繊維商社のヤギ、瀧定、サンウェルの3社は、各社が運営するテキスタイルECサイトで連携する。例えばヤギの「ファブリー(Fably)」でサンウェルの「サンウェルネット」や瀧定の「タキサダオンラインスタジオ」の生地も購入できるようになるなど、各サイトのユーザーは他のサイトの在庫の購買が可能になる。連携品番は30品番からのスタートで、各社は1500〜2000品番を扱っており、今後は連携品番も拡充させていく。ヤギの八木隆夫社長は「誰でもアクセスでき、比較・検討・相談ができる環境を3社で整備したい」と語る。有力な服地卸3社が手を組むことで、法人向けテキスタイル取引のEC化を加速させる。
注目したいのが、テキスタイルECの先駆けである「サンウェルネット」の存在だ。25年前にスタート。現在では取扱件数ベースで「7〜8割がEC経由になっている」とサンウェルの今泉治朗社長は明かす。在庫を構える定番のストックサービスに加え、生産前の段階で受注する先行受注サービスも始動しており、「先行して瀧定のウール生地をテスト販売したところ、非常に好評だった」(今泉社長)と手応えを語る。
起点は「ファブリー」 素材の違いが連携を後押し
3社連携の起点となったのは、ヤギが2020年に立ち上げたテキスタイルECプラットフォーム「ファブリー」だ。同社の強みであるジャージーに加え、産地企業などのサプライヤーも参加する「プラットフォーム」型の設計だったため外部連携がしやすく、今回の提携を後押しした。八木社長は「ECや流通構造が変化する中、個社だけでは顧客の多様なニーズや効率化の課題を解決しきれないとの共通認識があった。ファブリーのオープンなシステムを軸に3社の強みを掛け合わせれば課題解決につながるとの提案が現場から上がった」と経緯を語る。ヤギはジャージー、瀧定はウール、サンウェルはコットンとそれぞれ得意とする素材が異なり、「商材がバッティングしなかったことも連携が実現した要因」と話す。
瀧定は8月1日付で「瀧定名古屋」から現在の社名に変更したばかり。瀧健太郎社長は、コロナ禍以降にデータ化やウェブ販売を独自に進めてきたと明かした上で、「テキスタイルEC販売では後発でもあった。このまま独自でやるよりも連携し、顧客にどう応えていくかが大事だと判断した」と話す。
連携はまだ緒に就いたばかり 物流・小口対応が課題に
現時点での連携品番数は、サンウェルとファブリーがそれぞれ1500品番。瀧定は5月18日に一般公開を始めたばかりで、公開時30品番からスタートし、トータル90品番としている。ただし各社担当者によると、相互のデータ連携はまだテストランの段階で、対象となるのは在庫があり倉庫から即出荷できる商品に限られる。
今後の課題としては、物流面での連携や、小口の先物(先行予約)受注への対応が挙がった。サンウェルが強みとする小口・サンプル対応のノウハウを生かせるかが焦点となる一方、原反を動かす大口ユーザーのEC移行はまだ進んでいないという。海外展開については、ファブリーがすでに20カ国からの登録があり海外決済にも対応するなど、各社で取り組み状況に差がある。
3社は「日本のテキスタイル産業の持続的な成長と、新たな挑戦が生まれる土壌づくりに貢献する」としており、今回のシステム連携を第一段階と位置付け、今後もシステム連携や協業できる領域を順次広げていく方針だ。