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ドバイではスカルプケアが人気? 美容師HIROに聞く現地のヘアサロン事情

ドバイ 美容師

超高層ビルが立ち並び、世界中の人々が行き交う、アラブ首長国連邦に属するドバイは、ラグジュアリーの街というイメージが先行する一方で、多国籍な人材が集まる美容業界も活況を呈している。異なる文化や美意識に向き合いながら働く日本人美容師は、現地でどのようなキャリアを築いているのか? ドバイのインターナショナルヘアサロン「チョーク(CHALK)」で働くスタイリスト、HIROにその実情を聞いた。

PROFILE: HIRO/美容師

HIRO/美容師
PROFILE: 1997年生まれ、愛知県名古屋市出身。中部美容専門学校を卒業後、名古屋市のサロンで経験を積み、25歳でロンドンへ。2年ほどロンドンの美容室で勤務後に帰国し、2024年にドバイに移住。インターナショナルヘアサロン「チョーク」でスタイリストとして活動。Instargram:@iamhiro_dubai

「人と話すのが苦手だから
美容師にはなりたくなかった」

ドバイ 美容師

WWD:美容師を志したきっかけとは?

HIRO:やりたいと思ったのは中学1年生のとき。当時は床屋さんに通っていたのですが、髪を切るのがあまり好きじゃなかったんです。その頃ちょうど地元に「マックスバリュ」ができて、その中に美容室もオープンしたから母親のすすめで初めて行ってみたんです。そこで梳きバサミで髪を梳いてもらったのにすごく感動して、その感動を他の人にも伝えられる存在になれたらいいなと思うようになりました。

その後は友だちの紹介で他の美容室にも行くようになったんですけど、僕の担当の美容師さんがよく喋る人で。僕は本当に話すのが苦手だったので、「やっぱり美容師は辞めようかな」と諦めました。

でも高校生になったとき、母からの勧めで美容室でアルバイトをすることに。そのときは美容室で働きたいなんて全く思っていなかったけど、他が受からないので止むを得ず週3くらいで働き始めました。掃除、シャンプー、ドライヤー、受付、電話対応など。本当にアシスタントの仕事ですね。ハサミを持つ以外のことをやるような感じでした。

WWD:そんな中、中部美容専門学校に行こうと思った理由とは?

HIRO:ずっと人と話すのが苦手で、高校生のときは将来についてよく悩みました。大学に行っても友だちを作る勇気はないし、専門学校もなんだか派手な感じがして。それで、働きながら通う通信制の学校だったら自分に合っているかもと思い、中部美容専門学校の通信過程を選んだんです。高校卒業後はバイト先に就職して、働きながら学校に通いました。結果的に、その美容室では高校時代のバイト期間や専門学校在学中も含め、4年くらい働いたことになります。

その後「モリオフロムロンドン」のマネージャーをしていた方の美容室に転職しました。その店舗のオーナーは仕事でパリやロンドンなど、海外によく行っていた人だったんです。そういう話を聞いていたら、いつか自分も海外に行ってみたいなって思うようになりました。オーナーと店長には本当に、美容師に必要な全ての技術を教えてもらえたと思います。

名古屋から思い入れのある街・ロンドンへ

WWD:最初の移住先もロンドンでしたね。

HIRO:美容師免許を取ったころにできた彼女がアイルランドに留学に行って、僕も一緒にイギリスとアイルランドに約1カ月間くらい行きました。

名古屋で合計8年間働いた後、カリスマ美容師が一度は通るロンドンに行ってみようと思うようになりました。幸運にもYMS(Youth Mobility Scheme)といワーキングホリデー制度の抽選が当たって、2年間滞在できることに。最初は語学にも自信はなかったけど、2年くらいイギリスにいると少しずつ話せるようになりました。

最初はメイフェアにある日本人オーナーのサロンで働いたんですが、1カ月くらいで辞めて、ローカルの美容室で働くようになりました。働くようになったというか、たまたま前店のオーナーの元同僚が働いていて、「働いちゃえば?」みたいな感じで。ロンドンの美容室は日本で言う業務委託契約の美容師の人が多いです。とはいえ美容師側も実力主義のため、本来は採用面接もあるんですが、自分の仕事を見てもらった方が早いと思ったんです。

でもそこでは結局採用されず、「ジリー グリーン(Gielly Green)」という人気の美容室に履歴書を持っていって、何度か断られたけどやっと雇ってもらうことができました。でも雇ってもらえたのは“アシスタント”という肩書き。現地ってアシスタントからスタイリストになるというケースは少なく、アシスタントはずっとアシスタントのまま。スタイリストって、本当にスペシャルなものがないとできない仕事なんです。

スタイリストとして認めてもらうためには、結局自分が仕事を持ってきて証明するしかない。アシスタントをやりながら自分でモデルハントをして仕事をするような生活を半年くらいして、無事スタイリストとして独立することができました。結果的に、「ジェリー グリーン」ではスタイリストとして1年ほど働きましたね。

WWD:その後、YMSの2年間の期限を終えます。就労ビザを取得してロンドンに居続けようとは思わなかったんですか?

HIRO:YMSから就労ビザに切り替えるための手続きをしていたんですが、当時移民法が変わるタイミングで、就労ビザが出る条件も変わったりしたんですよね。その影響もあって申請がかなりギリギリになってしまい、結果的に間に合わず。止むを得ず日本に帰りました。

次の移住先はドバイ
食費は「東京より安いかも?」

WWD:帰国後、今度はドバイに移住しましたね。なぜドバイだったんですか?

