近年相次ぐデザイナー交代の中、継承の成功例として挙げられることも多いジュリアン・クロスナー(Julian Klausner)による「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」は、2027年春夏も期待を裏切ることなく、観客の心をときめかせるコレクションを見せた。着目したのは、「グラマー」。ただ、それは非の打ちどころがないドレスアップでも、自分を誇示したり誰かを魅了したりするための華やかさでもない。ジュリアンが考えたのは、自分自身のために少しだけ着飾り、いつもとは違う気分を楽しむこと。「時々、グラマラスな気分になりたいと思うことは、誰の中にもある、とても普遍的な感情だと思う。今回はそれを無邪気な感覚で捉えてみた」と説明する。そして、「どんなときに自分たちはグラマーを感じるのか?」をチームと話し合う中でたどり着いたのは、決して大げさな答えではなかった。例えば、ベルトをギュッと締めたり、きらめくブローチやぴったりしたグローブを着けたり。あるいは、鮮やかな色をまとったり、赤いリップをさしたりといった要素を日常のワードローブに加えることが、ジュリアンたちの表現する「グラマー」だ。
映画女優の日常を思い描くワードローブ
そんな今季は、撮影現場での1日を終え、現実へと戻る女優をイメージ。スクリーン上で見せる完璧に着飾った姿だけでなく、肩の力が抜けたオフの姿を描いた。ショーは、ヒールで街を歩く音や車が通り過ぎる音からスタート。創業者時代を象徴するモデルの1人であるハンネ・ギャビー・オディール(Hanne Gaby Odiele)がファーストルックを飾った。まとうのは、リラックス感のあるベルトコートに、古い映画のポスターをイメージしたプリントのドレス、そしてレトロなムード漂うパンプスやネックレス、大きなクラッチを合わせたスタイル。グラフィックは、1950年代の映画ポスターなどをヒントに、オリジナルで制作したものだという。全部で8種類あり、今季のキーグラフィックとして用いるだけでなく、招待状と共にゲストに届けられた。
そして、街の音に数々の映画音楽を手掛けてきたピエロ・ウミリアーニ(Piero Umiliani)の壮大な楽曲が混ざり合う中、次々と登場するモデルたちは、ルーズさやスポンテニアス(即興的)な感覚を感じる「ドリス」らしいミックススタイルを着こなす。例えば、ロックTシャツに花柄のドレスを重ねたり、ルレックスジャカードで仕立てたクロップド丈のテーラードジャケットとショーツにメンズライクなシャツを合わせ、ラフに袖をまくったり。また、煌めく装飾を散りばめたボクシーなテーラードジャケットやシアー素材のオーバーレイを加えた膝丈スカート、そしてウエストを絞った部分に華やかなブローチ風のパーツをあしらったメンズライクなポロシャツのように、ミックス感はアイテムのデザインにも見られる。
また、「新しい色の組み合わせを試しながら、自分たちが満足できるバランスを探った」というカラーパレットは、ダスティーなニュートラルカラーをベースに、鮮やかなイエローやマゼンタピンク、エレクトリックブルーをプラス。映画のグラフィックだけでなく、フラミンゴや星、マティーニグラス、アイライナーを効かせた目など、「グラマー」という言葉から連想したモチーフをスプレーペイント風に表現したプリントも多用し、異なるテイストや色柄を巧みに組み合わせた。
余白を残した親近感のある「グラマー」
創業者のドリスよりも華やかな装飾や鮮やかな色使いを好むように感じられるジュリアンは、「時には思い切り着飾りたいという感覚が好き。“オーバードレス“や”着飾りすぎる“ということには、少しネガティブな意味が伴うこともあるけれど、そうした気持ちをたたえることは美しいと思う。ほんのささやかな形であっても、人には時々自分の中にスターのような気分になりたいという思いがある。それは、とてもチャーミングなことだ」と、ショー後にコメント。コレクションについても「グラマラスかつフェミニンで軽やか、そして、あまりシリアスになりすぎないものにしたかった。皆に着飾ったり、自分の服で遊んだりしたいと思ってもらえたらうれしい」と語る。そんな誰もが心の内に持つ気持ちを大切にし、着る人が自由にアレンジできるように程よい余白を残した親近感のある「グラマー」は、多くの共感を呼びそうだ。