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アシックス「走る」の次は「歩く」 ウォーキングシューズを世界で売る

アシックスは15日、ウォーキングシューズの戦略モデル“ムーンアンブル(MOON AMBBLE)”の3品番を16日から販売すると発表した。同社はウォーキングシューズ事業を新しい成長の柱に位置付けており、グローバル販売にも本腰を入れる。来年以降は海外初の直営店を中国および香港に開く予定だ。

「3つの瞬間」に驚きを与える

“ムーンアンブル”は一流アスリートのシューズを研究するアシックススポーツ工学研究所(神戸市、略称ISS)で検証を重ねて企画開発された。「手にした瞬間」「履いた瞬間」「歩いた瞬間」の3つの瞬間に驚きを感じさせる靴を目指し、ミッドソールの素材や構造に工夫をこらした。弾むようなクッション性がありながら、着地時における安定性を保ち、次への一歩に踏み出したくなる感覚を生み出す。

価格はアッパーの素材で異なり、ジャカードメッシュの合成繊維で2万5300円、スムースレザー(天然皮革)で3万5200円、スエード(同)で4万700円。

アシックスウォーキングの直営店およびオンラインストア、一部百貨店などで順次発売する。

廣田会長CEOの特命プロジェクト

「これまでの延長ではないウォーキングシューズを作ってくれ」――。

アシックスの廣田康人会長CEOは昨年春、ISSの竹村周平所長にそんな課題を出した。ウォーキングシューズは「歩きやすい」「疲れにくい」が基本性能だが、廣田会長CEOが求めたのは「もっと歩きたくなる」「外に出かけたくなる」という気持ちを生み出すものだった。竹村所長は「人の体を科学的に分析することには慣れているが、人の感覚にどう訴えるかは新しい挑戦だった」と振り返る。

廣田会長CEOが難題を出したのは、ウォーキングシューズ事業に大きなポテンシャルを感じていたからだ。同社のウォーキングシューズは40年以上の歴史を持つ。これまでは男性なら革靴のドレスシューズ、女性ならパンプスを敬遠する人の受け皿としての側面が大きかった。一方、廣田会長CEOは「日常的に歩くことを楽しみたい人に広げれば、マーケットは格段に広がる」「世代も関係なく、世界中の多くの人に広がる可能性がある」と、市場を広げようと試みる。

同社のトップ主導による商品開発の前例として、ランニングシューズの「Cプロジェクト」があった。ナイキの厚底シューズ革命によって長距離選手のシェアが低迷していた19年12月、当時は社長だった廣田会長CEOが開発部門の竹村氏をリーダーとして社長直轄チームを作り、シェア奪還のために「何が何でもレースで勝てるシューズを作れ」と命じた。ここで開発された戦略モデル“メタスピード”によってアシックスのランニングシューズは復活を遂げた。世界市場でランニングがけん引する形で、同社の26年12月連結売上高は1兆円を突破する見通しだ。

来年、中国大陸に海外初の直営店

戦略モデルの開発と同時に、組織も見直す。ウォーキングシューズ事業を手掛けてきた子会社アシックス商事を解散し、27年1月1日付でアシックス本体とアシックスジャパンに事業を移管する。ISSによる研究開発、海外販路の開拓、デジタルマーケティングなどの本体の知見を活用していくためだ。

来年からは中国および香港での直営店出店に乗り出す。上海や香港などの好立地でウォーキングシューズのプレゼンスを高める。村岡秀俊ウォーキング統括部長は「中国での出店交渉は1、2店舗でなく、複数の場所で進んでいる。海外でどんどん増やしていきたい」と話す。

昨年10月に開店した東京・日比谷の帝国ホテルの直営店は、場所柄、インバウンドによく売れている。廣田会長CEOは「海外のお客さまは『なぜ日本だけでしか売らないの?』と口をそろえる。一度、足入れをすれば、気に入ってもらえる自信はある」と述べる。アシックスがランニングシューズなどで培ってきたブランド力を武器に、ウォーキングシューズの認知を高める。

ウォーキングシューズ事業の26年12月期の売上高見通しは、前期に比べて微減の158億円。連結売上高の85%が海外のアシックスにあって、ウォーキングシューズ部門はまだ1%未満であり、それだけ伸び代があるといえる。ウォーキングシューズ部門の中長期的な売り上げ目標は、11月に発表する中期経営計画に盛り込む。

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