと収穫できるようになってうれしい限りです。
初期に「会社員&大学生コンビ」
として消費されなくてよかった
——事務所設立から5年を振り返って、「これはやっておいてよかった」と思うことはありますか?
サーヤ:毎年の単独ライブですね。新ネタも6〜7本くらい下ろして、凝った映像も作るようにしているので、長期にわたるドッキリ企画とかも単独に向けて仕掛けたりとか。うちらはレギュラーで劇場に出ることがないので、自分たちで単独ライブを企画しないとネタを披露するタイミングがない。そこを意識して、毎年ネタを披露する場所を用意しておいたのは、よかったなと思います。
——では逆に、「これはやらなくてよかった」と思うことはありますか?
サーヤ:メディアの人たちに名前が知られるようになった最初の頃、会社員&大学生のコンビという肩書きありきでのオファーがほんと多かったんですよ。なんか「広告代理店の社員としてどうですか?」とか、ニシダにも「大学生として一言」みたいな。それがもうつまらなすぎて嫌すぎて、東京から離れるために大阪の仕事を増やしたくらいで。事務所の方針として「大阪進出」を掲げたんですけど、そのおかげで例えば、関西テレビで言うと「千原ジュニアの座王」とか「マルコポロリ」とか「スロイジ」とかに出させていただけて、メディアに出始めた初期に大阪で思いっきりお笑いをやれたことが、今思うとすごくよかった。なので逆に、最初に東京で「会社員&大学生コンビ」として消費されなくて本当によかったと思います。
——ニシダさんはどうでしょう? やっておいてよかったこと、やらなくてよかったこと。
ニシダ:なんでしょうね、なんかあるかな……えーっと……(しばらく考える)
——もしなければないで……。
ニシダ:じゃあ、なしで。
サーヤ:マジでないのかよ。
ニシダ:ないものはないんだからしょうがないだろ。どうぞ、進めてください。
——テレビ番組に対しては、どういった感触ですか?
サーヤ:テレビの影響力はまだまだ大きいですよ。例えば「有吉の壁」に出たことで、街での声のかけられ方が全然違ったりしますからね。それにYouTubeでもほかのSNSでも、人気者になろうと思えば、誰でもなれるっちゃなれるじゃないですか。そこと比べるとテレビは難しいし、選ばれた人たちしか出られないので、やりがいもあるし、楽しさもある。まだまだ憧れの場所っていう感じです。
——芸人に限らず、共演者との交流も生まれますし。
サーヤ:あ、それも大きいですね。個人事務所だと先輩も後輩もいないので。自由と引き換えの寂しさは多少あります。
レモンジャムは設立する時に
完璧なスタートキットが揃ってた
——芸人の売れ方として、まず劇場で人気を獲得し、テレビでネタを披露して話題になり、そこからバラエティーでのトークを評価され……という一連の型がありますよね。
サーヤ:巨大お笑い事務所が作り上げた確固たるレールですよね。そもそもうちらは、芸人たるもの劇場の舞台の上に立ってネタをやるんだとか、バラエティーに出まくっていずれはMCで冠番組を持つとか、そういう思想もないので、そのレールに乗らずにちゃんと仕事がまわっているだけでも超助かってます。
——芸人の個人事務所としては、さらば青春の光が作った株式会社ザ・森東があったりしますが、ほかにはあまり目立った動きがないのは、なぜだと思いますか?
サーヤ:やっぱり自分たちでマネジメントもしながら、会社として経営もして、っていうのを続けていくのは難しいんじゃないですかね。私の会社員経験も役に立っているとは思いますけど、レモンジャムの場合は、大学時代からの仲間が大手芸能事務所を経験したあとに、うちらの専属マネージャーになるっていう奇跡が起きているので。
——ラランドのマネージャーであり、レモンジャムの副社長でもある橋本拓哉(通称マネたく)さんは、大学卒業後、ホリプロに就職したあと、レモンジャムの立ち上げに合わせて退社されています。
サーヤ:なので、最初から完璧なスタートキットが揃ってたんですよ。たまに後輩から「自分たちで事務所やりたい」っていう相談を受けることもあるんですけど、「絶対にやめときな」って言いますもん。奇跡的なめぐり合わせと完璧なスタートキットが準備できてないうちは、大手にいたほうがいいですよ。
——既存の事務所であれば備わっているテレビ局やラジオ局といったメディアとの繋がり、または営業先との付き合いなどは、なくても大丈夫だったのでしょうか?
サーヤ:意外と大丈夫でしたね。メディアの人たちは普通にオファーしてくれますし、スポンサーになってくださる企業でも、ラランドのことが好きな担当者の方がいたりして声をかけてくれます。
——となると、大手の事務所に入るメリットはどこにあるんでしょうか?
