
高い集客力や売上高を誇る施設でも、全てのブランドにとって最適な出店先とは限らない。賃料や共益費、顧客との相性、周辺商圏の成長性まで、テナント側の判断軸は多岐にわたる。施設選びの基準から、デベロッパーの評価、リニューアルで変わる館の力、次世代SCの条件まで、店舗開発担当者が覆面で語り合った。(この特集は「WWDJAPAN」2026年8月3&10日合併号からの抜粋です)
【参加者】
青山一郎:複数のライフスタイルブランドを手掛ける企業の店舗開発担当者
中村健二:複数ブランドを扱うセレクト業態の店舗開発担当者
WWD:テナントアンケートでは、ルミネ新宿やルクア大阪、ラゾーナ川崎プラザが“選ばれるSC”ランキング上位に入りました。これら施設の共通点は何でしょうか。
青山一郎(仮名:以下、青山):この結果は、ある意味では順当ですよね。ルミネとルクア大阪の“ルルコンビ”は、どのブランドにとっても高い売り上げ効率を求められる実力のある館ですし、ラゾーナ川崎も駅直結で、駅ビルと郊外型モールの両方の要素を持っている。
WWD:それだけ、出店を希望するブランドも多いのでしょうか。
青山:いや、売れる館だからといって全てのブランドが出たいわけではないと思います。ブランドの戦略や客層、立地との相性によって、出店すべき場所は変わります。どれだけ売れる館から声が掛かっても出店しない場合もある。館の売り上げ規模だけでなく、その街に出る意味を考えます。
中村健二(仮名:以下、中村):われわれも施設全体の売上高や来館者数だけでは判断しません。どのブランドやショップを利用するお客さまが来ていのか、近隣の施設を含めて商圏を見ます。
「リニューアルによっては、館が一気に“化ける”ことも」(青山)
WWD:施設の売上高や集客力だけでは、テナントに選ばれるSCにはならない?
中村:そうだと思います。賃料や共益費、店舗面積、営業時間に加え、デベロッパーがわれわれの業態や利益構造を理解しているかを見ます。売り上げが立っても、賃料や運営コストが高過ぎれば事業は成立しません。組織内に百貨店出身者がいるデベロッパーは、商品や利益構造への理解度が高い。理解がないと、立地や面積、条件が業態に合わない提案をされることもあります。さらに、内装費や資材費、人件費が上昇し、出店投資は大きく膨らんでいます。賃料だけでなく、共益費の引き上げも継続的な負担になります。坪当たり月1000円上がれば、40坪の店舗で年間約48万円の増加になりますからね。
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