ファッション

カナダグースがソーラーシェアリングに本格投資 銀座で対話型サロンを初開催

カナダグース(CANADA GOOSE)は、“私たちは自然の一部”という理念の下、市民エネルギーちばが運営する太陽光発電に出資し、2022年9月に千葉・匝瑳(そうさ)市で「カナダグース ソーラーパワープラント」を設立した。農地の上に太陽光パネルを設置し、農作物の栽培と発電を両立するソーラーシェアリングの現場に、企業として資本と視線を投じている。

同社は8月、個人や一企業では解決できない環境問題を業界横断で対話する場として、「カナダグース」銀座店で第1回「銀座ソーラーシェアリングサロン」を開催した。ファシリテーターは、東光弘=市民エネルギーちば代表取締役。パネリストには、篠健司パタゴニア日本支社 環境インパクト&エンゲージメント/ビジネス&インダストリーエンゲージメント マネージャー、鎌田安里紗ユニステップス共同代表、佐藤タイジ=シアターブルック・THE SOLAR BUDOKAN主宰、そして、平井洋司カナダグースジャパン社長が登壇した。

「カナダグース」と再エネ投資
全ては“知ること”から始まった

平井社長は、市民発電への参画を「ブランドの責任」と位置づける。約5年前のパンデミック渦中、ファッション産業の環境負荷が改めて浮き彫りになった頃、「自分たちの情報不足を痛感した」と振り返り、まず学ぶことから動き出したという。エシカル・コンシェルジュの講義で、講師を務めていた東代表と出会い、同氏の話に触発されて千葉・匝瑳市を訪問。葉の葉脈になぞらえた“水脈”(土中の水と空気の通り道を整える)という発想に共鳴し、「健康な土地は災害にも強い」という実践を目の当たりにして、半年後には発電所への参画を決めた。「再エネは競争ではなく協業」という考えから、得た知見はオープンに共有する。「匝瑳に来られない方にも現場の学びを届けるため、銀座でこのサロンを始めた。“私たちは自然の一部”という原点に立ち、地域と共にエネルギーの新しい当たり前を育てていきたい」と語った。

「パタゴニア」の実践
店舗電力と“ネイチャーポジティブ”

カナダグースが環境課題解決の先達と仰ぐ「パタゴニア」は、「地球を救うためにビジネスを営む」というパーパスの下、17年から千葉・匝瑳市に通い、約360kW規模のソーラーシェアリングに投資している。発電設備の下で育てた大豆は、食のコレクション「パタゴニア プロビジョンズ(Patagonia Provisions)」のみそとして商品化。兵庫・豊岡市でも複数拠点に出資し、関東・関西の直営店の電力として活用する。

篠マネージャーは「長く使える品質のモノ作りを軸にCO2削減を進めており、国内のスコープ1・2はソーラーシェアリングの導入などで昨年比約60%減を達成した」と説明。素材・調達面では、25年までに原材料から石油由来をほぼ撤廃(98%到達)、30年までに17年比55%のCO2絶対量削減を掲げる。国内工場の“脱炭素電源”としてソーラーシェアリング電力の活用をアメリカ本社と議論しているといい、メガソーラーの環境破壊や災害リスクにも触れつつ、公正なかたちで再エネを広げる姿勢を強調した。

さらに、農地を気候変動対策の要と捉え、リジェネラティブ・オーガニックの枠組みで、不耕起農法や専用機材の開発・実証に取り組む。生態系の回復を目指すネイチャーポジティブの観点から、環境省の「自然共生サイト」登録も視野に入れる。

現場は気候変動の影響を受ける当事者
“進化”ではなく“進歩”が大事

続いて、サステナブルファッションに関する教育やコンサルティングを行うユニステップスの鎌田共同代表は、川上から川下、生活者までをつなぐ活動を紹介。現場の実情として「工場は暑くて広く、冷やすにはエネルギーもコストがかかる。ファッション産業は環境に負荷を与える側だと見られがちだが、現場で働く人々も気候変動の影響を受ける当事者でもある」と指摘。だからこそ、「ソーラーシェアリングのような取り組みが希望と感じている」と伝えた。

ロックミュージシャンの佐藤は、東日本大震災を機に電力について考え直したと明かした。「音楽は多くの電力を必要とする。ギターを演奏するにも電気が要るが、原発の電気はあかんと思った。だから2012年12月20日、100%再生可能エネルギーで運営する武道館でのロックフェスティバル“ザ・ソーラー ブドウカン”を実現した」。佐藤は“進化”ではなく“進歩”が大事と強調し、ソーラーシェアリングを農業だと断言する東代表の考え方に賛同を示した。

最後に、平井社長は、自社製品の2次流通プラットフォーム「カナダグース ジェネレーションズ(Canada Goose Generations)」を年内に日本で開始することを発表した。「9月から下取りを開始し、11月から“認定中古”として販売する。フルプライスでの購入は難しくても、もう少し安価にわれわれの製品を手に取れる導線を作り、最終的にダウン材の再利用まで含めた循環にしていく」。

参加者らは、「カナダグース」のソーラーパネル下の畑で収穫した麦を使ったクラフトビールや枝豆、「ラベジ(LAVEG)」のケータリングフードを手に、“農業と電力の地産地消”に触れ、学びを深めていた。

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