HIRO:元々はロンドンでビザ取得する予定だったし、本格的に引っ越すつもりで周囲の人にも伝えてて、なんだか後に引けない状態になった中での帰国でした。だからまた海外に行こうと思って、香港やシンガポール、マレーシア、オランダとか、色々な国の美容室の面接を受けました。オンライン面接だけじゃなくて、面接のために現地に行ったりすることもありましたね。採用してくれた美容室もあったんですけど、僕が求めている条件と合わず辞退したりして。

そんな中でグーグル検索で見つけたのがドバイの美容室。イギリスから帰国するとき、トランジットでアブダビに寄った事があったから、現地の雰囲気は少しわかっていたんですよね。ドバイはイギリスの保護国だった歴史もあるし、イギリスのお客さんも来てくれるかもと興味が湧いたんです。気になる店舗全てに履歴書を送ったら、アルセルカール・アベニューという施設にある「チョーク(Chalk)」というヘアサロンから「とりあえず面接に来てほしい」と連絡があって。現地に行って面接を受け、無事に採用してもらい、就労ビザをサポートしてもらうことができました。

WWD:実際のドバイの暮らしは?

HIRO:家探しも含めて、イギリスにいた時の方が大変なことが多かったので、ドバイでは意外とスムーズだったと思います。治安もすごく良い。とはいえ、階級制度はないけど実際はヒエラルキーが結構あるように感じます。人種によって職業も住む家も全然違う。中東の人々と関わることで、さまざまな文化を知ることができました。

WWD:実際の生活コストは?

HIRO:家賃や車にかかる金額を除いた僕1人の毎月の生活コストは、現在約14〜15万円くらい。家賃は一般的にワンルームで20万円、ダブルベッドルームなら40万円くらいですかね。シェアハウスも本当に安いところなら3万円くらいからの家を見つけられるかもしれないけど、あまり状態がいい場所ではないと思います。

多分みんなが思っているよりも、物価は安いんじゃないかと思います。カフェだと、おしゃれなところならコーヒー1杯600円くらいかな?安いところだと80円でチャイティー、100円でサモサが買えたり。僕がおしゃれなところにあまり行かないというのもありますが、食事は東京の方が高いと思います。この前帰国して、おにぎりが100円ではとても買えなくてびっくりしました。

スカルプケアが人気?
ドバイのヘアサロン事情

WWD:ドバイの美容室で働いて驚いたことは?

HIRO:中東のスタイリストの仕事の速さには驚きました。通常50分かかるようなブローやフルバレイヤージュのブリーチ塗布も、30分程度で終わらせています。僕だったら45分くらいかかってしまうので、彼らの仕事のクオリティーとスピードには脱帽。そんな環境だからこそ、自分自身の仕事も昔と比較して洗練されたように感じます。また、ロンドンではサービスでシャンパンやサンドイッチを提供していましたが、ドバイはアイスクリームを出すことが多いのも新たな発見でした。

WWD:ドバイのヘアサロンメニューの価格帯は?

HIRO:シャンプー、カット、スタイリングなら、東京の少し高級めなヘアサロンと同じで2万円ほど。ヘアカラー込みだと7、8万円くらいですね。ロンドンだと美容室で10万円払うようなことは割とあると思うので、それに比べれば比較的手頃だと言えます。

WWD:現地の文化ならではの傾向は?

HIRO:アラブ系の人は脂っぽい食事が多いので、薄毛になりやすい。だからスカルプケアのリクエストは結構多いように感じます。また、「チョーク」はインターナショナルサロンのためあまり変動はありませんが、一般的にラマダン期間中は暇になることが多いです。日中外に出られないから、営業時間を夜中に変えたり。でも、ラマダンが終わる1週間前くらいは売り上げが上がります。ラマダン後のイード・アル・フィトル(Eid al-Fitr)という祝祭のために、ヘアスタイルを仕上げておきたいという人が多いのだと思います。

あとはアルセルカール・アベニュー自体がUAEの実業家一族が開発した施設なので、首長国皇太子の一族の方がいらっしゃることもあります。富裕層は確かに多く、「旅費と宿泊費を出すから来てほしい」とカタールやオマーン、シンガポールへの出張依頼をもらったこともあります。

WWD:現地の人が好むヘアスタイルは?

HIRO:僕の場合はショートが多くて、ピクシーカットが30%くらい。ボブはパツっとしたカットラインの、ボリュームがあるエレガントなスタイルが人気です。ロングヘアはバウンシーなブローアウトスタイルや、ウエーブヘアが人気ですね。

カラーで言えば、「ハイトーンにしたい」でも「とにかくオレンジっぽさが大嫌い」な印象。日本人よりも赤みが出やすい髪質の人が多いので、アッシュ系のオーダーが多いです。あとはこっくりとした色味のチョコレート系、人によってはハニーブロンドも指示されます。

WWD:日本人の美容師は、ドバイでどのように見られていると感じる?

HIRO:「日本人だからすごそう」みたいなリスペクトは特にないと思います。どちらかというと、「私たちを満足させられるのか?」みたいな懐疑的に見られているときもあるような気がしますね。そもそもアジア人とは全く違う髪質を持った人たちなので、不安になるのは当たり前。僕がイギリスで経験したことが、今の仕事に生かされていると思います。

国内外のキャリアを経て、
今後はどのように活動する?

WWD:今後はどんなキャリアを予定している?

HIRO:今後帰国せざるを得ないときも来るかもしれないし、ドバイを拠点にニューヨークやロンドン、香港、シンガポールでも施術するなど、世界中を回れるような美容師になりたい気持ちもあります。一方で、日本に帰って僕が学んできたことを伝えていくのもありかもしれない。将来のことは考えてもわからないし、その時の時流に合わせて動いていくんじゃないかなと思います。

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