サーヤ:好きって言ってくれる担当者がいなくてもスポンサーが見つかったりするんですかね、分かんないですけど(笑)。
サーヤのスピは本氣
——サーヤさんにはバンド「礼賛」の活動で音楽業界だったり、ニシダさんは文筆業で出版業界だったり、お笑い業界とは違った付き合いやコミュニティがあるのも、ラランドの特徴かなと思います。
サーヤ:いろんな居場所があるのはありがたいし、何よりヘルシーですよね。まだ活動を始めた最初の頃、先輩芸人さんに誘われて行った飲み会で、あとからさらに上の先輩が店に入って来たら、全員が席を立って直立で挨拶をしてたんです。その時に私の起立がワンテンポ遅れただけでめちゃくちゃ怒られたことがあって。たまにはいいとしても、さすがにここだけが居場所になるのはキツすぎるなって思いましたね。
——ニシダさんはお酒を飲まないんですよね?
ニシダ:飲みません。なので、芸人同士の飲み会にも行きません。
サーヤ:ほんとはニシダのほうが先輩とか人に好かれるタイプなのに、社交を一切しないんです。
——世間一般の社会と接点を持つことは、ネタやトークの内容にも大いに影響しますよね。それこそ、ラランドのラジオを聴いていると、テレビやバラエティーではネタにしにくい話題もかなり出てくるイメージです。
サーヤ:飲み屋で普通の社会人ならみんなしゃべってるようなことだけど、芸人には通じない話題いっぱいありますよ。うちらも企業には勤めてないけど、だいぶ社会人と話は合うと思います。なんていうか、昔の芸人さんは、社会を知らないことを良しとしていたり、学歴があることを逆にイジるようなノリがあったり、芸人の世界ってほんと特殊なので、社会との隔たりが確実にある。まぁ私もVTuberの間でだけで流行ってることとかは、さっぱり分からない時ありますけど(笑)。
——話のネタでいうと、サーヤさんはわりと本気でスピっているのに、なぜかネタとして笑いになっているのが、不思議なバランスだなと。
サーヤ:そう、なんかネタだと思われてますけど、私のスピは決してボケとかじゃないんですよ。ガチのスピリチュアル信者です。
ニシダ:ガチの信者とか言うなよ。勘違いする人も出てくるんだから。
サーヤ:普段から難しいほうの「氣」しか使ってません。
ニシダ:使うな、そんな漢字!
サーヤ:私のスピは本氣です! ライブでは「氣」と書かれた御守りも売ってます!
ニシダは下に見られることで許されている
——ニシダさんについては、今この時代に「ファンにも手を出してる」とか「彼女は暫定1位なだけで2位がいてもいい」など、事実かどうかは別として、少なくとも発言としては許容されているのは、なぜだと思いますか?
ニシダ:単純に低く見られているからでしょうね。人間が道でおしっこしてたら許されないですけど、犬だったら許される。そういうことだと思います。
サーヤ:おまえ犬なのか。
ニシダ:犬みたいなもんでしょう。
サーヤ:大丈夫? 自分で犬とか言って、家に帰って一人で泣いたりしない?
ニシダ:泣かねーよ。別に本気で思ってるわけじゃねーから。分かりやすく例えで言ってるだけだから。
サーヤ:まぁでもナメられてるのはたしかにそうだと思いますね。仮にニシダのことが好きだとしても、ニシダになりたいとか、ニシダに憧れるとかは絶対ないじゃないですか。
ニシダ:まぁ絶対とは言えないけどな。
——7月4日に開催された「レモンジャム 5周年Fes」についても聞かせてください。
サーヤ:単独ライブはやったばかりなので、5周年のフェスではネタじゃなく、わりと正面からファンの方に向けた感謝祭ですね。礼賛のライブもありつつ、ニシダがフジテレビの「逃走中」で獲得した314万円の賞金の使い方を発表したり、初出しのお知らせごともたくさんあります。グッズもいろいろ作ったりして、あえてけっこう内輪向けというか、いつも応援してくれている人に喜んでほしい内容ですね。今まだ配信中ですので、現場に来られなかった方はぜひ見てください。
——では最後に。サーヤさんと比べてニシダさんの発言が少なめですが、言い足りないことなどはありませんか?
ニシダ:まったくありません。特に言いたいこともないですし、なんならけっこうしゃべったほうなので、これで終わりましょう。
PHOTOS:TAMEKI OSHIRO
「レモンジャム5周年Fes」
◾️「レモンジャム5周年Fes」
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(7月20日23:59までアーカイブ視聴可能 )
https://lemonjam.zaiko.io/e/5th-fes









