ビジネス

オンワードの衣料品回収1000万点突破 次に問われる「循環の質」

オンワードホールディングスが2009年に開始した衣料品回収活動「オンワード・グリーン・キャンペーン」の累計回収点数が1000万点を突破した。18年間にわたり、全国の店舗網を生かし、回収から選別、再資源化までの仕組みを構築してきた成果だ。一方、回収した衣料品の15%をリユース、85%をリサイクルに回しているものの、リサイクル分の約9割は固形燃料として活用されている。30年度には年間回収点数を現在の約2倍の200万点に引き上げる目標を掲げる。回収量の拡大と循環の質の向上をどう両立させ、資源循環をものづくりや経営にどう組み込んでいくのか。コーポレートコミュニケーション室の山﨑圭子執行役員室長と山本卓司サステナブル経営セクション課長に18年間の成果と課題を聞いた。

リサイクルの約9割が固形燃料 問われる「循環の質」

――回収した衣料品の用途別の割合は?

山本卓司コーポレートコミュニケーション室サステナブル経営セクション課長(以下、山本):リユースが15%、リサイクルが85%だ。リサイクル総量2242トンのうち、固形燃料(RPF)が2033トンと約9割を占め、残り約1割が毛布や軍手、自動車内装材などに活用されている。固形燃料は大量処理に適している一方、毛布や軍手は生産数量が決まっているため、活用量に限界がある。

――環境への負荷を考えるとリユースが最も適しているといえるが、15%という数字をどう見るか。

山本:当社はユーズド製品でも品質を保証できるよう、厚木の拠点で5~6回の検品を行っている。一般的な基準なら30%近くをリユースできる可能性もあるが、品質を重視した結果、15%にとどまっている。今後は回収量の拡大に伴い、リユースのあり方も検討していきたい。

――18年間でリサイクル技術も進展した。

山本:当初は毛布や軍手、ウエス、反毛など用途が限られていたが、その後、固形燃料や自動車内装材へと広がった。25年からは回収したダウンを洗浄・再生し、自社製品に再利用する取り組みも始めた。23年にはアップサイクルも開始し、現在強化している。

今後期待しているのは、使用済み衣料品を再び繊維に戻す「服to服」の水平リサイクルだ。ただし、複合素材のリサイクル技術は十分に確立されておらず、単一素材でも選別や再生にコストがかかる。普及には技術革新に加え、業界横断の連携が不可欠だ。回収後の処理や再資源化の仕組みを共通化し、一定の処理量を確保することで、コストを下げられる可能性がある。

資源循環をモノ作りと経営にどう組み込むか

――循環型のモノ作りには、製品の企画・設計段階からの取り組みが必要になる。

山﨑圭子執行役員コーポレートコミュニケーション室長(以下、山﨑):商品開発では生地メーカーや商社と資源循環について議論し、製造工程の無駄を減らす取り組みも進めている。一方、商品開発部門とサステナビリティ部門の連携はまだ十分ではない。製品の企画・設計から使用後の回収、リユース、リサイクルまでを一体的に考える仕組みづくりが課題だ。

――資源循環を経営戦略にどう組み込んでいくか。

山﨑:現場では18年間、取り組みを積み重ねてきたが、それを経営戦略や企業価値につなげるには、経営トップが資源循環を重要な経営指標として位置づける必要がある。PL(損益計算書)上の業績だけでなく、資源循環の目標や成果もシーズンごとに議論するような仕組みが必要だ。モノ作りの現場では美しさや品質が優先されることも多く、サステナビリティを商品開発やブランド運営にどう組み込むかが課題となっている。

――回収事業を収益化する考えは?

山本:「オンワード・グリーン・キャンペーン」も再販の「リユースパーク」も、収益の最大化ではなく資源循環を目的としている。今後、リユース率を15%から20%に引き上げることなどは考えられるが、大きな利益を追求する方針はない。一方、吉祥寺とオンラインで展開する「リユースパーク」には、将来の顧客を育てる狙いもある。商品を手頃な価格で試してもらい、ブランドのファンにつなげたい。最近は若い利用者も増え、大学生くらいの女性がメンズのダブルジャケットを購入する例もある。

――アップサイクルにも取り組んでいる。

山本:当初は社員の副業制度として始めた。回収した衣料品を使い、デザイナーやパタンナーらが自由に商品を制作する。販売収益の90%を制作者に還元し、10%を日本赤十字社に寄付する仕組みだ。普段は担当しない工程まで経験することで、社員の学びにもつながった。

現在は社外にも活動を広げ、小学生がデザインした服を大学生や当社のデザイナー、パタンナーらが形にし、子どもたちがランウェイを歩く企画も実施している。保護者からは「子どもの自信につながった」という声も寄せられた。資源循環だけでなく、社員の成長や子どもたちの教育にもつなげている。

――18年間で累計1000万点を回収できた背景は?

山本:リーマンショック後で店頭への集客が難しく、衣料品回収を通じてお客さまと接点をつくることを目的に、2つの百貨店で始めた。転機は11年の東日本大震災だ。(回収した衣料品をリサイクルしてつくる)毛布の寄贈活動への関心が高まり、「ものを無駄にしたくない」という思いで衣料品を持ち込む方が増えた。その後、期間限定から通年回収に切り替え、23年にはオンライン回収を開始。24年からは一部店舗で、購入後2年以内の商品について購入金額の10%相当を還元する制度も導入した。継続できた最大の理由は、お客さまの共感と協力だ。加えて、全国の店舗網を活用し、回収から自社倉庫での選別、再資源化までを一貫管理する体制を整えたことも大きい。

18年間で築いた回収の仕組み 次は年間200万点へ

――2030年に年間200万点の回収を目指す。今後の展望は?

山本:2030年までに年間回収点数を現在の約2倍に増やすことを目標に掲げた。まずは回収量の拡大に注力するが、同時に循環の質も高める必要がある。特に「服to服」の水平リサイクルの可能性を追求したい。必ずしも自社製品に再生することだけが循環ではない。業界全体で資源を有効活用する視点を持ち、回収量の拡大と循環の質の向上を両立させたい。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

「ピックルボール」という新しいコミュニケーションは、カルチャーの発信地となるか?

WWDJAPAN11月2日号は、最近巷で話題のニュースポーツ、「ピックルボール」を特集します。ピックルボールの歴史は意外に古く、発祥は1965年。米国国会議員のジョエル・プリチャード氏が腕力差のある子どもとでも対等に遊べるスポーツとして、テニスと卓球、そしてバドミントンをミックスしたような形で考案したと言われています。そんな歴史あるスポーツがなぜ今まで知られておらず、そしてなぜ今になってここまで流…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。