サステナビリティ

パタゴニア京橋が9月に開業 「サーキュラリティを発信する場に」日本支社長語る

PROFILE: マーティ・ポンフレー/パタゴニア日本支社長

マーティ・ポンフレー/パタゴニア日本支社長
PROFILE: PROFILE: 1970年6月29日米国ミズーリ州セントルイス生まれ。ナイキジャパンでアナリストとしてキャリアをスタートし、後にカテゴリーセールスマネージャーに就任。その後、フォッシルジャパンでオペレーションズディレクター、マネージング・ディレクターを経て、アメリカ本社で複数のヴァイスプレジデントのポジションを務める。2007年以降、コンサルタントとして、また起業家として多数のビジネス開発プロジェクトに携わる。19年から現職 PHOTO:KAZUO YOSHIDA

「パタゴニア(PATAGONIA)」は、2025年9月、東京駅近くの京橋に新ストアをオープンする。ビジネスパーソンが行きかい、歴史と文化が息づく街に誕生するこの拠点は、“責任ある消費”を提案するサーキュラリティ・ハブとして位置づけ、アウトドアからライフスタイルまで幅広い製品を揃えるだけでなく、フィルムや写真を通じて環境保護のメッセージを発信する場ともなる。この新たな取り組みについて、パタゴニア日本支社長マーティ・ポンフレー氏に鎌倉オフィスで話を聞いた。

WWD:9月にオープンする京橋ストアの特徴は。

マーティ・ポンフレー パタゴニア日本支社長(以下、マーティ):東京駅にほど近い京橋に開くこのストアは、パタゴニアにとって“サーキュラリティ・ハブ”の拠点となる。関東初の中古品常設コーナー “ウォーン ウエア(Worn Wear)”を展開し、“責任ある消費”を提案する。また、歴史と文化の息づく京橋という土地柄を活かし、アートや写真、フィルムを通じて環境保護のメッセージを発信していく。地域の人々だけでなく、国内外の旅行者にも満足いただける空間を目指している。

WWD:サーキュラリティ・ハブとは、どのような役割を担うのか。

マーティ:製品を売る場であると同時に、循環型ビジネスを考える場ともしたい。イベントや展示を通じてビジネスリーダー、行政、教育関係者、地域の人々とつながり、責任あるビジネスを広める拠点にする。パタゴニアにとって店舗は単なる販売の場ではなく、ブランド体験とコミュニティへの“ギフト”だ。

日本は中古品の状態が良く大きな市場になり得る

WWD:改めて、「循環型」モデルはパタゴニアにとってどのような意味を持つのか。

マーティ:まずは長く使える製品をつくることが前提である。修理しながら使い続け、最終的に使えなくなった時には企業として責任を取る。過剰生産を避けるためにラインを絞り、シーズンをまたいで売れるキャリーオーバーを増やしている。新製品は「何のために存在するのか」という問いに応えられるものでなければ市場に出さない。

WWD:昨年から日本でも本格的に始めた“ウォーン ウエアの成果は。

マーティ:二子玉川、吉祥寺、神戸の3店舗で行ったポップアップでは約850点の中古キッズウェアを販売し、イベント期間中の6日間で、大人を含む全カテゴリーで230点を買い取った。数は大きくないが、大きな可能性を感じている。大阪・梅田店に続き、京橋店にも専用コーナーを導入する。日本は中古品の状態が良く、米国に次ぐ大きな市場になり得ると考えている。
WWD:他にも日本市場ならではの特徴や課題は何か。

マーティ:最大の課題は「夏の長期化」である。UVカットや速乾性のある夏物の需要が増えているが、単価は冬物に比べ低い。そこで革新的な夏物を開発する必要がある。また、日本ではもっと、アウトドアを楽しむコア層だけでなく、まだパタゴニアを購入したことのない人々にも「長持ちする製品の価値」を伝えたいと考えている。

素材と環境負荷削減

WWD:環境負荷削減について、素材面での取り組みの進捗を教えてほしい。

マーティ:環境フットプリントの90%以上は素材製造の段階で発生している。そのため素材改革に注力している。2025年秋のコレクションでは97%が弊社が定義する「望ましい素材」だ。リサイクルポリエステル、リサイクルナイロン、オーガニックコットン、ウェットスーツ用の天然ゴム「Yulex(ユーレックス)」などを採用している。また全製品から意図的に添加されるPFASを排除し、96%はフェアトレード認証工場で生産されている。さらに、150スタイルに漁網をリサイクルする「ネットプラス(NetPlus)」を使用しており、約620万ポンド、トラック155台分に相当する漁網を再利用したことになる。

収益性との両立は非常にチャレンジング

WWD:再生型ビジネスにはコストもかかる。収益性との両立は難しくないか。

マーティ:非常にチャレンジングである。望ましい素材は調達に時間がかかり、労働基準を守る工場と連携するためコストも高い。さらに関税や経済の不安定さもある。しかし「困難だからやめる」という選択肢はない。クリーンエネルギーを導入する工場との取り組みなど、難しくても正しい方向へ進む努力を続けている。

WWD:不況期におけるパタゴニアの強みは何か。

マーティ:むしろ不況期にこそ強さを発揮する。人々は少なく買い、長く使い、修理して活用するものを求める。これはパタゴニアのビジネスモデルに合致している。

WWD:政策への提言があれば教えてほしい。

マーティ:三つある。第一に、再生型農業やリサイクル素材の活用を政策で支援すること。第二に、サプライチェーン全体の透明性を高め、労働者の権利や環境基準を守れるようにすること。第三に、企業を短期的な利益だけで評価するのではなく、環境・社会への貢献も含めて評価する仕組みに変えることだ。

「パタゴニア」の創業者イヴォン・シュイナードが繰り返し語っているように「困難でも正しいことを続けることが、長期的にはビジネスにも良い結果をもたらす」。この哲学は普遍的であり、日本市場においても同じであると信じている。

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