
豊島の2026年6月期決算(非上場)は、売上高が前期比18.3%増の2558億円、営業利益が同47.5%増の140億円、経常利益が同29.4%増の169億円、純利益が同32.5%増の121億円だった。
売上高は3期ぶりの増収。売上総利益、営業利益、経常利益はいずれも4期連続の増益で、そろって過去最高を更新した。純利益は6期連続の増益。売上総利益率(粗利率)は16.0%で、前期から0.9ポイント改善した。
増収分396億円の大半を稼いだのは繊維製品部門で、386億円の増収。リカバリーウエア「バクネ」のテンシャルやワークマンのペルチェウエアなどの大ヒット製品への供給など、ライフスタイル分野で機能アイテムや差別化素材の付加価値商材の取り扱いが広がった。
一方、素材部門は13億円増と横ばい。綿花は販売数量が増えたものの、相場の弱含みと円安の影響が重なり前期並みにとどまった。原糸は国内産地向けの減少で減収、織物は加工反販売が伸びた半面、切り売りの販売が減って前期並みだった。建設・不動産などの非繊維部門は4億円の減収。
今期(27年6月期)は売上高2500億円、経常利益150億円を計画する。
「無理をするより、将来に向けた種まきを」 豊島俊明会長・豊島晋一社長との一問一答
9月15日に名古屋市内で開いた決算会見には、豊島俊明(半七)会長と豊島晋一社長が出席した。晋一社長は2025年9月の就任から1年を迎え、今回が実質的に初めて通期の実績を説明する会見となる。メディアとの主な一問一答は以下の通り。
ーー好業績の要因と、その受け止めは?
豊島俊明会長(以下、俊明会長):付加価値商材へのシフトが実を結んだ。酷暑対策やウェルネス分野の小売店やブランド側と一体となった市場創造が形になっている。ただ変化のスピードは速い。常に次の対応も考えがら走っているような常態だ。会社としては無理をするよりも、将来に向けた種まきを優先する。非上場なので、前期の売り上げに固執する必要はない。一つの節目として、次の飛躍の土台にしたい。
豊島晋一社長(以下、晋一社長):数年来、特定の領域にこだわらずライフスタイル商品を広げてきたことが成果に結びついた。いろいろな領域を扱うなかで、生産管理のレベルアップも進んだ。DXにも早い段階から力を入れてきて、企画提案と生産の現場で生成AIの活用が進んだ。数字にとらわれず、どっしりと付加価値活動に取り組んでいく。
ーー産業資材の位置付けは?
俊明会長:アパレル分野に続く、新しい成長の柱になる可能性を秘めている。時間はかかる。1年という時間軸ではなく、5年後にどうなるか、という考え方だ。
ーー1年間、会長・社長を務めてきて気づいたことは?
俊明会長:豊島に入社以来、40年間、経営に携わるポジションで常に自分を俯瞰しながらやってきた。会長になって変わったのは、会社そのものを俯瞰するようになったこと。より遠く、より広く物事を考えるようになった実感があり、乱暴な言葉だが、初めてオーナーになった、という感覚だ。
晋一社長:この1年は、目の前のことに精一杯だったというのが正直な感想だ。まだ見えていないものがたくさんあり、全体が見えたとは言えない。その一方で社員一人ひとりの実直さを感じており、今は自分の役割がどこにあるのかを模索しながらやっているところだ。
ーー生成AIなどのデジタルツールが日進月歩で進化している。DXは?
晋一社長:デザインやサプライチェーンへの関与、自動化ツールを駆使した創造性の補助など、かなり幅広い。現時点では直接的に数字に結びつく、というより特定の分野や部署に限らず、営業全体の武器になっている手応えはかなりある。
俊明会長:最終的には、サービスの対価として認めてもらえる、あるいは事業として切り出せるようになることが望ましい。取引先あってのことなので、いつまでにと期限を区切れるものでもない。ただ気をつけたいのは、自分たちが進んでいる、というおごりが出ないようにすること。新しいツールや技術に常に目を光らせておく。この分野は一番、慢心に気をつけないといけない。
ーースタートアップとの連携は?
晋一社長:これまではCVCが軸だったが、今は愛知県とソフトバンクが2024年10月に名古屋・鶴舞に開業した日本最大級のスタートアップ支援拠点であるの「ステーションAi」で進めている。相互に刺激を受ける関係であり、これも種まきだ。水面下では複数のスタートアップとの協業を進めている。
ーー海外展開の手応えは?
俊明会長:ここにきて目標額が出てきた、というフェーズだ。ようやく本格的な数字が見えてきた。米国と中国を中心に組み立てていく。成長を求めるなら海外しかない。製品ビジネスもあれば生地もある。米国と中国の開拓に注力し、全体のなかである程度のウエートを占めるところまで引き上げたい。
ーー今後、事業領域はどこまで広がる?
俊明会長:「ライフスタイル提案型商社」を掲げて約10年になる。「繊維商社」じゃないわけだから、扱い品を繊維やアパレルに限定する必要はない。そう掲げたことで、非アパレルや非繊維の取引先も増えてきたし、製造業の企業とのコラボレーションも増えてきたし、食品分野にも進出している。ただ、そうした新規事業や新領域で重視しているのは「安全」や「コンプライアンス」「信用」だ。生成AIでは、提案時にかならず一度社内のリーガルチェックを噛ませるなど、かなり慎重に進めている。食品や電化の絡むテックウエアなども同様の考え方だ。リカバリーウエアやペルチェウエアのように、商品自体が新しい場合は小売やブランド側と一体となって自主基準や法令遵守のあり方を考える必要が出てくることもある。信用を積み上げても、崩れるときは一瞬だ。そういった部分には経営資源の積み増しや投資も行っている。
ーー豊島にとっての「付加価値」とは?
俊明会長:一言で言えばプラスアルファだ。お客さまと消費者に認めてもらえるものをどう構築するか。当社のような商社は価値観の変化にフィットする提案を、生産工場などサプライチェーンも含めて提案する必要がある。そうした現場での一つひとつの積み上げが豊島の企業価値になり、ひいては信用を高め、売り上げにもつながっている。ある銀行の幹部からは、これだけ為替が変動している中でも、当社を含め業績がいいのは驚異的だと言われたことがある。そうした経営的な創意工夫は、あえて言葉にしないことも多いし、付加価値の積み上げ方は、その一つと言っていいだろう。