
森永邦彦デザイナーが手掛ける「アンリアレイジ(ANREALAGE)」は10月5日まで、これまでにパリ・ファッション・ウイークで発表してきた25回のコレクションを振り返る展覧会「ジャスト アン リアル エイジ(JUST AN REAL AGE)」を、パリ3区マレ地区(76 Rue de Turenne, 75003 Paris)で開催している。伝説的セレクトショップ「コレット(COLETTE)」の共同創設者として知られ、現在はクリエイティブ・プロジェクト「ジャスト アン アイデア(JUST AN IDEA)」に取り組むサラ・アンデルマン(Sarah Andelman)がキュレーションを手掛けた同展では、パリデビューを飾った2015年春夏コレクション「SHADOW」から、9月29日に披露したばかりの27年春夏コレクション「SKIN」までを展示。会場には、特別に制作したアイテムなどを扱うショップも併設する。パリでの開催後は、現在改装中の「アンリアレイジ オム」原宿店を期間限定店舗「ジャスト アン リアル エイジ」としてオープンする。
「生きるか死ぬか」で取り組んできたパリでのショー
パリの会場は、3つのパートからなる。1つ目は「回顧展(THE RETROSPECTIVE)」。現代アーティストの松井紫朗が手掛けた真っ白な膜で覆われた空間に、パリコレで発表したそれぞれのコレクションのルック1体ずつが並ぶ。そんな軌跡について森永は「振り返るとあっという間だが、毎回毎回、本当に結構生きるか死ぬか。12年25回やっていれば、もう少しリスクを取らない発表の仕方もあると思う。ただ、そこはずっと変わらずにやってきている」と話す。
天井からは「ドラえもん」に着想を得た24-25年秋冬「OBJECT」のボール型ウエアが吊り下がり、その下でそのほかのシーズンのルック24体を載せた円形の台座が回転。その横には日本から運んだという紫外線を照射するロボットアームも設置されており、23-24年秋冬「=」などフォトクロミック素材を用いた服の色や柄が浮かび上がる。そのほか、カメラのフラッシュで無地の服に隠された色柄があらわになる16年春夏「REFLECT」、見慣れたアイテムの一つのディテールを極端に拡大した19-20年秋冬「DETAIL」、コロナ禍にデジタルで発表した21年春夏「HOME」から22-23年秋冬「PLANET」まで、ブランドを象徴するパッチワークの技術を駆使した2023年春夏「A&Z」、「空調服®」と協業した25年春夏「WIND」などを間近で見ることができる。
また隣接する部屋には、最新の27年春夏からEインク(E INK)の電子ペーパー「プリズム 3」で作ったパーツを鱗のように並べ、電子制御による各パーツの色の変化でドラマチックな演出を見せた6着のドレス、そして積彩(SEKISAI)の3Dプリント技術をを用いた、見る方向によって色が変わる4着のドレスも展示する。
2つ目は「『アンリアレイジ』のための音楽(SONGS FOR ANREALAGE)」で、ダフト・パンク(DAFT PUNK)のトーマ・バンガルテル(Thomas Bangalter)との協働にフォーカス。バンガルテルがショー音楽を制作した25-26年秋冬「SCREEN」と26年春夏「❤︎」を、音楽と共に紹介する。ランウエイのために生まれた楽曲は、今回初めてヴァイナル(レコード)として形になり、数量限定で販売する。
そして最後は、「アンリアレイジ ショップ(ANREALAGE SHOP)」。幼い頃に親しんだアルファベットの絵本をヒントに、「A」のApple(リンゴ)から「Z」のZester(おろし金)まで、26のユニークなアイテムをそろえる。色が変わる素材や球体、パッチワーク、ドライフラワーを閉じ込めたアクリル樹脂といったブランドならではの技術や発想を、身近な日用品に落とし込んだデザインが特徴だ。森永は「僕らは非日常を追求する一方で、その要素を日常の中で扱うものとしてブランドを続けている。これまでやってきたさまざまな要素を、それぞれの日常に入っていくものに変えていこうと考えた」と説明する。中でも注目は、バンガルテルによるショー音楽を収めたヴァイナル、フォトクロミック素材を用いた御守り、大森商店との協業による折り畳み傘など。そのほか、定番シリーズ、26年春夏の「ヘラルボニー(HERALBONY)」や26-27年秋冬の「攻殻機動隊」とのコラボアイテムに加え、会場限定のキャップやキーチェーン、Tシャツも販売する。
10年にわたる交流から生まれた「ジャスト アン リアル エイジ」
今回の企画は、約10年にわたる森永とアンデルマンの親交から生まれたものだ。アンデルマンが「アンリアレイジ」のショーを訪れたことから交流は始まり、19年の「LVMHプライズ」などを通じて関係を深め、昨年からは複数のプロジェクトに取り組んできた。「25という数字自体が、『アンリアレイジ』にとっては特別な数字。アルファベットは26文字だが、ロゴのようにAとZが重なることで26-1で25になるというのがブランドを象徴するような考え方」と説明する森永は約半年前、パリでの発表が25回目を迎えることをアンデルマンに話したという。その際、これまでのコレクションを並べて見せる機会を作ってはどうかという話になり、実現に至った。展覧会名は、アンデルマンが主宰する「ジャスト アン アイデア」と「アンリアレイジ」を組み合わせた造語であり、「『ジャスト』には『ほんの少し』という意味がある。私たちなりのほんの少しの非日常」と森永は表現する。
そして、アンデルマンとの取り組みはパリの後、海を渡り東京へ。10月29日、原宿に期間限定店「ジャスト アン リアル エイジ」を開く。前日の28日にはオープニングレセプションを開催し、それに合わせて来日するアンデルマンとの交流会も行う予定だ。同店は今後、両者によるプロジェクトを継続的に発表していく場になる。