PROFILE: 白木夏子/ HASUNA代表

日本発ジュエリー「ハスナ(HASUNA)」は、日本におけるエシカルブランドの草分け的な存在だ。2009年設立当時は市場で“エシカル”という概念はまだ浸透していなかった。ジュエリー業界においては、宝石や貴金属の採掘現場の児童労働、違法採掘による環境破壊や地域住民への影響は、一般的には認知されていなかった。そこで、白木夏子代表が「無関心な業界を変えたい」と立ち上げたのが「ハスナ」だ。14年には、日本で初めてRJC(責任あるジュエリー業界)に加盟し、素材の産地や採掘工程など透明性を大切にしたジュエリーを提案している。白木代表に、ジュエリー業界の未来について聞いた。
消費人口の中心が変われば市場も変わる
「ハスナ」は創業当時、“エシカルジュエリー”を掲げていたが16年のリブランディングでその冠を外した。白木代表は、「エシカルであることが業界全体のスタンダードになりつつあると感じたから」と話す。欧州の大手メゾンを中心に、素材の調達や責任あるものづくりを可視化する動きが広がり、業界の意識も変化してきた。同代表は、30年代に向けて、ジュエリー市場における価値観が大きく変化するだろうと予測する。「30年代には消費人口の中心がミレニアル・Z世代になる。彼らは、学校教育などを通じて環境問題や社会課題への理解を深めてきた世代。彼らの価値観が購買行動に反映されるはずで、ブランド側もそれに応える必要がある」と話す。「ハスナ」でも、以前はブランド名が入り口だったが、今では“サステナブル”や”エシカル”というワードを検索してブランドを知り、購入する20代の消費者が増えているという。大学でも教鞭を取る白木代表は、「SDGsを小学校から学んできた世代にとって、環境や人権への配慮は、当たり前のこと。消費を担う世代が変われば市場も変わる」と話す。
トレーサビリティーは購入理由ではなく条件に
白木代表は、30年代にはトレーサビリティーがブランドの信頼を左右する要素になると考える。「欧米でトレーサビリティーの動きが広がっているが、国内でも取引先から素材調達や製造工程などの情報を求められるようになる可能性がある。トレーサビリティーがブランドのメッセージにとどまらず、具体的な証拠を伴うものへと変化するだろう」。30年代、ジュエリー業界においても、サステナブル、トレーサブルであることは購入理由ではなく条件になるだろうという考えだ。「RJC認証は、コストと手間はかかるが、認証を取ることで倫理的な疑問が解消される。ブランドの信頼性を示す一つの手段になる」と同代表。
モノづくりとコミュニケーションにおける人の存在が重要に
その一方で、より一層、モノづくりにおける人の存在が重要視されるようになると予測する。3DプリンターやCADの活用により簡単に安価に生産できるようになったが、職人の手仕事による味わいは出せない。「ジュエリーは、歴史、デザイン、クラフツマンシップが重要。ジュエリー自体もそうだが、職人の技と思いをどう伝えていくかが重要になる。クラフツマンシップとそれを伝える力がブランドの競争力になってくる」と白木代表。若い消費者は、ブランドの名前よりは、モノづくりの背景や人との縁といったものを大事にする傾向があるという。「インターネットやAIなどによる情報が溢れる時代だからこそ、時間をかけた手仕事や信頼できる人による情報発信の価値が高まると思う」と続ける。30年代のジュエリー業界では、サステナビリティやトレーサビリティーはスタンダード化し、ブランドには商品の背景にある価値をより具体的に丁寧に伝えることが求められそうだ。