今、注目を集める「服to服」「繊維to繊維」リサイクルは、持続可能なのか?技術は未成熟、リサイクル率は1%未満──そんな厳しい現実の中で、何を目指せばいいのだろうか。“責任あるリサイクル”を掲げるパタゴニア米国本社のマット・ドワイヤー(Matt Dwyer)プロダクト・フットプリント担当副社長に聞く。
PROFILE: マット・ドワイヤー/パタゴニア米国本社プロダクト・フットプリント担当副社長

「衣服to衣服」リサイクルが必ずしも最良な方法とは考えていない
WWD:「サーキュラリティ(循環性)」の重要性が叫ばれているが、回収した衣服から新たな衣服をつくる「衣服to衣服」のリサイクルは技術的にもビジネス的にもハードルが高い。リサイクル可能性を高める方法として単一素材での製品設計も考えられるが、その結果、強度や耐久性が低くなると本末転倒だ。そもそも何を目指すべきなのか。
マット・ドワイヤー=パタゴニア米国本社プロダクト・フットプリント担当副社長(以下、ドワイヤー):私たちは「衣服to衣服」のリサイクルが必ずしも最良な方法だとは考えていない。私たちが「次のライフサイクル」と定義しているのは、いわゆる“ダウンサイクル(カスケード利用)”を避け「価値が高く、かつ耐久性がある」再利用方法だ。例えば、服から自動車や家電製品の材料に転用したりすることもある。価値が高く、長く使えるのであれば、服に戻すことにこだわらない。もちろん、自社の廃棄物を自社製品に戻す機会があれば、私たちはそれを最優先にしている。
WWD:サーキュラリティ実現に必要なこととは。
ドワイヤー:課題は大きく3つある。1つ目は「インフラ」。製品を回収する体制が必要だ。現状では、私たちの製品のうちライフサイクル終了後に回収できているのは全体の1%未満で必要量には全く届いていない。2つ目は「分別」。回収できたとしても、それが何の素材でどこに送るべきかを識別することが非常に難しい点。これには「ディトリミング(分解工程)」の課題も含まれる。つまり、ファスナーやゴム、プラスチックパーツなど、複数の素材が組み合わさった製品をどう処理するかという問題。そして最後が「技術」。繊維に再生することが可能な技術があるかどうかという問題だ。
WWD:パタゴニアはサーキュラリティをどう捉え、何を目指しているのか。
ドワイヤー:「サーキュラリティ」という概念には、単に“地球に対する回収不能なコストとして、すでに市場に出回った製品に対して閉じたループの中で可能な限り使用し続ける”ということ以上の意味を持っている。
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